(前回)怒られたときは
そんな彼にも少ない楽しみはある。
年に一度か二度、喫茶店に連れて行ってもらえるのである。
彼の父は言う。
「好きな飲み物を頼んで良い」と。
とは言っても子どもが飲めそうなものはそんなにないのだが。
四歳の頃から一人でおつかいに行かせられている彼はついつい計算してしまう。
飲みたいのはメロンソーダ三百八十円。
しかし仮に自分がメロンソーダを頼めば、弟と妹は自分より少し上のものを注文するだろう。
そうすると五人分でいくらになるだろうか。
彼は弟と妹が常に兄のすることを見ているのにも気づいていた。
小学二年生にして、そこまで気を遣ったのはなぜか。
彼自身も分からないと言う。
(つづく)
