ブルレスケの新シーズンが今日から始動しました。
尊敬する先輩方とまた一緒に演奏できるのは本当に嬉しいかぎりです。
第10回の記念演奏会となる今季のメインはマーラーの《巨人》。乗り番は未定ですが、今日は譜読みTUTTI@雑司ヶ谷に参加してきました。楽しかったけど難しい…。

そしてその後は人生初の演奏会ダブルヘッダー。
まずは錦糸町へ。


☆ダニエル・ハーディング/新日本フィルハーモニー交響楽団@すみだトリフォニーホール
(第502回定期演奏会)
・ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番(Vn.崔文洙)
・ショスタコーヴィチ:交響曲第10番

ハーディング/新日本フィルのコンビで思い出すのは4年前のクリスマスコンサート。HMVで募集していた招待券が当たり、みなとみらいまで聴きに行ったのが良い思い出です。あのときはたしか《新世界より》を聴いたんっだったかな。

ショス10といえば自分の代の卒演で取り上げた曲。それまでは割と定番的な曲を選曲する傾向にあった早稲フィル30期生でしたが、このときはなぜかはっちゃけてました。ショス10はもちろん、フンメルのトランペット協奏曲ももう取り上げられることはないんじゃないかと思います。なんだかんだ卒演が一番楽しかったと思えるのは幸せなことですね。

閑話休題。
ハーディングのショスタコーヴィチというのはあまりイメージが湧きませんでしたが、今日の演奏は2曲とも純音楽的に捉えたようなアプローチで、ショスタコーヴィチ特有の切迫感や激しさ、諧謔性といったものはあまり感じませんでした。
ヴァイオリン協奏曲の緩徐楽章はまるでシェーンベルクでも聴いているかのような危うい美しさがありましたが、第2楽章、第4楽章は足取りが重く感じられてやや消化不良。ソリストの崔文洙はコンマスだけあって音色もアンサンブルもオケに同調するかのような優しさのある演奏でした。ただ、録音と比較するのもおかしな話ですが、いつも聴いているバティアシヴィリの録音と比較するとやはり分が悪かったかも…。アンコールは曲名わからず。

後半のショス10は木管ホルンの精度がいまいち…。1楽章終盤の木管のコラールはもっと玲瓏な響きがするはずだし、最後のピッコロの二重奏は息も絶え絶え。3楽章のホルンは出だしは素晴らしかったですが、徐々に力尽きていくかのようで聴いていてはらはらする場面もありました。弦楽器も金管直管も打楽器も良い出来栄えだっただけに木管ホルンの全体的な不調が惜しまれます。ただ、クラの首席(山本正治さんはいつの間にお辞めになられてたんでしょうか…)はクラにとっての難曲2曲を見事に吹ききっていてブラボー。どこのオケも世代交代が進んでいるようですね。

ハーディングはどんな曲でも無難にまとめられる器用な指揮者でオケもよく鳴りはするんですが、個人的にはどうもいまいち琴線に触れるような演奏にはならない印象。来年は手兵のマーラー室内管を率いて軽井沢と愛知のみで演奏会をやる予定ですが、遠征するべきか迷います。
ヤンソンス/バイエルン放送響の来日公演千秋楽。
自分の稚拙な文章では表現するのが烏滸がましいくらいに、ただただ凄かったです。


☆マリス・ヤンソンス/バイエルン放送交響楽団@横浜みなとみらいホール
・ベートーヴェン:交響曲第2番
・ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱付》
Soprano.クリスティアーネ・カルク
Alto.藤村美穂子
Tenor.ミヒャエル・シャーデ
Bass.ミヒャエル・フォレ
合唱…バイエルン放送合唱団


このコンビの第九は、今回の全集にも収録されているバチカンでのローマ教皇御前演奏会のライヴ録音が先行発売されていて、その素晴らしさは既に耳にしていましたが、今日の演奏はそれをも凌ぎ、今までの人生で聴いてきた演奏会の中でも間違いなく三指に入るものでした。

まず前半の2番。先日のサントリー公演よりもさらに精度が高くなり、少し気になっていた木管のスフォルツァンドの処理も今日は良い具合に抑制されていてこちらの方が好みに合います。オケが一つの楽器として良く鳴り、明るくも重心の低いドイツ的な音色で夢心地にさせてくれました。第一楽章第一主題から余りの美しさに少し目が潤んでしまいました…。
ちなみに、ベルリン・フィル首席ティンパニのライナー・ゼーガースが今回のツアーに参加しているのはジャパン・アーツのホームページでも紹介されていて周知のとおりですが、改めてその存在感には驚嘆させられます。ティンパニの一音一音がこんなにしっかりと美しい響きを持っているなんて新しい発見でした。サントリーは席のせいかあまり聴こえなくて残念な思いをしました。

そして後半の第九。もうこの神々しいまでの名演には言葉はいらないでしょう。
ヤンソンス、バイエルン放送響、ダイクストラ、バイエルン放送合唱団、そして信じられないほど超豪華な4人のソリスト。音楽を愛し、音楽に愛された人々。第2楽章ラストでティンパニに叩かせたり第4楽章のマーチの部分でトランペットを舞台袖から吹かせて徐々に舞台に出していく手法などいろいろと手を加えた箇所もありますが、彼らから紡ぎ出される音楽はもうこれ以上ないと確信させるほどの生命力に溢れた極上の音楽。むせかえるくらいに美麗で豊潤な音の洪水に溺れた70分の至福の時間でした。何より団員がお互いの顔を見合わせてにこにこしながら演奏しているのを見ると、こちらも本当に幸せな気持ちになります。2番に引き続きところどころで目が潤みましたが、第4楽章のドッペルフーガなど思わず笑みを浮かべてしまいそうになるほど感動した箇所も多々ありました。特に名匠ダイクストラに鍛えられた合唱の素晴らしさといったらもう例えようのないほど。

終演後の拍手はおよそ15分近く続き、一般参賀も2回。こういう演奏会に立ち会えたことは本当に幸せです。来年ヤンソンスはコンセルトヘボウを率いてサントリー、ミューザ、東京文化会館で3公演行うので、万難を排して全部行きたいと思います。

今日は音楽の神髄を味わった一日でした。
あっという間に12月ですね。
今年も秋が瞬く間に終わってしまって寂しいかぎりです。

今日は人生最後のユースチケットです。


☆シャルル・デュトワ/NHK交響楽団@NHKホール
(第1742回定期演奏会Aプログラム)
・ストラヴィンスキー:歌劇《夜鳴きうぐいす》(演奏会形式)
〇キャスト
夜鳴きうぐいす…アンナ・クリスティ
料理人…ディアナ・アクセンティ
漁師…エドガラス・モントヴィダス
中国大帝…デーヴィッド・ウィルソン・ジョンソン
侍従…青山貴
僧侶…ジョナサン・レマル
死神…エロディ・メシェン
日本からの使者…村上公太、畠山茂
合唱…二期会合唱団
・ラヴェル:歌劇《こどもと魔法》(演奏会形式)
〇キャスト
子供…エレーヌ・エブラール
ママ・カップ・トンボ…エロディ・メシェン
安楽椅子・雌猫・リス・羊飼いの男…ディアナ・アクセンティ
火・うぐいす…アンナ・クリスティ
羊飼いの娘・お姫様・コウモリ・フクロウ…天羽明恵
ソファー・木…ジョナサン・レマル
大時計・雄猫…デーヴィッド・ウィルソン・ジョンソン
ティーポット・小さな老人・雨蛙…エドガラス・モントヴィダス
合唱…二期会合唱団、NHK東京児童合唱団


デュトワは1996年から常任指揮者として、1998年から2003年までは音楽監督としてN響を率いてきましたが、退任後も毎年のように客演していて両者の良好な関係が窺えます。
デュトワの《こどもと魔法》はコンセルトヘボウ・アンソロジーの第5集にも収録されていますが、今日の歌手の中ではデーヴィッド・ウィルソン・ジョンソンが同じ役柄で歌っていますね。

《夜鳴きうぐいす》はあらすじも音楽も知らない初体験のオペラでした。全3幕ですが、第1幕を仕上げたところで《火の鳥》の作曲依頼によりその後の創作が中断し、結局三大バレエを完成させたあとに残りの2幕を作曲したとのこと。たしかに1幕だけ若書きというか、ストラヴィンスキー特有の洗練された色彩感が乏しい音楽に聴こえました。ただ、2幕以降は《ペトルーシュカ》や《春の祭典》を想起させる色彩感や野性的なリズムを感じさせる部分もあり楽しめました。
《こどもと魔法》はあまり演奏会形式には向かないように感じました。今年大野和士がグラインドボーン音楽祭でこのオペラを振っていてその映像がBSでも放送されていましたが(こちらは素晴らしかった!)、双方比較するとやはりこのメルヘンチックな童話は演出付きの方がより魅力的になるかと思います。しかしこのオペラの羊飼いからお姫様のくだりまでの音楽はラヴェルの作品の中でも屈指の美しさです。

演奏の方は歌手陣の声量不足に加え、オケも含めて全体的に低体温な演奏。デュトワの棒によりリズムがくっきり浮き立たせられたり鮮やかな音色で楽しませてくれる箇所もありましたが、いささか悪い意味での安全運転のきらいが。演奏会形式のオペラでは先月のワーグナーに完全に軍配があがりますね。

帰りはタワレコに寄ってヤンソンス/バイエルン放送響のベト全を購入。ブルーレイのマーラー全集もまだ半分しか消化してないし近いうちコンセルトヘボウ・アンソロジーの第6集も出るし、いろいろ聴きたいものがたくさんあって嬉しい悲鳴です。
現役はもちろん、歴代の指揮者の中でも一番好きな指揮者がマリス・ヤンソンス。
今日はその大好きな指揮者の演奏会に行ってきました。


☆マリス・ヤンソンス/バイエルン放送交響楽団@サントリ-ホール
・ベートーヴェン:交響曲第1番
・ベートーヴェン:交響曲第2番
・ベートーヴェン:交響曲第5番《運命》
・ハイドン/ティエリオ:弦楽四重奏曲ヘ長調より第2楽章「セレナーデ」(アンコール)


ヤンソンスと彼の手兵の一つであるバイエルン放送響によるベートーヴェン・ツィクルス。ロイヤル・コンセルトヘボウとバイエルン放送響の首席を兼任してもう10年近く経つのか…。世界屈指の2つのオケのトップに同時に君臨するなんて改めてこれは凄いことだと思います。

前半2曲は12型の対抗配置。それでもこんなにも分厚い響きがするのは流石バイエルン放送響。第1番は冒頭からやや硬さが感じられたものの、尻上がりに調子を上げていき、序盤若干噛み合っていなかった弦と管のテンポ感も終楽章では柔らかくブレンドされ、明るく溌剌とした演奏でした。重すぎず軽すぎず、絶妙なバランス感覚。
続く第2番は繊細かつ優美。交代したオーボエ、クラ、ホルンが良い味出していました。ヤンソンスはこの曲をバイエルンとの全集の前にコンセルトヘボウでもウィーン・フィルでも録音しているので、かなり得意としているように感じます。存命の指揮者で弱音をここまで儚く美しく響かせられる指揮者を自分は知りません。
ヤンソンスは所々指揮を振らずに完全にオケの自発性に任せる箇所がありましたが、これが功を奏していました。ハイドンやモーツァルトの残り香を感じさせる初期の交響曲においても、美しい独特のフレージングや間の取り方は効果抜群でした。あざとく感じさせないところがまた凄い。しかし管楽器のスフォルツァンドをかなり強烈(極端?)にやらせていたのは楽譜の版の問題なのかな。スコアも見慣れないような横長の薄いものを使っていました。

後半の第5番は鳥肌立ちっぱなしの超名演!冒頭の運命の動機から圧倒的。有無を言わさない推進力を保ちながらも、フレーズの一つ一つを慈しむように大事に歌い込んでいくのが伝わってきます。オケ全体の響きも前半よりさらにまろやかになり美の極致。バイエルン放送響の弦は以前よりさらにレベルが上がっている気がします。3楽章から終楽章へアタッカで流れ込んでいく場面も、陰から陽へ次第に移り変わっていく様が音色ではっきりとわかりました。アンコールのハイドンの弦楽もこの世のものとは思えないほどの流麗さ。
ベートーヴェンの偉大な交響曲群に真っ向勝負を挑んでいくヤンソンス。真摯で王道的な音楽の中に新鮮さや感動を必ず与えてくれるアプローチにはいつも感服させられます。指揮姿も楽しそうだし、カーテンコールで舞台を行ったり来たりするときも必ずP席の方にも挨拶してくれたり、オケを紹介するときも一回一回丁寧に左右に半身になって紹介したりと音楽性に加えてその人柄の良さがオケと長く良好な関係を続けていけているポイントなのかもしれませんね。みなとみらいの第九も楽しみです。

来年はコンセルトヘボウと来日して《英雄の生涯》やチャイ5、エマニュエル・アックスとのベートーヴェンの協奏曲を披露してくれる予定になっています。ちなみに来年は11月だけでベルリン・フィル、ウィーン・フィル、コンセルトヘボウ、パリ管、ドイツ・カンマー・フィル、トリノ王立歌劇場などが来日するとのことで、今から計画的に貯金をしておきたいものです。
昨日の夜は実家に帰り、すき焼きを堪能。両親が近く結婚30年を迎えるので何かお祝いを考えないといけませんね。

今日は久々に航空公園へ。


☆ヴァレリー・ゲルギエフ/マリインスキー歌劇場管弦楽団@所沢市民文化センターミューズ
・グリーグ:ホルベルク組曲
・ブラームス:交響曲第2番
・ベルリオーズ:幻想交響曲
・ベルリオーズ:ラコッツィ行進曲(アンコール)


所沢ミューズは早稲フィル時代に何度もホール練で使った会場ですが、客席で演奏会を聴くというのは実は初めて。ゲルギエフを聴くのは2008年のロンドン響とのプロコフィエフ・ツィクルス以来。ゲルギエフはいつも刺激的なプログラミングを組んでくれて食指が動くのですが、最近は都合がつかなかったりしてなかなか聴けなかったです。
今日が日本ツアー最終日ですが、一昨日の札幌公演まで休みなしの9連戦というのには驚きです。ロシア人の体力は凄い。

最初のホルベルク組曲は弦楽合奏。ゲルギエフが弦楽を振るというのは珍しい気がしますが、マリインスキーの弦楽器はレベルが高く、この曲を採り上げたのも納得です。初めて聴く曲でしたが、5楽章あるものの小ぶりな綺麗な曲で聴きやすかったです。
中プロのブラームスもゲルギエフにしては珍しい選曲。そもそも今日のプログラムにはロシア物は一切なし。ロッテルダム・フィルやロンドン響ならまだしも、マリインスキーを率いてロシア物をやらないというのはオペラを別とすればすごく新鮮。演奏は早いテンポでさくさく流してフィナーレで金管大爆発な演奏になるのかと思いきや、意外にも甘美でロマンティックなブラームス。緩急自在なゲルギエフの棒に崩壊寸前になる箇所(第1楽章再現部の第2主題群とか)もありましたが、総じてコラールは優しく柔らかく綺麗に響かせるし、メロディーはじっくり深く歌いこませて美しいカンタービレを聴かせてくれるし、良い意味で予想外の演奏でした。

休憩を挟んでメインの幻想交響曲。この幻想開始時点で時計はすでに16時40分をまわっていましたが、長さを全く感じさせない良い演奏会でした。
幻想はやはりゲルギエフもお得意としている曲だけあって変幻自在。オケもまさに手兵の面目躍如といった出来で、しっかりゲルギエフの音楽についていきます。第1楽章序奏部のフルートとクラの6連符は途中崩壊してましたが、それ以外は大きな破綻もなく、スケールの大きな迫力ある演奏でした。第2楽章のオブリガート・コルネットはすごく小さく吹いてましたが、せっかく吹くならもう少し派手に吹いてよかったのでは…。ハイティンク/ウィーン・フィルのコルネットが鮮烈なのですが、そこまでやる演奏はなかなかないのかな。第3楽章のイングリッシュ・ホルンは秀逸。クラの1stとイングリッシュ・ホルンが今日のMVPでした。終楽章は不気味さと狂乱が同居する中で、鐘の音のあとにトロンボーンの神聖なコラールが響き渡ったときは思わず身震い。第4楽章や終楽章最後の怒涛の追い込みはこのコンビならでは。そいうえば終楽章のエスクラは2ndが吹いていましたね。
アンコールは同じプログラムの札幌ではローエングリン第1幕への前奏曲をやったとのことで期待していたのですが、所沢ではラコッツィ行進曲。金管が今日一番盛り上がってました。


ブラ2は早稲フィルで1st、幻想はブルレスケで2ndを吹いたので、今回のプログラムは実際に演奏したことがあるという視点でも楽しめ、勉強にもなりました。マリインスキーは5年前に《火の鳥》全曲やラフ2を聴いたときよりも全体的に美しく柔らかくなった半面、金管が大人しくなった印象(これはゲルギエフの意向かもしれません)。このコンビにしてもバレンボイムとベルリン国立歌劇場にしてもそうですが、永く関係を続けていけている指揮者と歌劇場はいいですね。年末には豪華歌手陣を擁した《ワルキューレ》のCDも出ますし、今度こそオペラ公演を聴きに行きたいです。