久しぶりに電車に乗って通勤した。最近めっきり運動不足の私は扉のそばに立った。

クレイン英学校のある沿線には大学が多いため学生の利用が多い。お昼の時間帯であったが、多くの乗客で座席はいっぱいであった。しばらくすると、ずいぶん高齢の女性が乗り込んできた。ほぼ大学生で占められた座席を空けるものは誰もいない。

彼らは何を学びに大学に行くのだろう。

 

同じ日の夜、とあるレストランを訪れた。家族連れが私の前を歩いており、喜びを抑えられない小走りの子どもがレストランの重そうな扉を開けた。そのすぐ後ろを杖をついた老人男性が歩いてきた。それに気づいた10歳くらいのその子は、扉を開けたまま、その老人が店内に入っていくのを待っていた。老人は小さな声で「ありがとうね。」と子供に頭を下げた。

 

私が以前勤務していた学校の建学の精神に「行学一体」ということばがある。

 

よく意味をわかっていなかった私であったが、ある時、腑に落ちる説明をしてもらったことがある。

 

「電車で老人に席をゆずるべきだ、というのは誰でも知っている。でもそれを行動する人は意外に少ないんですよ。知識として学んだことをことを日常生活で行動できることを、行学一体と言うんです。」

 

 

また、私の母校の創設者が残したこんなことばがある。

 

「偉い人ではなく、良い人になりなさい。なぜなら、偉い人は立場が変わればたちまち偉くなくなってしまう。でも、良い人はいつ、どこに行ってもいい人だ。」

 

私はクレイン英学校で、生徒たちが英語が上達するように、また彼らが海外に飛び出していくサポートをするために働いている。でも私の生徒たちには、英語ができる前に、人に優しく接することのできる、良い人であってもらいたい。