ゆうがたは
うちの匂いが
流れてる
まぎれもなく
このいえの
(collabo-works vol.26)
→ design by 心のイロ、心のカタチ。
リビングやキッチンや玄関や─。
ゆうがた、うちの中に流れている、あの独特の音や匂いが
好きです。
子どもの頃、母は家で商売をしていました。
台所は店とつながっていて、母は慌しく行き来しながらも、
天ぷらをあげたり、茄子の煮物を炊いたり・・・。
それは日ごと繰り返される、なんてことのない日常なのに。
ゆうがたの光景は、日が落ちたあとの、あのひんやりした
空気とともに、何故か鮮明に記憶の片隅に残っています。
母になって、4人の子どもたちに「おかえり」を言うように
なった今も、やっぱり、ゆうがたは一日のうちですこしだけ
特別な時間。
一人、またひとり。家族の気配がだんだんと濃くなってゆく
夕暮れは、まとまりのない賑やかさと、うんざりするほどの
騒々しさに満ちた、だけど幸福と呼べるひとときです。
ケチャップの匂い、煮物の匂い、ごはんの炊ける匂い、それ
から、お風呂上がりの子どもから立ち昇る石鹸の匂い─。
さまざまな匂いが混じりあったゆうがたは、確かに「うち」の
空気そのもの、という気がします。
いつか巣立っていく子どもたちにとって、この家のゆうがた
が、あたたかな記憶として刻まれるといいな。
そんなことを、ふと思う夕暮れです。
あなたのゆうがたは、どんな匂いがしますか?