(前回)少ない楽しみ
さらに、悩んでいる表情を見せないのも彼の特徴である。
そのせいか、今は基本無表情だ。
「僕はコーラが飲みたい。」
これ以上もたもたすると親に気を使わせてしまうかもしれない絶妙のタイミングで彼は言った。
「お前、本当にそれで良いのか。」
父が心配そうに言う。
「僕、コーラが飲みたいんだ。」
そう言って彼はメニュー表の二百五十円のコーラを指さした。
その店で一番安い飲み物である。
「そうか、わかった。」
父はそう言うと他の子にも何が飲みたいか尋ねて行った。
彼がほっとし、そしてがっかりする瞬間である。
(つづく)
