『ふるやのもり』は、「この世でいちばん怖いもの」のイマジネーション豊かなおはなしになり得る? | 働くママ(SOHO編)

『ふるやのもり』は、「この世でいちばん怖いもの」のイマジネーション豊かなおはなしになり得る?

『ふるやのもり』の類話を調べてゆくと、おじいさんが孫の枕元で昔話を聞かせるものもあるようです。登場人物は、祖父母と孫、もしくは爺さまと婆さま。また、後半に続く「さるのしっぽはなぜ長い?」などの動物「なぜなぜ話」では、猿や狼や虎が登場します。

 


遠野物語の語り手、鈴木サツさんの語りでつづられる絵本「ふるやものり」は、どろぼうもおおかみも怖くないと言う爺さまと孫の寝物語から始まります。そんな怖いもの知らずの爺さまが怖がる「ふるやのもり」に、「おらよりおっかねもの、あるんだなと」と泥棒と狼は恐怖して、雨漏りが始まった途端に逃げ出します。おかげでその家の馬は襲われずに済んだというオチ。しかし、この絵本の挿絵は強烈なインパクトがありすぎて、子どものイマジネーションが広がりませんね。少々残念。

 

 

 

このおはなしが口伝えで語られた当時は、静まり返った薄暗がりのなかで響く声に、子ども達が耳を傾けたはず。退屈を嫌う子が怖いおはなしをねだったのかもしれません。そんな捉え方をすれば、語り口が変わってきます。ぼそぼそと話す爺さんと婆さんの「この世でいちばん怖いもの」のはなしは、泥棒や狼にとっては相当に不気味なものだったでしょう。

未知の怪物に怯える彼らが突然の雨漏りで始まる騒動に必要以上に恐怖し、そのヒステリーが泥棒から狼に伝染しゆく前半がとても面白くなるのです。


けれどもそれは素話であればこその楽しみ。聞いて想像する「ふるやのもり」は、どの絵本にもない自分だけの自由な世界です。瀬田貞二さんの再話は、「ふるやのもり」を物語の過程で雨漏りであることを教えてくれますから、ぜひ、声に出してお子さんに読んであげてください。絵本もありますが、「おはなしのろうそく」のほうがより洗練された語りになっています。