今日も無理矢理仕事を定時で切り上げて演奏会へ。
みなとみらいは職場から割と近いので、移動も楽チンです。


☆エリアフ・インバル/東京都交響楽団@横浜みなとみらいホール
(インバル=都響 新マーラー・ツィクルスⅦ)
・マーラー:交響曲第7番 ホ短調 《夜の歌》


先週の《悲劇的》に続くインバル/都響のマーラー・ツィクルス。《夜の歌》は生で聴くのは初めてです。

《悲劇的》と同じくこの曲もやや遅めのテンポ設定。冒頭のテナーホルンは若干不安定ではらはらしましたが、トランペットが前回より復調していたし、管楽器が中心となって音楽にまとまりを与えていました。ただ、マンドリンとギターのテンポ感が悪かったり、奏者によってはなんとなく集中力が散漫に感じられる部分も…。しかし最後の5楽章は雰囲気ががらっと変わって、オケ全体で一気呵成に突き進んでいて素晴らしかったです。この曲は生で聴くとかなり音の情報量が多く、仕事のあとということもあってか聴き終わったときは少しぐったりしてしまいました。

ちなみにこの日も余韻をぶち壊すフラブラ有り。たしかに静かに終わる曲じゃないけれども、最後の音が鳴りやむかやまないかのタイミングで叫ばれるとなんだかなーと思ってしまいます。大多数のお客さんはちゃんとインバルが指揮棒降ろしたあと、一呼吸置いてから拍手しだしていました。

来年3月の《千人》はチケット取れなかったので、あとは同じく3月のみなとみらいの9番だけ行くことになりそうです。
チケットを取ってもなぜか仕事の都合でどうしても聴きに行けなくなってしまうことが多い内田光子。2年前のリサイタルも泣く泣く直前に手放したし、今年も11/7(木)の公演は手放してしまいました…。聴くのは3年前のクリーヴランド管とのモーツァルトの弾き振り以来、リサイタルは初めてです。


☆内田光子 ピアノ・リサイタル@サントリーホール
・モーツァルト:ピアノ・ソナタ第12番 ヘ長調 K.332
・モーツァルト:アダージョ ロ短調 K.540
・シューマン:ピアノ・ソナタ第2番 ト短調 op.22
・シューベルト:ピアノ・ソナタ第18番 ト長調 D894
・J.S.バッハ:フランス組曲第5番 ト長調 BWV816からサラバンド(アンコール)


先日のペライアも素晴らしかったですが、今日の演奏も甲乙つけがたいほどの至福の時間でした。

モーツァルトはどちらも初めて聴く曲でしたが、一音一音が清流のように澄み切っていて、全く澱みのない演奏。この人のピアノは何か哲学的というか、無駄な部分や虚飾が一切なく、聴いていてこれが正解なんだなと思わせてくれます。楽章間の会場の雑音なんておかまいなしで、自分の呼吸で自分の世界を創り上げていきます。良い意味で非常に内省的なピアノに聴こえました。
シューマンのソナタはモーツァルトとは一転して、かなり感情的な、シューマン特有の分裂症的な要素が多く含まれている演奏でした。しかし、それも全て計算されつくしているかのようで、考え込まれた精緻な音楽が奏でられていきます。モーツァルトと比較すると音の響きもやや暗めで、鋭い打鍵が印象的でした。

後半は皇后陛下がRBデルタエリアの最前列にご臨席。前半あのあたりがやたら空席になっていたのでなんとなく予想はしていましたが、ご臨席されるとやはり会場の空気が一変して引き締まります。
シューベルトのソナタも初めて聴く曲でしたが、出だしの一音目から、内田光子のシューベルトへの思い入れが伝わってくるかのようでした。これ以上はないだろうというような説得力のある響き。40分ほどの長い曲ではありますが、優しくて美しい気高い響きがホールに溢れ続け、あっという間に時間が過ぎていきました。シューベルトのソナタは今まで19~21番しか聴いたことがなかったのですが、この18番も含めて、どれも気品があり、深い味わいがある曲ですね。聴いていると襟を正したくなります。
アンコールのフランス組曲もガラス細工の様に繊細で儚い美しさがありました。シューマンの録音が一区切りついたら、次はJ.S.バッハに集中的に取り組んでしてほしいです(ぜひとも平均律が聴きたい…)。
もう今年も残すところあと2か月。
季節もだんだん秋から冬へと移っていきます。
みなとみらいにはクリスマスツリーも飾られていました(まだ点灯はしていませんでしたが)。


☆エリアフ・インバル/東京都交響楽団@横浜みなとみらいホール
(インバル=都響 新マーラー・ツィクルスⅥ)
・マーラー:交響曲第6番 イ短調 《悲劇的》


6年前の12月、このコンビの同曲をサントリーホールで聴きました。たしかプリンシパル・コンダクター就任直前のお披露目時期だったかと思います。あの演奏も素晴らしかったと記憶していますが、今日の演奏では6年という歳月が与えた成熟した音楽が聴けました。

テンポは全体的にやや遅めですが要所要所でオケをドライヴし、音楽を浮き立たせていくインバルお得意の手法。これにオケが全力で応えていきます。所々粗もありましたが、この曲には完璧な技術以上に求められるものがあるように思えますし、今日の都響はその部分を持ち合わせていたように感じます。《悲劇的》の持つ退廃的な美しさが存分に味わえました。トランペット首席の高橋氏は冒頭で外してしまったことを気にされていたのか、カーテンコールのときも一人だけ顔も上げられず、インバルに指されても立ち上がれないくらいに落ち込んでいました。たしか6年前の演奏でも同じ箇所で外してしまっていたので、そのこともあんなに落ち込む要因の一つとなっていたのかもしれません。でも冒頭以降はトランペットセクション素晴らしかったです。木管ホルンも素晴らしかったですし、相変わらず水準の高い安心して聴けるオーケストラですね。

しかし、終楽章の静寂の余韻をぶち壊す盛大なフラブラには辟易…。先日のチェコ・フィルも21時のアラーム鳴らす人(結構多い気がするのですが、そもそもなぜ21時にアラームセットしているのか甚だ疑問)がいたし、演奏自体は悪くなくても水を差された気分になってしまうことがあるのが悲しいです。

今日は出張先を定時にあがってそのままサントリーホールへ。


☆イルジー・ビエロフラーヴェク/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団@サントリーホール
・グリンカ:歌劇《ルスランとリュドミラ》序曲
・ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.61(Vn.イザベル・ファウスト)
・J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番 ニ短調 BWV1004よりサラバンド(アンコール)
・チャイコフスキー:交響曲第6番 ロ短調 《悲愴》 op.74
・ドヴォルザーク:スラブ舞曲第1集 op.46より第3番(アンコール)
・岡野貞一:故郷(アンコール)


チェコ・フィルは6年前にマカールとのマラ3、4年前にブロムシュテットとのブル8を聴いていますが、ここまで毎回違う指揮者で聴けているので様々なアプローチが楽しめています。しかし、弦楽器の朴訥とした優しく暖かい音色はいつも共通しています。それは今日も健在でした。

《ルスランとリュドミラ》は実演で聴くのは初めてな気がしますが、弦楽器の美しいうねりが堪能できました。チェコ・フィルの明るい音色が楽曲によくマッチしていましたね。
そして本日のお目当て、イザベル・ファウストを迎えてのベートーヴェン。タイミングが合わず、なかなか聴くことができなかったファウストでしたが、やはりテクニックも音程も抜群に素晴らしい。決して独りよがりに悪目立ちすることもなく、指揮者とオケと三位一体で音楽を創っていました。慈愛に溢れるような丁寧で落ち着いた、大人のベートーヴェンが聴けました。ちなみに1楽章のカデンツァはピアノ協奏曲に編曲した版と同じ、ティンパニが入るものを使っていました。アーノンクールとクレーメルが録音したものもたしかこのカデンツァだったかな。アンコールの無伴奏パルティータも絶品でした。

メインの《悲愴》は奇を衒うことのない実直なアプローチ。ここでも弦楽器の暖かい音色が心に沁みわたり、悲痛な慟哭は聴こえないものの、優しくも切ない《悲愴》が展開されました。終楽章の歌いこみはお見事。オーボエのアタックのきつさが玉に瑕でしたが、管楽器の渋い骨董品のような音色もビエロフラーヴェクのアプローチとよく合っていました。ビエロフラーヴェクは4年前に日フィルとのブル5を聴いたときは全く印象に残りませんでしたが、チェコ・フィルとの相性は良いように感じました。アンコールはお馴染みのスラブ舞曲のあとにまさかの故郷。日本限定アンコールでしょうし、サービス精神も旺盛でした。


今日は仕事を早めに切り上げてサントリーホールへ。
久しぶりに行ってみると六本木一丁目駅のタリーズがリニューアルしてたり、駅からホールへつながる新しい歩道が完成してたりと様変わりしていてびっくり。


☆マレイ・ペライア ピアノ・リサイタル@サントリーホール
・J.S.バッハ:フランス組曲第4番 BWV 815
・ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第23番 ヘ短調 《熱情》
・シューマン:ウィーンの謝肉祭の道化 op.26
・ショパン:即興曲第2番 嬰ヘ長調 op.36
・ショパン:スケルツォ第2番 変ロ短調 op.31
・シューベルト:即興曲 op.90-2(アンコール)
・ショパン:練習曲 op.10-4(アンコール)
・ショパン:練習曲 op.25-1《エオリアン・ハープ》(アンコール)
・ショパン:ノクターン op.15-1(アンコール)


2年前にも鮮烈な演奏を聴かせてくれたペライア。しばらく来日はないかなと思っていましたが、あまり間を空けずに来日してくれて嬉しいかぎりです。来年はアカデミー室内管を率いて弾き振りをしてくれるそうなのでそちらも今から待ち遠しいですね。

冒頭のJ.S.バッハからペライアらしい美音の洪水。バロックというよりはかなり艶っぽい演奏でまるでブラームスを聴いているかのようでしたが、光と影が同居しているかのような洗練されきった玲瓏な音には疑念を抱かせるような余地などありません。
ベートーヴェンの《熱情》はさらに力が入った入魂の演奏。文字通りペライアの魂、気迫が存分に籠められた音楽でした。1楽章から決然と運命の動機が奏でられ、最後まで決して弛緩することのない張りつめた世界で、ただペライアの音だけが空間を支配していました。強奏部でも音が混濁せずに常にここまで美麗な響きを保ち続けられるのは、本当にこの人だけな気がします。

後半のシューマンは初めて聴く曲でしたが、5楽章からなるソナタのような楽曲。謝肉祭という単語とは裏腹に、華やかな場面でもどこかもの悲しさを伴う演奏。《ペトルーシュカ》もそうですが、謝肉祭とは表向きの華やかさ以外になにかしらの悲哀が漂うものなのかもしれません。
ショパンは2曲続けての演奏。即興曲の叙情性、スケルツォの技巧性、異なる2つの特性を卓越した技法で完璧に表現していました。
アンコールは大盤振る舞いでなんと4曲も。終演後は多くの人がスタンディングオベーションでペライアを見送っていました。

来月のピアノ・リサイタルは内田光子。仕事で1公演行けなくなってしまいましたが、こちらも楽しみです。