日本で就活関連の情報を集めると、必ず耳にするのがこの言葉。
「グローバル人材」
「グローバル人材募集!」
「グローバル人材です!」
「グローバル人材を育成します」
一見なにやらすごいことを語っているかのような言葉だけれど、留学経験や英語に興味がある学生が自己アピールに使ってはならない言葉の上位だと思う。
実績もない学生が使っても意味がないからだ。
そもそもなぜ「グローバル人材」がもてはやされているかを考えてみると、それはIT革命や通信技術の発達により、世界が急速に狭くなっていることに由来する。現代では様々な国の人たちと意見を交え、何かを成し遂げていくことのできる人材が求められている。
つまり、「グローバル人材」とは正確には「グローバル社会でうまくやっていける人材」を示すのだ。
間に入るべき大切な言葉がごっそり抜けている。
そのせいでなのか、私の身の回りで見かける交換留学生はとてつもない勘違いをしている人が多い。今日、UBCキャンパスで面接対策を行うというマイナビ主催のイベントがあったのだが、「このままでは就活に苦労するだろうな」という回答を用意していた学生が多くいた。
結論から言おう。
「グローバル人材」とは英語をしゃべる人のことではない。
ましてや語学が得意な人でもない。
極端な話、片言の英語を話すグローバル人材も可能である。
多くの日本人交換留学生が勘違いする理由は、「英語=グローバル」という間違った刷り込みによるものだ。これは一般的な日本の教育の弊害と言っていいのだろう。大学に入るまでは日本語以外の言語といえば「英語」だし、教育の一環として受ける英語の授業以外は「国際社会」というものに触れる機会がない。だから、グローバルと言われれば英語をしゃべること、という方程式が出来上がってしまう。
英語を使ってネイティブと肩を並べて競う正規留学生ならほとんどが知っている事実を、交換留学生は知らずに終わってしまう。
英語はツールであるに過ぎない、ということだ。
冒頭部分の話に戻ると、「グローバル社会でうまくやっていける人材」とはどういう人をさすのか、という疑問が浮かぶ。
簡単なところで言えば「柔軟性」「環境適応能力」「傾聴」「分析力」「論理的思考能力」あたりだろうか。これらはつまり、変化の多い環境の中で違う意見を持つ人間とうまくコミュニケーションを取るのに必要な能力だ。
そしてコミュニケーションの初歩の初歩が言語である。
交換留学生はちゃんと考えてみてほしい。日本に住んでいて「日本語を頑張りました」というのはアピールになるだろうか?日本語が喋れるというだけで「日本社会に適応した人材」と呼べるだろうか?
日本社会に適応しているというのは、「気配り」「空気を読む能力」「上下関係に合わせて言葉を使い分ける能力」「礼儀作法」などなど、日本特有の能力を得た人材のことを言うのではないだろうか。これらは集団社会で輪を乱さず一つの目的に向かって進むために必要な能力だ。
英語を頑張った、英語が喋れるようになった、だから私はグローバル社会で活躍できるというのは間違ったロジックであり、早急に正さなければならない。
なぜ私がこの話題についてこれほど熱く断言するのかといえば、「勿体ない」からだ。
せっかく留学しようと思ったのだから、「環境適応能力」は日本にとどまる一般的な学生以上にあるだろう。日々必死に英語を聞き取ろうとしているのだから「人の話を聞く能力」、つまり本当の意味でのリスニング能力だって備わっているはずだ。加えて知らない環境で一人過ごすことによって、「自立心」や「独立心」、「決断力」だって育っている。
こんなに素晴らしいアピールポイントがあるのに、それをたかが数か月勉強した程度の「英語力」のアピールだけで終わらせてしまうなんて、なんて勿体ないのだろう!
たのむから、「あなたの強みは何ですか」と聞かれたときには「英語力」以外で答えてほしい。
(もちろん海外のディベートチームと互角にやり合えるだけの実力があるならガンガン英語力をアピールしてもいいと思うけれど。)
交換留学生さん、あなたたちはもっとすごいはずですよ!
…とここまでかなり強い言葉を使って語ってきたが、念のためこれは書いておく。私は小学生でアメリカに三年半留学し、帰国して国際バカロレアという世界的にも「グローバル人材」を育てることで有名な教育システムで六年間学んで、現在カナダの大学に留学している。
まだ偉そうに語れる様なできた人間ではないけれど、少なくとも十年以上英語を学び、ネイティブの人たちに混じって現在教育を受けている身としては「グローバル人材」について意見を述べる資格があると思い、今日の記事を書いた。
もしこれを見ている留学生さんが私の意見を読んで気分を悪くされたなら、誠に申し訳ない。
昨日の夜中10時から今朝の明け方2時まで、サークルのイベントでダウンタウンにあるクラブに行ってきた。もともと行く予定はなかったのだが、今回のように友人に誘われでもしないと一生行かないと思ったし、百聞は一見に如かずということでチケットを購入したのだった。
結論から言えば、いい経験にはなったがあまり好みではない。低音で響く音楽はノリがよくて気分が上がるし、フロアでキレッキレの動きで踊っている人たちを見るのも楽しい。だが、問題はクラブという場所の性質上にあった。
表向きのクラブというのは、DJが流す爆音と花火のようにきらめくスポットライト、そしてそれを多少のアルコールをもって楽しむものである。視覚と聴覚を最大限に刺激し、アルコールで思考能力を鈍らせた結果得られる本能的な一体感とリズム感覚を楽しむ場であると言っていいだろう。
しかし、だ。クラブの裏の目的というのが、気軽な男女の出会いの場であるという事実を無視してはならない。しかも大半が体の関係を示唆するのである。
私を知る人なら口をそろえて言うだろうが、私は男女の関係に対し非常に保守的である。間違っても初対面の人と付き合いたいとは思わないし、そもそも恋愛感情自体を信じていない。賛否両論あるだろうが、私は「一時的なホルモンバランスの影響を理性が制御できない結果」だと思っている。それくらいドライなのだ。
そんな私が、暗がりの中で目が合っただけで「今夜どう?」の合図になってしまう世界に足を踏み入れたのだ。当然、居心地が悪いに決まっている。性別が女だからというだけでどうしてこうも弱者として見られてしまうのか。なぜ知りもしない、顔も見えない相手に腕や腹を撫でられなければならんのだ。訳が分からなかった。純粋に音楽と照明とカクテルを楽しみたかったのに。
私の友人以外でサークルから参加していた女子たちはどう思っているのかと見てみたが、「女だからクラブに行ったらセクハラされるのは当たり前だよね」と割り切っている女子が大半だった。むしろ誘われるのを楽しんでいた。女性としての性的魅力にあふれている証拠であると思っているのかもしれない。
なんという猛者たちなのだろうと私は思った。(と同時に、大和撫子が絶滅危惧種であることを悟った。)
かといって彼女たちを見習いたいとは決して、断じて思わない。
帰りのバスを待つ間、同じく居心地悪く感じていた私の友人が、猛者の一人に「クラブで複数の男性を誘うのはいかがなるものか」という意味合いのことを(あまり美しくない言葉で)問いかけたのが、帰ってきた返事は私にとって衝撃的だった。
彼女曰く、貞操概念が破たんしているわけではない。その証拠として、彼女は彼氏には一途だそうで、現在は彼氏がいないため別に気にしていないそうだ。誘っているのはただキスをしたいのだ、それ以上は別に望んでいないと締めくくった。
あまりにも価値観が違いすぎて、日本語を聞いていたはずなのに理解するのに時間がかかった。
別に彼女の考え方が悪いというわけではない。私の考え方を古いと言って批判する人もいるだろうし、私自身も恋愛観においては保守的を通り越して潔癖に近い部分があると言っていいと思っている。
そして彼氏がいないので複数の男性に声をかけても問題ないと言う彼女の主張も、間違ってはいないだろうと思う。実際、動物であれば繁殖可能な時期にできる限り子孫を残すというのが理に適っている。
ただ、私は人間として知性を持ったからには「本能に勝つ理性」「一時の快楽を手放すことで得る長期的な幸福感」というものを追及する人生を送りたいと願っている。洗練された人生というものを、考え抜かれた選択肢を選ぶことで送ってみたいと思っているといってもいい。
まあ、何が言いたいのかといえば、世の中いろんな人がいるなということだ。そして真逆の価値観を持つ人と交流するのも、自分の軸を確認できるので有意義であるということである。
よって、クラブに行ったことのない人は一度は行ってみることをお勧めする。ただし、女子の場合は信頼できる男友達をガードとして連れて行き、常に3人以上で行動すること。2人以下の女子だけで行動した場合、身の安全は保障しかねる。そして明け方2時にはお開きにすること。酔いが回ってくると見境のない男性が増えるので、これまた身の安全を保障しかねる。1時半には店を出て帰路についているのが理想的だ。
では諸君、健闘を祈る<(`・ω・´)
結論から言えば、いい経験にはなったがあまり好みではない。低音で響く音楽はノリがよくて気分が上がるし、フロアでキレッキレの動きで踊っている人たちを見るのも楽しい。だが、問題はクラブという場所の性質上にあった。
表向きのクラブというのは、DJが流す爆音と花火のようにきらめくスポットライト、そしてそれを多少のアルコールをもって楽しむものである。視覚と聴覚を最大限に刺激し、アルコールで思考能力を鈍らせた結果得られる本能的な一体感とリズム感覚を楽しむ場であると言っていいだろう。
しかし、だ。クラブの裏の目的というのが、気軽な男女の出会いの場であるという事実を無視してはならない。しかも大半が体の関係を示唆するのである。
私を知る人なら口をそろえて言うだろうが、私は男女の関係に対し非常に保守的である。間違っても初対面の人と付き合いたいとは思わないし、そもそも恋愛感情自体を信じていない。賛否両論あるだろうが、私は「一時的なホルモンバランスの影響を理性が制御できない結果」だと思っている。それくらいドライなのだ。
そんな私が、暗がりの中で目が合っただけで「今夜どう?」の合図になってしまう世界に足を踏み入れたのだ。当然、居心地が悪いに決まっている。性別が女だからというだけでどうしてこうも弱者として見られてしまうのか。なぜ知りもしない、顔も見えない相手に腕や腹を撫でられなければならんのだ。訳が分からなかった。純粋に音楽と照明とカクテルを楽しみたかったのに。
私の友人以外でサークルから参加していた女子たちはどう思っているのかと見てみたが、「女だからクラブに行ったらセクハラされるのは当たり前だよね」と割り切っている女子が大半だった。むしろ誘われるのを楽しんでいた。女性としての性的魅力にあふれている証拠であると思っているのかもしれない。
なんという猛者たちなのだろうと私は思った。(と同時に、大和撫子が絶滅危惧種であることを悟った。)
かといって彼女たちを見習いたいとは決して、断じて思わない。
帰りのバスを待つ間、同じく居心地悪く感じていた私の友人が、猛者の一人に「クラブで複数の男性を誘うのはいかがなるものか」という意味合いのことを(あまり美しくない言葉で)問いかけたのが、帰ってきた返事は私にとって衝撃的だった。
彼女曰く、貞操概念が破たんしているわけではない。その証拠として、彼女は彼氏には一途だそうで、現在は彼氏がいないため別に気にしていないそうだ。誘っているのはただキスをしたいのだ、それ以上は別に望んでいないと締めくくった。
あまりにも価値観が違いすぎて、日本語を聞いていたはずなのに理解するのに時間がかかった。
別に彼女の考え方が悪いというわけではない。私の考え方を古いと言って批判する人もいるだろうし、私自身も恋愛観においては保守的を通り越して潔癖に近い部分があると言っていいと思っている。
そして彼氏がいないので複数の男性に声をかけても問題ないと言う彼女の主張も、間違ってはいないだろうと思う。実際、動物であれば繁殖可能な時期にできる限り子孫を残すというのが理に適っている。
ただ、私は人間として知性を持ったからには「本能に勝つ理性」「一時の快楽を手放すことで得る長期的な幸福感」というものを追及する人生を送りたいと願っている。洗練された人生というものを、考え抜かれた選択肢を選ぶことで送ってみたいと思っているといってもいい。
まあ、何が言いたいのかといえば、世の中いろんな人がいるなということだ。そして真逆の価値観を持つ人と交流するのも、自分の軸を確認できるので有意義であるということである。
よって、クラブに行ったことのない人は一度は行ってみることをお勧めする。ただし、女子の場合は信頼できる男友達をガードとして連れて行き、常に3人以上で行動すること。2人以下の女子だけで行動した場合、身の安全は保障しかねる。そして明け方2時にはお開きにすること。酔いが回ってくると見境のない男性が増えるので、これまた身の安全を保障しかねる。1時半には店を出て帰路についているのが理想的だ。
では諸君、健闘を祈る<(`・ω・´)
さて、前回の記事までの話だと絶望的な感じで終わっているが、今回はそれよりも明るい話になると思う。
詐欺にあい騙されかけたものの、寸でのところでミラクル回避した私は、更なる物件を求めクレイグスリストを再び検索し始めた。もうこのサイトを使うのやめろよ、と思う人もいるかもしれないが、学生の身分で社会的信用も財布も薄いまま高級物件を取り扱う不動産会社になぞはいれるわけもない。
かくして戦いの火ぶたは三度切り落とされる。
失意の中サイトを見ていた私だったが(この時にはもう朝目が覚めたら目覚ましを止めると同時にスマホでネットを開いてクレイグスリストを見るのが習慣になっていた)、ある物件が目に留まった。ここ数日新しい物件が更新されていなかったため、のぞいてみると、写真はついていないものの不動産会社のエージェントの携帯電話が連絡先としてあった。
月$1600、ルームメイトと割っても月$800という値段は、私の中では若干予算オーバーだった。しかし、安い物件で騙された経験から「金で買える安全なら!」と思い、家を見に行った。
結果はこの上なく良かった。
静かな住宅街。お年寄りが多く住む安全な地域。日当たりの良いリビング、大きな窓、グリーンハウスとしても使える自転車置き場。使いやすそうなキッチン。1年前にリフォームした床とタイルは美しく、天井のライトがゴミで曇っているということはなかった。まだ引越しが住んでいないため、現在住んでいる人の荷物が大量にあったが、その中にはエレキギターとアンプがあった。つまりは、バイオリンを弾いても問題ないということだ。スーパーまでは徒歩5分、大学まではバスで15分もなく、歩く時間を含めても20分以内の通学時間だった。
一目見た瞬間、私とルームメイトは興奮で目を輝かせた。
唯一の懸念点は、同じ物件を狙っている人が大勢いたということだ。それはそうだ。これほどの好条件なら月$800でも安い、と私たちが感じたほどだった。
私とハンナは、それはもう頑張った。
物件を見た3時間後にはもうすべての書類を記入して、メールに添付して送信し終えていた。聞かれなかったものの、必要になるかと思って9月のはじめに入手しておいた銀行残高証明書も添付した。
結果、今朝の9時に不動産会社から連絡があり、二日後の月曜日に正式に契約書にサインすることが決定した。
銀行残高証明書が、かなりの効力を発揮したと思っている。職業が学生である内は、どうしても大家さんは家を貸すのに慎重になる。金欠になる可能性が高いと知っているからだ。しかし国際留学生で、カナダ人の約6倍の学費を納めるために送金してもらっている私とルームメイトは、銀行にかなりの額が入っていた。それが信用につながったと私は見ている。
...本当に長かった(笑)
日本を離れてまだ二週間もたっていないのに、もう数か月間がたったような気がする。
この一連の事件から学んだことはいっぱいあるけれど、今日はもう立て続けにたくさん書いたのでここまでにする。
よく頑張ったなぁ、自分。
詐欺にあい騙されかけたものの、寸でのところでミラクル回避した私は、更なる物件を求めクレイグスリストを再び検索し始めた。もうこのサイトを使うのやめろよ、と思う人もいるかもしれないが、学生の身分で社会的信用も財布も薄いまま高級物件を取り扱う不動産会社になぞはいれるわけもない。
かくして戦いの火ぶたは三度切り落とされる。
失意の中サイトを見ていた私だったが(この時にはもう朝目が覚めたら目覚ましを止めると同時にスマホでネットを開いてクレイグスリストを見るのが習慣になっていた)、ある物件が目に留まった。ここ数日新しい物件が更新されていなかったため、のぞいてみると、写真はついていないものの不動産会社のエージェントの携帯電話が連絡先としてあった。
月$1600、ルームメイトと割っても月$800という値段は、私の中では若干予算オーバーだった。しかし、安い物件で騙された経験から「金で買える安全なら!」と思い、家を見に行った。
結果はこの上なく良かった。
静かな住宅街。お年寄りが多く住む安全な地域。日当たりの良いリビング、大きな窓、グリーンハウスとしても使える自転車置き場。使いやすそうなキッチン。1年前にリフォームした床とタイルは美しく、天井のライトがゴミで曇っているということはなかった。まだ引越しが住んでいないため、現在住んでいる人の荷物が大量にあったが、その中にはエレキギターとアンプがあった。つまりは、バイオリンを弾いても問題ないということだ。スーパーまでは徒歩5分、大学まではバスで15分もなく、歩く時間を含めても20分以内の通学時間だった。
一目見た瞬間、私とルームメイトは興奮で目を輝かせた。
唯一の懸念点は、同じ物件を狙っている人が大勢いたということだ。それはそうだ。これほどの好条件なら月$800でも安い、と私たちが感じたほどだった。
私とハンナは、それはもう頑張った。
物件を見た3時間後にはもうすべての書類を記入して、メールに添付して送信し終えていた。聞かれなかったものの、必要になるかと思って9月のはじめに入手しておいた銀行残高証明書も添付した。
結果、今朝の9時に不動産会社から連絡があり、二日後の月曜日に正式に契約書にサインすることが決定した。
銀行残高証明書が、かなりの効力を発揮したと思っている。職業が学生である内は、どうしても大家さんは家を貸すのに慎重になる。金欠になる可能性が高いと知っているからだ。しかし国際留学生で、カナダ人の約6倍の学費を納めるために送金してもらっている私とルームメイトは、銀行にかなりの額が入っていた。それが信用につながったと私は見ている。
...本当に長かった(笑)
日本を離れてまだ二週間もたっていないのに、もう数か月間がたったような気がする。
この一連の事件から学んだことはいっぱいあるけれど、今日はもう立て続けにたくさん書いたのでここまでにする。
よく頑張ったなぁ、自分。
前回の記事で、望んでいた物件を逃してしまうという苦難にあった。
二番目の苦難は、タイトル通りである。
詐欺にあった。
本当に危なかった。もう少しで13万円近くを見知らぬ詐欺師に分捕られるところだった。
ことのはじめは前回の最後から続く。
住む場所がなくなった私とハンナ(ルームメイト)は次なる物件を探し始めた。そこで見つけたのが、ベッドルーム1室と「デン」(海外で書斎などに使われる小さな部屋)のアパートだった。治安が非常に良い地域にあり、学校までも25分かからない場所にあった。家賃は月$880だった。
ここで忘れてはならないのは、この月$880という家賃がいかにバンクーバーではありえないほど安い値段であるかということだ。この物件の様なアパートなら、最低でも月$1200、相場で$1500ほどだったに違いない。これは後からいろいろな物件を見て知った情報だったが、当時(数日前)の私は無知だった。
家主は現在仕事の都合上でロンドンに住んでいるらしく、カナダの家にはプロジェクトが終わる6年後に戻る予定だそうだ。私が「家を見に行きたい」とメールを送るとすぐに返事が返ってきて、「Prime Locationという第三者機関を使用してあなたに家の鍵を送るから、見に行って気に入ったら住んでもいい」という返事が返ってきた。$1300(家賃一か月分とDamage depositと呼ばれる海外では当たり前の費用)を第三者機関あてに送金すれば、その機関から今の滞在先あてに鍵が輸送されるといわれた。
メールの内容は至極まともだった。詐欺の可能性も疑ったが、Prime Locationは実在するイギリスの不動産サイトだったし、家主と電話で会話した際も特にこれといって目立った問題はなかった。
ただ、二点ほど気になっていたことはあった。
一つ目は、最初の二通のメールと、三通目のメールの文体に大きな差があったことだ。最初の二通は非常に丁寧な口調で書かれた長い文章だったが、三通目は文のはじめに使われるはずの大文字が使われておらず、本文も意味のない三点リーダー(...)が多く使われていた。通常のビジネスのやり取りではまず絶対にありえない。文は改行されておらず、短かいにもかかわらず読みづらかった。
二つ目は、電話した際のことだ。家主の名前は「Thomas Carel(トーマス・キャレル)」という、非常に欧米チックな名前だった。それが、電話で話した際、どうも変な訛りがあるのだ。具体的にはわからないが、中東の訛りがあるように思えた。比較的聞き取りやすい英語だったものの、違和感を覚えるには十分だった。
しかしこの二点だけでは「詐欺だ!」と決めつける決定打にはならなかった。文体の変化なら急いで打ったメールだったかもしれないし、電話の訛りだって移民ならありうる。独断と偏見で判断するわけにはいかなかった。
何より、私は早く家を決めたかったのだ。家主の文体や訛りなどは些細なことだった。
だが、この後、私に奇跡が起こる。
メールを受け取った次の日、ことが順調に進んだ私は指定された方法で$1300を送金するため、郵便局に向かっていた。送金方法はMoneyGramというマネーロンダリングの一種だった。ところが郵便局に向かうバスの中で、私は偶然にも去年のクラスメート、かつ良いチームメイトだったシンディちゃんという中国人に出会う。疲弊しきった彼女のただならぬ様子に私が理由を尋ねると、彼女は衝撃的な告白をした。
「詐欺にあったのだ」と。
彼女の話は以下のとおりである。
夏休みの間、1か月半分の家賃を払えば家を押さえておいてくれるという投稿をクレイグスリストで見たため、大家と連絡を取った。支払いを済ませ、荷物を移動させた後は中国に戻った。
だが夏休みが終わりバンクーバーに戻ってきて見ると、押さえておいたはずの家には別のカップルが住んでおり、置いてあった荷物は全部消えていた。携帯電話は中国のSIMカードを入れたためロックされて動かない。警察に連絡しても4か月前の犯罪なので追いかけようがない。
途方にくれたシンディちゃんは以前働いていたスーパーに行き、どうにか寝る場所を確保したそうだ。現在は別の場所でなんとかやっているらしい。
彼女はバスを降りる前に、私にこう言った。
「いいかい、絶対に見たことのない家主と契約を結んじゃだめだからね。それと、見知らぬ人に荷物を預けちゃだめだよ。大丈夫だと思っても駄目だからね。」
シンディちゃんは、3回もその物件を見に行ったらしい。それでも詐欺に引っかかった。
それを聞いた私はすさまじく不安になった。私も大家に会ったことはなかったからだ。電話で会話したものの、直接会って話をしたわけではなかった。
しかしその時の私は、とにかく来月の寝床を確保することに必死になっていたため、不安を打ち消して郵便局で支払いを済ませた。
そう、私はいったん$1300を送金したのである。
しかし、不安はぬぐえなかった。短期ホームステイの家に帰る途中、やけに赤いライトがまぶしく感じられた。それと同時に、シンディちゃんの言葉が頭にこびりついて離れなかった。
私はデータ通信料も気にせずグーグルで「Prime Location 詐欺」と調べた。
なんと。
大家のThomas Carelが私宛に送ってきたメールと全く同じ内容のメールが、ネット上にさらされていた。名前や金額は微妙に違えど、内容自体は一言一句一致していた。
私の取引相手は詐欺師だったのだ。
私はすぐさまMoneyGramに連絡し、取引をキャンセルした。のちに知ったが、もし私が取引番号を相手に送信していたら(詐欺だと気づかなければそうするつもりだった)、二度とお金は帰ってこなかっただろうといわれた。
その日はもう疲れて何もできなかったので、次の日に郵便局に行ってお金を回収し、無事銀行に戻した。
詐欺師にお断りのメールを入れると「あなたにとってこれは全部遊びだったというのですか???手続きを開始するのにこちらは$200払っているという事実を知っていますか?全部あなたを信用してのことだったのに...。」という返事が返ってきた。
面倒くさいので返信していない。そういう感情と罪悪感に訴えかけるような文章を送ってくること自体が詐欺師である証明の様なものだ。
-----
欲しかった物件を逃し、詐欺師に騙されかけた私のストレスはピークに達していた。まだ事件から48時間もたっていないのに、ずいぶん昔のことのように感じる。
笑顔を作るのも苦痛だったのはこの時だ。街を歩く人すべてが敵のように思えた。だまされかけたことで極度の人間不信に陥っていたようだ。
10時に消灯し、とりあえず寝た。
二番目の苦難は、タイトル通りである。
詐欺にあった。
本当に危なかった。もう少しで13万円近くを見知らぬ詐欺師に分捕られるところだった。
ことのはじめは前回の最後から続く。
住む場所がなくなった私とハンナ(ルームメイト)は次なる物件を探し始めた。そこで見つけたのが、ベッドルーム1室と「デン」(海外で書斎などに使われる小さな部屋)のアパートだった。治安が非常に良い地域にあり、学校までも25分かからない場所にあった。家賃は月$880だった。
ここで忘れてはならないのは、この月$880という家賃がいかにバンクーバーではありえないほど安い値段であるかということだ。この物件の様なアパートなら、最低でも月$1200、相場で$1500ほどだったに違いない。これは後からいろいろな物件を見て知った情報だったが、当時(数日前)の私は無知だった。
家主は現在仕事の都合上でロンドンに住んでいるらしく、カナダの家にはプロジェクトが終わる6年後に戻る予定だそうだ。私が「家を見に行きたい」とメールを送るとすぐに返事が返ってきて、「Prime Locationという第三者機関を使用してあなたに家の鍵を送るから、見に行って気に入ったら住んでもいい」という返事が返ってきた。$1300(家賃一か月分とDamage depositと呼ばれる海外では当たり前の費用)を第三者機関あてに送金すれば、その機関から今の滞在先あてに鍵が輸送されるといわれた。
メールの内容は至極まともだった。詐欺の可能性も疑ったが、Prime Locationは実在するイギリスの不動産サイトだったし、家主と電話で会話した際も特にこれといって目立った問題はなかった。
ただ、二点ほど気になっていたことはあった。
一つ目は、最初の二通のメールと、三通目のメールの文体に大きな差があったことだ。最初の二通は非常に丁寧な口調で書かれた長い文章だったが、三通目は文のはじめに使われるはずの大文字が使われておらず、本文も意味のない三点リーダー(...)が多く使われていた。通常のビジネスのやり取りではまず絶対にありえない。文は改行されておらず、短かいにもかかわらず読みづらかった。
二つ目は、電話した際のことだ。家主の名前は「Thomas Carel(トーマス・キャレル)」という、非常に欧米チックな名前だった。それが、電話で話した際、どうも変な訛りがあるのだ。具体的にはわからないが、中東の訛りがあるように思えた。比較的聞き取りやすい英語だったものの、違和感を覚えるには十分だった。
しかしこの二点だけでは「詐欺だ!」と決めつける決定打にはならなかった。文体の変化なら急いで打ったメールだったかもしれないし、電話の訛りだって移民ならありうる。独断と偏見で判断するわけにはいかなかった。
何より、私は早く家を決めたかったのだ。家主の文体や訛りなどは些細なことだった。
だが、この後、私に奇跡が起こる。
メールを受け取った次の日、ことが順調に進んだ私は指定された方法で$1300を送金するため、郵便局に向かっていた。送金方法はMoneyGramというマネーロンダリングの一種だった。ところが郵便局に向かうバスの中で、私は偶然にも去年のクラスメート、かつ良いチームメイトだったシンディちゃんという中国人に出会う。疲弊しきった彼女のただならぬ様子に私が理由を尋ねると、彼女は衝撃的な告白をした。
「詐欺にあったのだ」と。
彼女の話は以下のとおりである。
夏休みの間、1か月半分の家賃を払えば家を押さえておいてくれるという投稿をクレイグスリストで見たため、大家と連絡を取った。支払いを済ませ、荷物を移動させた後は中国に戻った。
だが夏休みが終わりバンクーバーに戻ってきて見ると、押さえておいたはずの家には別のカップルが住んでおり、置いてあった荷物は全部消えていた。携帯電話は中国のSIMカードを入れたためロックされて動かない。警察に連絡しても4か月前の犯罪なので追いかけようがない。
途方にくれたシンディちゃんは以前働いていたスーパーに行き、どうにか寝る場所を確保したそうだ。現在は別の場所でなんとかやっているらしい。
彼女はバスを降りる前に、私にこう言った。
「いいかい、絶対に見たことのない家主と契約を結んじゃだめだからね。それと、見知らぬ人に荷物を預けちゃだめだよ。大丈夫だと思っても駄目だからね。」
シンディちゃんは、3回もその物件を見に行ったらしい。それでも詐欺に引っかかった。
それを聞いた私はすさまじく不安になった。私も大家に会ったことはなかったからだ。電話で会話したものの、直接会って話をしたわけではなかった。
しかしその時の私は、とにかく来月の寝床を確保することに必死になっていたため、不安を打ち消して郵便局で支払いを済ませた。
そう、私はいったん$1300を送金したのである。
しかし、不安はぬぐえなかった。短期ホームステイの家に帰る途中、やけに赤いライトがまぶしく感じられた。それと同時に、シンディちゃんの言葉が頭にこびりついて離れなかった。
私はデータ通信料も気にせずグーグルで「Prime Location 詐欺」と調べた。
なんと。
大家のThomas Carelが私宛に送ってきたメールと全く同じ内容のメールが、ネット上にさらされていた。名前や金額は微妙に違えど、内容自体は一言一句一致していた。
私の取引相手は詐欺師だったのだ。
私はすぐさまMoneyGramに連絡し、取引をキャンセルした。のちに知ったが、もし私が取引番号を相手に送信していたら(詐欺だと気づかなければそうするつもりだった)、二度とお金は帰ってこなかっただろうといわれた。
その日はもう疲れて何もできなかったので、次の日に郵便局に行ってお金を回収し、無事銀行に戻した。
詐欺師にお断りのメールを入れると「あなたにとってこれは全部遊びだったというのですか???手続きを開始するのにこちらは$200払っているという事実を知っていますか?全部あなたを信用してのことだったのに...。」という返事が返ってきた。
面倒くさいので返信していない。そういう感情と罪悪感に訴えかけるような文章を送ってくること自体が詐欺師である証明の様なものだ。
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欲しかった物件を逃し、詐欺師に騙されかけた私のストレスはピークに達していた。まだ事件から48時間もたっていないのに、ずいぶん昔のことのように感じる。
笑顔を作るのも苦痛だったのはこの時だ。街を歩く人すべてが敵のように思えた。だまされかけたことで極度の人間不信に陥っていたようだ。
10時に消灯し、とりあえず寝た。
いやぁ、今週は大変だった。カラ家賃を払うのが嫌で夏の間に家を押さえずにバンクーバーに戻ったため、ここ二週間は物件探しでてんてこ舞いだった。
先週はまだテンションを高めに保っていたものの、体調がすぐれなかったり中々思った通りにことが進まなかったりしているうちに精神的に参ってきた。笑うのが苦痛になってくると「あー、自分重傷だなー」と思う。スマイルが¥0じゃなくなってくると大変だ。
いろいろなことがあったが、ひと段落したのでここで語ろうと思う。長くなるので3つの記事に分けて書く。
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一番最初の苦難は、押さえたはずの物件が逃げてしまったことだった。
海外の学生、特にカナダでは「Craigslist(クレイグスリスト)」というウェブサイトを使った物件探しが主流である。私もそのサイトを使って不動産屋に連絡を取り、お家を見に行っていた。そこで見つけた3つ目の物件が、とてもコストパフォーマンスがよかったのだ。
大通りに面しているから夜でも人通りが多い。治安の悪いイーストサイドは数キロ離れているため、治安も悪くはない。騒音は3メートルほどある大きな垣根でさえぎられて、室内はかなり静かになっている。玄関は二重になっていて、ビル自体に入るためには暗証番号が必要だ。何より、家賃が高騰しているバンクーバーで、2LK月$1300は破格の安さだった(相場は$1600~$2000)。
早速私とルームメイトのハンナは不動産屋に連絡したが、生憎と3連休を挟んでいたため留守電にメッセージをいれた。これがいけなかったらしい。
留守電は、届いていなかった。
週末明けに返事を聞こうと不動産屋に連絡すると、「もう別の人が契約を結んだ」という返事が返ってきた。
「来週末は家具を買いに行きたいね!」とワクワクしながら二人で相談していただけに、ショックは大きかった。
しかしいつまでもくよくよしていては何も進まない。過去はいったん全部忘れることにして、私はすぐさまクレイグスリストにアクセスし、新しい物件を探し始めた。
もちろん後悔はあった。
「どうして留守電に入れたんだろう。」
「どうして連絡しなおさなかったんだろう。」
「週末だなんて遠慮せずにガンガン電話を入れればよかったのに。」
ちょっとでも気を抜くと、真っ暗な思考に文字通り塗りつぶされそうだった。それを忘れるために、次の行動を起こし続けた。一日に何度もクレイグスリストを確認し、新しい物件が更新されるたびにチェックした。
そして好条件の物件を見つけたのだ。
...これが曲者だとも知らずに。
先週はまだテンションを高めに保っていたものの、体調がすぐれなかったり中々思った通りにことが進まなかったりしているうちに精神的に参ってきた。笑うのが苦痛になってくると「あー、自分重傷だなー」と思う。スマイルが¥0じゃなくなってくると大変だ。
いろいろなことがあったが、ひと段落したのでここで語ろうと思う。長くなるので3つの記事に分けて書く。
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一番最初の苦難は、押さえたはずの物件が逃げてしまったことだった。
海外の学生、特にカナダでは「Craigslist(クレイグスリスト)」というウェブサイトを使った物件探しが主流である。私もそのサイトを使って不動産屋に連絡を取り、お家を見に行っていた。そこで見つけた3つ目の物件が、とてもコストパフォーマンスがよかったのだ。
大通りに面しているから夜でも人通りが多い。治安の悪いイーストサイドは数キロ離れているため、治安も悪くはない。騒音は3メートルほどある大きな垣根でさえぎられて、室内はかなり静かになっている。玄関は二重になっていて、ビル自体に入るためには暗証番号が必要だ。何より、家賃が高騰しているバンクーバーで、2LK月$1300は破格の安さだった(相場は$1600~$2000)。
早速私とルームメイトのハンナは不動産屋に連絡したが、生憎と3連休を挟んでいたため留守電にメッセージをいれた。これがいけなかったらしい。
留守電は、届いていなかった。
週末明けに返事を聞こうと不動産屋に連絡すると、「もう別の人が契約を結んだ」という返事が返ってきた。
「来週末は家具を買いに行きたいね!」とワクワクしながら二人で相談していただけに、ショックは大きかった。
しかしいつまでもくよくよしていては何も進まない。過去はいったん全部忘れることにして、私はすぐさまクレイグスリストにアクセスし、新しい物件を探し始めた。
もちろん後悔はあった。
「どうして留守電に入れたんだろう。」
「どうして連絡しなおさなかったんだろう。」
「週末だなんて遠慮せずにガンガン電話を入れればよかったのに。」
ちょっとでも気を抜くと、真っ暗な思考に文字通り塗りつぶされそうだった。それを忘れるために、次の行動を起こし続けた。一日に何度もクレイグスリストを確認し、新しい物件が更新されるたびにチェックした。
そして好条件の物件を見つけたのだ。
...これが曲者だとも知らずに。