最近職場でインフルエンザやノロウイルスが流行っています。寒暖の差がかなり激しいので余計に体調崩しやすくなりますね…。
アイリスの本番も近いですし、体調管理には気を付けます。


☆エサ=ペッカ・サロネン/フィルハーモニア管弦楽団@サントリーホール
・ベートーヴェン:劇付随音楽《シュテファン王》序曲 op.117
・ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 op.58(Pf.レイフ・オヴェ・アンスネス)
・ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第22番 ヘ長調 op.54 第2楽章(アンコール)
・マーラー:交響曲第1番 ニ長調 《巨人》
・シベリウス:悲しきワルツ(アンコール)


3年振りに聴くこのコンビ。前回来日公演での幻想やマンダリンは壮絶な演奏だったので今回も期待大です。

前半はベートーヴェン。《シュテファン王》はなかなか実演で聴く機会がない少し地味な曲ですが、このコンビにかかると鮮烈な印象を残してくれます。各楽器の音がしっかりブレンドされて一つにまとまり、方向性もぶれることがないので非常に説得力があります。フィルハーモニア管の音はやや暗めですが、サロネンの棒により導き出される音楽は色彩感豊かで芯が太く、聴き惚れてしまいます。
続くピアノ協奏曲第4番は個人的に一番好きなピアノ協奏曲ですが、実演を聴くのは初めて。アンスネスを聴くのも初めてでしたが、優しそうな風貌とは反面、意外と武骨で力強い音。一音一音が粒立っていて美しく、奇を衒うことのない正統派のアプローチです。オケの伴奏も独奏に負けじと丁々発止のやり取りで音楽に生命力を吹き込んでいて、とても鮮やかなベートーヴェンでした。

しかし、素晴らしい前半のベートーヴェンが霞むくらいに圧巻だったのがメインのマーラー!
1楽章冒頭の弦楽器のハーモニクスから息が詰まるくらいの緊張感。そして管楽器が抜群に上手い!サロネンはオケを細部までしっかりコントロールしていて、紡ぎだされる音色はまるで虹色のよう。ベートーヴェンのときとはまた違う華やかなものでした。爆発力と推進力を持つ一方、決して冷静さを失わない理知的なアプローチと鉄壁のアンサンブルで、非常に完成度が高いマーラーを聴かせてくれました。何の工夫もなく演奏すると単調になりがちな中間楽章も手が込んでいて、あっという間に怒涛の終楽章へ。終楽章もオケはスタミナ切れすることなく、最後まで勢いを持続させます。集中力が切れることもなく、熱を帯びた力強い音楽が放射され続け、まるで太陽の下にいるようでした。もちろん終演後はブラボーの嵐。アンコールはサロネン十八番のシベリウス。一般参賀も1回。

ちなみにホルン首席は金管には珍しい若年の女性でしたが(《シュテファン王》もたしかこの女性がトップだったはず)、柔らかく暖かい音色で安定感も抜群で、カーテンコールではサロネンが真っ先に歩み寄り抱きしめていました。次回来日でも彼女が来ることがあれば注目して聴いてみたいです。

サロネンの実演は本当に外れがなく、毎回鮮烈な印象を与えてくれます。願わくば2010年にキャンセルになってしまったウィーン・フィルとの来日も期待したいです。
先月、新国立劇場の2013/2014シーズンのラインナップが発表されました。
既報の《リゴレット》、《死の都》は要注目。《ヴォツェック》の再演、ベルトラン・ド・ビリーが振る《アラベラ》も聴きにいきたいです。《リゴレット》、《ヴォツェック》とアンドレアス・クリーゲンブルクの演出が2本あるのは楽しみ。

しかし、ワーグナー・イヤーなのに来シーズンはワーグナー無し。今回の《タンホイザー》も再演ですし、メモリアル・イヤーにプレミエがないのは寂しいですね。次期オペラ監督の飯守泰次郎に期待しましょう。


☆コンスタンティン・トリンクス/東京交響楽団@新国立劇場
・ワーグナー:歌劇《タンホイザー》(ハンス=ペーター・レーマン演出)

〇キャスト
領主ヘルマン…クリスティン・ジグムンドソン
タンホイザー…スティー・アナセン
ヴォルフラム…ヨッヘン・クプファー
ヴァルター…望月哲也
ビーテロルフ…小森輝彦
ハインリヒ…鈴木准
ラインマル…斉木健詞
エリーザベト…ミーガン・ミラー
ヴェーヌス…エレナ・ツィトコーワ
牧童…國光ともこ
4人の小姓…前川依子、渡邉早貴子、熊井千春、長澤美希
合唱…新国立劇場合唱団


版はウィーン版とのことですが、版の解釈にも諸説あったりドレスデン版やパリ版を入り組ませた折衷型で演奏されていたりもするようで、なかなか複雑です。
オケは序曲の冒頭から木管が不安定でどうなることかと思いましたが、ヴェーヌスブルクの音楽あたりからは段々と調子が出てきた様子。しかしあのバレエの振付や衣装はどういう意図で設定されたものなのかよくわからず。
1幕は長いバレエのあとに開閉式の妙な移動小部屋からタンホイザーとヴェーヌスが登場。アナセンはヘルデン・テノールとは言えないような歌唱でしたが、逆にタンホイザーのだめっぷりが伝わってきて人間味は出ていたと思います。ツィトコーワは美しい声に加えて容姿端麗で、ヴェーヌスの魅力にぴったり。ですが、写真で見るより演出がかなり安っぽく見えました…。

2幕は殿堂のアリアや大行進曲、歌合戦の場面など聴きどころが多い幕でしたが、とにかく合唱が素晴らしい!一糸乱れぬアンサンブルに重厚な響き。間違いなく今日のMVPは合唱団でしょう。ジグムントソンとクプファーも流石の歌唱で、ヘルマンとヴォルフラムの懐の深さや慈悲深さがよく伝わってきましたが、期待の範囲内。気になったのは2幕終盤にヘルマンがローマへの巡礼を提案したあとのタンホイザーとエリーザベトが互いに祈りを捧げるかのような歌唱がカットされていたこと。いきなり巡礼者の合唱が聞こえてきてローマに行きますじゃ二人の苦悩や悔恨が薄れてしまうし、この幕のクライマックスと言っていい場面なだけに残念。版の問題なのかな?

3幕はアナセンに疲労の色が見えてきていましたが、巡礼の合唱やクプファーの夕星の歌は琴線に触れましたね。エリーザベトが死を決意して去ろうとする際にヴォルフラムが発する「dürft' ich dich nicht geleiten?」という台詞を「お送りさせていただけますか?」と訳するのはどうなんでしょう、「お伴させていただけますか?」の方が付き添って天国にいくというニュアンスが伝わりやすい気もしました。ラストのタンホイザーを囲んでの合唱は圧巻。全体の細かい瑕を忘れさせるくらいの素晴らしさでした。

オケは尻上がりに良くなってはいったものの、ワーグナー特有の地鳴りのような低音のうねりや木管の玲瓏な響きは残念ながら聴こえず。木管は幕間に他の曲さらう余裕があるならもう少し完成度の高い演奏を聴かせてほしかったです。演出は凡庸で特に新たな発見もなし。生で観るとあんなに安っぽいとは…。

暖かかったので帰りは甲州街道をのんびり歩いて新宿へ。昔の会社の目の前を通り過ぎ、会社の近くなのに2年間1回も行かなかった風雲児でつけめん食べて帰りましたとさ。
今日の演奏会は9年振りに聴くオーケストラ。
当時まだ高校生だったことを考えると、時間の流れの速さを感じますね。


☆ヤニク・ネゼ=セガン/ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団@サントリーホール
・シューマン:歌劇《ゲノヴェーヴァ》序曲 op.81
・プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第2番 ト短調 op.63(Vn.庄司紗矢香)
・J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番ト短調よりアダージョ(アンコール)
・ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 op.98
・ブラームス:セレナード第1番からスケルツォ(アンコール)

9年前に聴いたときは当時首席指揮者だったゲルギエフが振り、曲目はオール・ラヴェル・プロでした(道化師の朝の歌、ピアノ協奏曲、ラ・ヴァルス、《展覧会の絵》。演奏自体をはっきり憶えているわけではありませんが、ゲルギエフとのフランス物は鮮やかで意外とマッチしていた印象があります。ピアノ協奏曲の終楽章でエスクラとピッコロが怪しかったこともなんとなく憶えてます。

配置は全曲対抗配置でコントラバスは舞台正面奥。ウィーン・フィルのような配置です。
冒頭の《ゲノヴェーヴァ》からなんだか不思議な心地よい音が鳴り響きます。豪華でもないし絢爛でもない素朴で地味な音なのですが、60年代くらいの録音で聴かれる古き佳き純朴な響きがします。やや響きが薄いかなと感じる箇所もありましたが、派手さはないものの管楽器中心に堅実な奏者が揃っていて安心して身を委ねることができました。
プロコフィエフのVn協奏曲は庄司紗矢香の独奏。庄司紗矢香は意外と一度しか聴いたことがなく、そのときも同じプロコフィエフでした(2006年のノット/バンベルク響)。以前より音色やアプローチに深みが増したように感じられ、指揮者やオケとの組み合わせもあるのかもしれませんが、しっとりとしたプロコフィエフでした。第2楽章の叙情的な楽想が大好きなのですが、今日の演奏も瞑想的な美しさに溢れていて心にじんわりと沁み込んできました。アンコールのJ.S.バッハも堂に入った弾きっぷり。世界中で研鑽を積んできているだけあって、さすがに貫禄があります。

メインはブラームスの4番。プログラムにはジュリーニを崇拝しているというネゼ=セガンのインタビューが掲載されていましたが、ジュリーニのようにカンタービレを重視してたっぷり歌いこむ箇所もあれば、生気溢れる追い込みでオケにドライヴをかけたりして独自のブラームスを十分に表現していて、聴いていて新鮮味がありました。殊に前半2楽章のどこか郷愁にかられる楽想は、対位法的な部分も明確に処理され内声部も明瞭に聴こえ、哀愁を帯びながらも混沌とすることなく、ブラームスの音楽が再現されていました。アンコールのセレナードはあまり取り上げられることのない曲なので聴けて嬉しかったです。

9年前に聴いたときとは良い意味で大分印象が変わりました。もう少し艶や響きの分厚さが加われば、コンセルトヘボウに次ぐオランダNo.2の地位は間違いないんじゃないかなと思います。
ネゼ=セガンには新しい手兵・フィラデルフィア管との来日も期待したいですね。
今日はリニューアルオープンしてから初の東京芸術劇場。
そもそも芸劇に最後に来たのがいつなのかわからないくらい久しぶりでした。


☆エリアフ・インバル/東京都交響楽団@東京芸術劇場
(インバル=都響 新マーラー・ツィクルスⅤ)
・モーツァルト:フルート協奏曲第2番 ニ長調 K.314/285d(Fl.上野由恵)
・マーラー:交響曲第5番 嬰ハ短調


芸劇は名物の長い長いエスカレーターが2段階に分けられたことに加え、全階にバーコーナーが設置され、座るスペースも多く用意されていて演奏会の前や休憩時間にゆったり寛げそうでなかなかいい感じに変わっていました。

しかし、音響の方はというと3階席だったせいもあるのかいまいち…。

前半のモーツァルトは無難というか凡庸な演奏。ソリストの音色も3階席までは全く響かず、弦楽器のアーティキュレーションもよくわからないくらいぼやけて聴こえました。特に盛り上がることもなく、アンコールもなし。みなとみらいは前半がイリス・フェルミリオンのリュッケルトだっただけに、やはりそちらに行くべきだったかな…。

メインのマラ5も、トランペットの高橋氏は相変わらず力強い音色で安定していて素晴らしかったのですが、ホルンがいまいち安定せず…。インバルはオケにかなり細かい指示を出していて、旋律のアウフタクトは必ずと言っていいほどタメを作ったり、テンポも頻繁に動かして分裂症的なマーラーで説得力はあったのですが、いかんせん音楽の流れが分断されてしまうこともしばしば。都響の音色は弦楽器中心に柔らかくも強靭でしなやかで聴いていて心地よいのですが、今日の演奏では時折アンサンブルが乱れたり音が混濁することもあり、いまいちインバルの解釈がしっくりきていないのか齟齬が生じているように聴こえました。

終演後はブラボーも飛び交っていたので、他の席で聴いていたら良い演奏だったのかも。とりあえず残りのツィクルスは全部みなとみらいに行くことにします。
今年最初の演奏会は1年振りの水戸室内管。大野和士との初顔合わせということで期待が高まります。今回は東京公演がないので、遠路はるばる水戸まで遠征してきました。


☆大野和士/水戸室内管弦楽団@水戸芸術館
(第86回定期演奏会)
・ドヴォルザーク:弦楽セレナード ホ長調 op.22
・ブリテン:ノクターン op.60(Tenor.西村悟)
・シューベルト:交響曲第6番 ハ長調 D589
・フォーレ:組曲《ドリー》より「子守歌」(アンコール)


ドヴォルザークの弦楽セレナードは相変わらず豪華な顔ぶれの弦楽器陣が、小編成ながらも分厚く豪華な明るい音色で聴かせてくれました。ヴィオラのモーリン・ガラガーの表情がよく見える席でしたが、アンサンブルの妙を愉しんでいるように見えてこちらもなんだか幸せな気持ちになります。大野和士は暗譜できびきびとした指揮でしたが、余計なことはせずにオケの自発性を尊重しているように感じました。
ブリテンのノクターンはテノールの西村悟を迎えて。2曲目から7曲目まで独奏楽器のオブリガートが付くのですが、初めは弦楽器だけ舞台上にいて、独奏楽器が自分の出番になると舞台前方へ続々と現れていき(ハープ、ティンパニ除く)、出番が終わるとオケの中の自分の席に座るという手法。ファゴットがマーク・ゴールドバーグ、ハープが吉野直子、ホルンがラデク・バボラーク、ティンパニがローランド・アルトマン、イングリッシュ・ホルンがフィリップ・トーンドゥル、フルートが工藤重典、クラリネットがスコット・アンドリュースという錚々たる独奏陣でした。本当に皆様素晴らしかったです。西村悟はシルキーで柔らかい声質で、臆せず伸び伸びと歌っていて喝采を浴びていました。もう少しノクターン特有の妖しさや不気味さが感じられても良かったのかもしれません。

メインのシューベルトもあまり取り上げられることのない6番でしたが、《未完成》や《グレート》に行きつくまでの若書きの薫りが感じられる、溌剌とした演奏で愉しませてくれました。簡素に造られた様はハイドンやモーツァルトを彷彿とさせることもありますが、シューベルト特有の純朴さや懐かしさが感じられる、なんだか優しい交響曲です。しかしオケの巧いこと巧いこと。管楽器はこの曲だけ登場の人も多かったですが、しっかりと確立されたハーモニーが創り上げられていて素晴らしかったです。アンコールのフォーレも文字通り眠りに誘うような心地よい音色で奏でられ、最後まで上質な演奏が愉しめました。

大野和士と水戸室内管の初顔合わせは大成功と言ってよいのではないでしょうか。水戸芸術館も小ぶりで舞台と客席の距離が近い良いホールでしたし、またこのコンビをこのホールで聴きたいですね。