木


          君に立つ

          いっぽん

          耳をあてれば

          のびゆき枝の

          音 ひびいて


少しずつ大人になってゆく子どもたち。背丈が伸びるにつれ、

心の成長は幼かった頃のように、目にみえる単純なものでは

なくなっていきます。


手に取るようにわかりやすいときもあれば、ことばと本心は裏

腹で、何を考えているのかわからないときも。

幼さを残しながら大人びてゆくさまは、アンバランスだけど、

どこか初々しい、若木のような感じでしょうか。


目には見えないけれど、それぞれの心の中には「いっぽん」の

木があって。それはちょうど、空に向かって枝を広げている真っ

最中。いつの日か、大きな大きな「いっぽん」になるために─。


耳をあててよく聴けば、あかるいほうへ、あかるいほうへ、幹が

伸び、枝が広がる音がきこえてくるような気がします。

「聴く」ということは、心で向き合って、耳を傾けること。


心の成長は目に見えにくいものだけど。
心の声はきこえにくいけれど。
子どもたちの「いっぽん」の音を、いつも心で聴ける大人であり

たいものです。



写真: 小林 実さん 朝焼け夕焼け写真日記  から