服を無言できる。
きたろうは、どうやら怒っているようだ。
だが、社員はまちがってない。

職務を全うしただけだ。
きたろうは、私たちに背を向けて、脱衣場から、でていく。それまで、きにしてなかったせいか、背中に『鬼』という文字はみえなかったが、いまは、その存在をしっているため、純白のTシャツにすけてみえるのが、わかる。

なんだか、寂しさがあふれる後ろ姿にみては、いけないものと感じて、浴場にむかった。

体を洗うにも、あれだけ、背中に対して、熱弁をふるっていた、きたろうが、いないのが、妙におかしく、会話はしなかったが、みんな、遠慮がちに、背中を洗っているようだった。

上から下からなんて、結局なんでも、よかったわけで、みんな、各々自由にすごしている。
これが、銭湯の醍醐味だ。

きたろうは、風呂は別にすきでは、なかったんだろう。
ただたんに、私たちが、銭湯にいくというのを、ききつけて、ここに勝機きたりと感じて、車に乗り込んできたのだろう。

わたしは、恥ずかしながら、このきたろうの存在を、車に乗せるまで、知らなかった。
それが、いま、だれよりも、色濃く、存在感をあらわし、記憶に爪痕を残していった。

わたしたちは、勇気ある行動、今回は暴走ぎみだった、きたろうを忘れないだろうと、ゆっくり、湯船につかって、90分くらいの、極上の気分を味わった。

すっかり、ニンニクの臭いで、今日、失敗したことも、リセットされた気がした。