背中にも、上から派と、下から派に別れるだろう。
わたしは、どちらかと言えば、上から派といえる。

ただ、いま、車内での、きたろうが、熱く、語りかけている状態では、絶対に口に出さない。
とりあえず、

(えーっとね、おれはね~)

と、悩んでいるような素振りをみせて、意識は、はやく、目的地につくように、全神経を銭湯にむけている。

きたろうは、そんなことをおかまいなしに、ミラーごしに、私をのぞきこんでくる。その表情は、サンタの存在を信じ、クリスマスにプレゼントをまつ、子供の顔そのものだ。
くもりのない、笑顔がぎゃくにもどかしい。わたしの顔が、まったく、背中に興味が無いことを表情から、読み取れないのか?すこし、苛立ちさえ思い始めていた。

隣ですわる丸ごとくんは、すっかり、ねたふりを、決め込んでいる。
さすがに、ここまで、うるさく騒いでいるきたろうが、いるなかで、寝るっていうことは、無理があるだろう。
飲むだけ飲んで、話を降られたくないから、居眠りをきめこむなど、その席にすわっているなら、できないはずだ。

助手席をすっかり、安全地帯に決め込んでいる。
本来、わたしをサポートするのでは、ないか?
視線をミラーごしに、きたろうへむけて、

(丸ごとくんにも、聞いてみたら?)

あたらしいターゲットをえた、きたろうは、丸ごとに、問いかける。

さあ、丸ごとくん、ねてられる暇はないぞと、となりをみると、いつの間にか、両耳にはイヤホンが、さされていた。