ああ…またやってしまった…何故、人は懲りないのだろう。

また帰りの電車を寝過ごし、今度は最寄り駅よりも6つも過ぎた辺りで目が覚める。


タクシーもあるにはあったが、こないだ仕出かしたばかりなのに、再び寝過ごしてしまったと言う腹立たしさと、自分への戒めのため、無理に歩いて帰ることにする。


しかし、その距離、約18キロ。そして時間は深夜1:18。


「いけるか…」


僕はそう呟いて歩き出した。「いけるか。」とは時間の事である。

何を隠そう、かなり前、やっぱり同じくこの駅で目が覚めて、自宅まで歩いて帰った事があるのだ。


その時は、道に不慣れだった事もあり、迷いに迷って、家に帰り着くのに、約3時間もかかった。


が、今回は違う。道なら全てこの頭の中に叩き込んである。


「よし!」


僕はそう呟くと、コートの襟を立て、颯爽と歩き出した。目標タイムは2時間ジャスト。

呼吸は一定に。 手の振りは軽快に。 そして足運びはあくまで冷静に。

それをもっとうに、ただただ黙して歩き続け…


結果、2時間と11分。いやあ惜しかった。

惜しむらくは、靴が革靴だったこと。途中で、足の裏が耐え切れなくなるほど痛くなり、スピードが落ちた事だ。これさえなければ軽く2時間は切れていたに違いない。うむ、次回に期待だな。


と、ここまで考えて、ふと気づいた。


何を期待してるんだ僕は…


そーなのだ。 ンなレース、誰も見てないし応援もしてない。しかも、大体、酔っぱらって寝過ごすわけだから、その後、長時間運動するなんてのは、体に悪いに決まっているのだ。


何を考えてるんだ僕は…


そう思うと、18キロを2時間ちょいで踏破したと言う記録も、どことなく色あせ、そのままベッドに倒れこむようにして眠りについた。


が。


深い眠りに落ちる一瞬の間に、僕は思った。


きっとまた、近いうち寝過ごすだろう。そして、その時こそ、2時間の壁を破ってやる。ちゃんとした靴を履いて…