おはなし果実のきもち⑥ | 張り子人形のやま

張り子人形のやま

張り子人形と、紙を主な素材とした立体抽象作品を制作しています。

6,女王様


 歌はどんどん大きくなりました。女の子はほっとして、その場に座り込みました。

「あなたすごい」

「あなたすてき」

「「これでもう大丈夫」」

上を見上げると、はじめよりだいぶ明るい顔で、リンゴの子は歌っていました。

「良かった!」


「「女王様がいらっしゃるよ」」

「おりなきゃあぶないよ」

「おりなきゃあぶないね」


「え?」


女の子は2人に引きずられるようにして丘の頂上から降りました。降りた瞬間、丘がかすかに光だし、土がもこもこと盛り上がりはじめました。


「女王様だ!」

「わあい!」


皆大騒ぎです。

傍らの2人も目をキラキラと輝かせています。


土の中から、ソラマメちゃんよりももっともっと大きなものが現れました。

人のようにも、そうでないようにもみえました。

全身から今まで嗅いだことのない、なんとも甘くて清々しい香りがただよってきます。

体は見る角度によって、ピンクだったりオレンジにうつり、微かに光っていました。

お腹が少しへこんでいて、その中に、大きな、黒くて丸い塊が入っています。それには、白いヒゲのようなものがついていました。


果実の女王様がやってきたのです。




「みなさんごきげんよう、げんきでしたか?」


それは、さっき女の子の頭の中で聞こえた声と同じでした。


皆女王様が来て大喜びです。


「きょうはしゅうかくさいです。みなさんでたのしくめぐみをとどけましょう。」


すると、それが合図かのように、皆それぞれ歌ったり踊ったり、いつの間にか何か食べていたりと、思い思いに楽しみはじめました。


2人は女の子の手を取り言いました

「しゅうかくさいだね」

「しゅうかくさいだよ」

「「さあ、行こう」」

「うん!」


下に降りる前に、女の子は少し後ろを振り返りました。

女王様は女の子を見つめ、微笑みました。

上を見ると、リンゴの子は、他の歌果実達と、ちょっぴり恥ずかしそうに、でもニコニコしながらお話をしていました。