黒い羊の夢 -2ページ目

黒い羊の夢

綺麗な嘘と、汚い嘘の境界線。迷子はずっと気付かない。

かくれんぼは好きじゃない
いつも目隠しをして
暗闇に身を委ねる

何を間違えて泣いたんだろう

突然君が消えた日
悲しすぎて穴が空いた
気付かぬ内に消えてしまった君の存在を実感出来ないまま
僕はか細く呼吸する

無数の言葉は無意味に終わり
僕はか細く呼吸する


服の端を引き
上目遣いに訴える

おなかすいた

君は今日もおりこうさんだね
優しい手に笑顔が零れる

頭を撫でられると 今にも蕩けそうだよ
幸せでたまらない
何でも言うこときくから お願い
早く いつもの 頂戴

夜の散歩 くたくたです

おなかすいた

君は相変わらず食いしん坊だね
優しい声に照れ笑いを返す

頭を撫でられると 今にも蕩けそうだよ
幸せでたまらない
何でも言うこときくから お願い
早く いつもの 頂戴

早く いつもの ねえ、頂戴?


 

冷えた個室 白い息 真っ暗闇の此処には
冷たい水の滴る音 何度も何度も笑うよ
凍える僕を笑うよ

苛め疲れたら優しくしてね
小さな言葉は棄てられた
心の痣が疼く
寒ささえ心地好くて

好きじゃない嫌いじゃないよくない悪くないけど

個室のドアを背もたれに ぼんやり宙を眺めてた
無機質な空間がやけに優しく感じた

冷えた個室 荒い吐息 突然光が射して
現れたヒト 揺れる視界 嗚呼、シーツが嗤う
嗤うよ

好きじゃないよくないよくないよくない?
やめてほしい?
嫌いじゃないけど。

あなたは悲しい瞳をして
ひたすら刻み込む
僕の奥に誰かを捜して
ひたすらひたすら刻み込む

僕はあのヒトじゃない
声は届かない
絶対服従
まるで犬のように這いつくばって…

抜け殻 抱き寄せる あなたの
首筋に そっと 噛み付く

鎖を引くように心を縛り上げて離さないで
その代わり もっと締め上げるから

真っ暗闇の部屋 絡まる白い息 秘密の場所
主導権を握るのは あなた?
取り返してあげる
いつか あなたを…


(寒い中 君は独り だから 私が傍にいなければならない)
僕が僕で居る為に
(私が君のあなたで在る為に)
今、殻を破ろう…

(ああ、見えなくなる…)

その世界にはもう…


 

自己嫌悪にスパイスを感じなくなった
それ以前に僕自身が薄味

遠くに見えるライト 光の虫たちが群がる
僕を置いてキラキラ笑う

夢に求めたって 画面の向こうに求めたって
快楽の底に残るのはガラクタばかり
本物を夢見たって 無い物ねだりをしたって さあ
我に返った時に見付けるのは虚しさばかりだ

誰か潰してよ
光りもしない僕を
誰か抱きしめてよ
ちぎれてしまうまで

壊れてしまう前に

夜の静寂を受け入れるようになってからは
僕の存在はとても薄味

ないものを詰め込み過ぎてこぼしてしまった
からっぽになった

ねじねじぐねぐね曲がって
性根腐りの馬鹿やろう
ひたすら耳を塞いで
ひたすら負け続けた犬

まだやれる筈なのに そう呟いたのは
やれる気がしても向き合えなかった弱さを守る為だった

あんたに何がわかるんだ そう呟いたのは
正論を受け止めきれずに中途半端に八つ当たりしたからであって

どうして素直になれないんだろう 何度も呟いた
あの日々には あの僕には 二度と帰れない わかってるよ

昨日の愛は今日消える
わかってなかった

夢に求めたって 画面の向こうに求めたって
快楽の底に残るのはガラクタばかり
本物を夢見たって 無い物ねだりをしたって さあ
我に返った時に見付けるのは虚しさばかりだ

誰か潰してよ
光りもしない僕を
誰か抱きしめてよ
ちぎれてしまうまで

壊れてしまう前に

ねえ 壊れてしまう その前に


 
忘れてしまった
何を忘れたかさえ

気付けば僕は紙を噛んで
ひたすら噛んで泣いていた
文字は滲んで読めない

気付けば僕は胸を押さえて
ひたすら押さえて喘いでいた
涙の後が痛くてこわくて

理由なんて何でもいい
慰めてくれるものがあれば生きていけるかも知れないと
小さな希望に口づけて
震える身体をごまかした

歩いても歩いても
足枷が僕を嗤う
歩いても歩いても
あの瞳に殺される瞬間を僕は何度も

気付けばひとり
流れる水を眺めて

気付けばひとり
何もせず倒れてみたりして

ぼやけた天井に
いくつもの、あの瞳を見て
絶叫に酔う

もうゆるしてくれ

それが何か 思い出せないけれど
もういいだろう?
もういいだろう
忘れたまま 消してくれ