「思い出」というより「思い入れ」かもしれません
フラメンコ舞踊入門で習うセビジャーナスのように、日本舞踊で【菊尽くし】というのを最初に習いました。
本当はこれは、3〜4歳で日本舞踊を始めたときに習う曲で、ホタでいうなら今クルシージョでやっている【アンティジョン】、兎に角徹底的に基礎の動きを繰り返す曲です。
お師匠様には大変良くして=可愛がっていただき、すぐ次の曲へ進み2曲目は端唄の【さのさ】を教えて頂きました。
端唄とは江戸で流行したポップスのようなもので、古典とは違う創作的なものでしたが、これが終わって長唄の【藤娘】の入ったのです。
こちらが望んで申し出たわけでは無いが、女形の踊りばかり仕込まれました。
「貴方が自由の身なら、国立(劇場)の養成所に送り込むのに」とまで言われましたが、正直一瞬『方向転換しようかしら?』と頭を過ぎったのですが、踏み外さなくて良かったです
この時期、僕の身体は本当に調子が良かった。
バレエでアンデオール(外開き)、フラメンコでパラレル(爪先並行)、そして日本舞踊(女形)で内股と様々なポジションを取っていたお陰で偏ることなく、面白いぐらいに脚が楽ちんでした。
ところが残念なことに藤娘を始めて間もなく、お師匠様が脳梗塞で倒れられて稽古は中断。
そのまま退院されることなく。。。
バイラルテに、藤の花が咲き始めました。
そしてちょうど注文しておいたDVDも届いた。
坂田藤十郎さんを初めて観たのは、歌舞伎座での【封印切】という演目。
ご高齢のせいか、それとも上方(関西)の芸風なのか、かなり前の席だったにもかかわらず、台詞が何を喋っているのか聴き取れない発音だったのに、得も言われぬ異彩を放っていらしていて:
『この人なんなんだろぉ?』
と気になり、調べこんで【武智歌舞伎】で鍛えられ上げ実力を身に着けたと知る。
同様に舞踊の名手であった「トミー」こと故・5代目中村富十郎さんも武智歌舞伎の出身。
お陰で【武智鉄二】さんのことも知り、いろいろな本を読んで勉強させていただきました。
この方もかなり変態で、京大出て土木関係で海外での特許を得て、その莫大な財産を日本の古典・伝統芸能に注ぎ込んだ方。
性的趣向が似ている谷崎潤一郎の作品を題材に映画なども撮られているが、中でも歌舞伎演出を手掛けた谷崎戯曲の【恐怖時代】は度肝を抜かれました。
血みどろホラー作品で、僕は200回以上は歌舞伎公演を観てきましたが、あとにも先にも観客達が「きゃー」と悲鳴を上げて目を隠す舞台は観たことがありませんでした。
話しが反れてしまいましたが、今は本当に良い時代であると思います。
勿論、生で観れることに越したことはないのですが、こうして過去の偉人達の演技を映像で何度でも観れます。
このところ、寝る前にベッド横に置いてあるDVD付き小型テレビで昔の方々の映像ばかり観てから就寝してます。
そして同様に自分の練習風景を動画で見る。
例えジャンルが違えども、「芸」という表現においてのレベルは同じこと。
さて。。。
今夜は「中村ガウン治郎(←良ければ読んでみてください。昭和の破茶滅茶楽しい時代です)」さんの藤娘を観て、また自分の踊りに幻滅しますかね
ではでは!