冷房が効かぬ。
ふつう、恐怖体験をする場合は、クーラーがなくても、背筋がこおるというのが、定番だろう。

きたろうが、みえてはいけないものとかんがえてたのが、あほらしくおもえるくらいに、車内は、ムンムンしていた。

バイトおわりの汗だく男が、車に六人のっていたら、そりゃ、車内の温度は上昇する。
ニンニクをたべてるから、発汗もすごくなっていたのかもしれない。

きたろうのかおが、かすかにゆがんでいるようだ。

口もとには、さりげなく、ハンカチまでおおってやがる。
わたしは、すぐさま、ルームミラーをもとに戻し、きたろうを注視した。

いままで、存在感がないと、いっていたやつが、いまは、一番目立っている。

きたろうが、ハンカチをもっているというのが、驚いたのもある。
どちらかといえば、ぽけっとには、携帯、財布くらいしか持ち歩かない、タイプにみえる。

さっきまでは、ただ風呂に、ありつくハイエナとまで、思ってしまっている私がいた。

風呂なんて入らないで、野生らしく、葉っぱで体を洗って、ため池で体を洗い流せとまで思っていたのを、ほんとうにもうしわけない。とおもう。

車のまどが、先程からくもってしまいしかたない。
ワイバーは、どしゃぶりかのように、ひっきりなしに、うごいている。

わたしには、ワイパーが、はやく、ふろに入って、きれいになってこい!

せかしているように感じた。

中年であろうと、若者であろうと、おとこが、あつまると熱気がすごい。

ここに女の子が、ひとりでも、いれば、プラズマクラスターのように空気を浄化してくれたかもしれない。