hana


         「誰がいちばん

         かわいい?」

         べつべつに

         聞きにくるのね

         かわいい顔して


「このいえでいちばんかわいいのは、だれでしょう?」

子どもたちがまだ幼かったころ、それぞれがこっそりと

ささやきにきたのは、こんなセリフ。


そのとき、そのとき、母は同じように答えてきた。

「あなたが、いちばんよ」

まるで、重大な打ち明け話でもするみたいに──。

思いのたけ、いとおしい気持ちを込めて──。


ひとは、それがとても陳腐な質問だとわかっていても、

ときどき、聞きたくなるのだと思う。

子どもだとか、大人だとか、そういうこととは無関係に。

「あなたが、いちばん」という言葉を。


誰かにとっての「いちばん」であることは、生きていくうえ

での決定的な力になる。

「いちばん」という言葉を抱きしめてさえいれば、ひとは、

日々の暮らしを明るく、つよく、こらえてゆける。


Photo: Kazuさん