赤鬼エティンは何を持つ? | 働くママ(SOHO編)

赤鬼エティンは何を持つ?

能登半島の地震や津波の様子に言葉もでず、ただ1日も早い復旧を祈るのみです。

 

 

「赤鬼エティン」に登場する怪物は、ある道具を使って人を石に変える。
私が覚えた本には「槌」とあるので、怪物が小さな木槌で若者を「コツン!」とたたく様子をイメージして語っていた。

 

だが、巨人の道具であれば石鎚、もしくは金槌ではないだろうか?
なんとなく、北欧神話のトール神が持つ鎚「ミョルニル」に由来するのかと想像していたが…

 

 

原作を調べると、ジョセフ・ジェイコブスは「mallet」、やはり、「木槌」と再話している。

the Red Ettin took a mallet and knocked him on the head, and turned him into a pillar of stone.

 

 

一方、アンドルー・ラングは「mace(メイス)」、つまり殴打用の武器と再話している。
紀元前1万2000年頃に木や石や土器で頭部を作ったメイスが誕生しており(wiki)」とあるように、メイスの歴史は古く、棍棒に属する殴打用の武器として金槌やハンマーもメイスに含まれる。

the Red Etin took a mace and knocked him on the head, and turned him into a pillar of stone.

 

 

木槌とメイス。

なぜ、そんな違いが生じたのか?

 

原因は、出典元の原作にある。

ロバート・チェンバース『Popular Rhymes of Scotland』(1826)では、「mell」と書かれているが、これに相当する英語がないのだ。

 

 

the Red-Etin took a mell and knocked him on the head, and turned him into a pillar of stone.

 

 

 

しかし、ようやく見つかった!

「mell」は、イギリス英語で「大槌」を意味するようだ。

「sledgehammer()スレッジハンマー)」、両手で持って振り下ろす大型ハンマーだ。


1513年の「フロドゥンの戦い」を描いたバラードに、「mell」が登場する。
このバラードで、「mell」は鉛の打撃武具を示す。

Henry Barrett, 1562

Some made a mell of massy lead,
Which iron all about did bind;

And later:

The moorish pikes, and mells of lead,
Did deal there many a dreadful thwack.

From The Battle of Floddon Field, a ballad thought to date from the 16th c.

 

 

 

ところで、赤鬼エティンは、現代においては様々なゲームに登場する。
「Ettin」で画像検索すると、彼らは確かに棍棒や鉄斧を持っている。

そして、古のエティンが持つ大槌は、人を石に変える呪的機能を持つ。
それは、トール神が持つハンマー「ミョルニル」が、武器であると同時に、山羊を蘇生させる魔法道具でもあるのと同じ理屈なのだろう。

 

 

だから、木槌でコツン! ではなく、

おそらく、大型ハンマーで ドンッキラキラドンッキラキラ なんだろうね。