ネパールガンジはタライへ平原のインドとの国境の街なのだが、いつも暮らしているときにはそうでもないのだが、今回のように山間部の田舎へ行って帰ってくると、ここがなんとも汚く、自然の美しさは失われ、田舎の風景はあるにはあるのだが、手付かずの自然が残っているSalyanやPyuthanに比べるとピュアでない感じがするのだ。我々もそういう所へ行くと、何だか身が清められ、浄化されるかのように感じる。Pyuthan の山奥で見た、ゆったりと舞う、白い鷹の雪のような翼を見た時、神々しい感じさえした。私も俗世間で日々生活していると時々はピュアになりたいのでフィールドに出て自分を浄化しないと、と思う。
ともあれ、フィールドに出ていたゆえに溜まってしまったレポート書きを今日は片付けなくては…と思いながら昨日の朝8時半、身支度をしていると電話が鳴る。出るとどこかあせっている感じのRBの声。なんでも今朝の4時頃から激しい腹痛がおさまらなくてどうしたらよいかわからないのだと言う。RBが家に電話してくるなんて初めてなので驚いたし、急にそのような事を聴いてもなんと返事をしてよいか困ったが、ともかく声の調子から切羽詰っているらしいのがわかったので、「腹痛の原因は一つでなく、いろいろあるからとにかく今から郡の病院へ行って診てもらうのが良いだろう。」と答えた。どの辺が痛むのかと聞くと、下腹部が主に痛むというので尿路結石あるいは虫垂炎でもそのあたりが痛くなるので、できれば内科でなく外科のほうが良いと思うと付け加えた。電話を切った後も彼の心細い感じの声が耳についていて、一緒に病院へ行ってあげたほうが良かったかな、と思った。彼の12歳の息子は学校へ行かなければ行けないし、きっと一人で行くんだろう、痛くて歩くのも大変かもしれない。本当は付いてきて欲しくて電話したのかも知れないのに…等等、後からそんなことを考えていた。
オフィスへ行くとRBを中心にスタッフ達が取り囲んでいて、「どうだった?少しはましになった?」と聞く私に、とりあえず救急外来で処置してもらったのでこれから外科外来が開いてからもう一度行くのだという。ほかのスタッフは、やれ胆石じゃないか、いや、きっと別の病気かもしれないからインドの病院のほうがいいのではないか、とか、口々に好き勝手な事を言っているが、RBは注射を打ってもらったら大分痛みがましになったとかで深刻な表情ではなかったせいか皆もそれほど心配しているようには見えなかった。
RBが検査結果を見てほしいと持ってきたので、見たが、超音波を見る限りでは石らしいものは何も写っておらず、所見にも異常は特に記されていなかった。白血球数も7000ちょっとで増えているとは言えず、多核白血球がやや多いが急性虫垂炎では普通白血球数が10000を超えると習っていたのでその可能性もあまりないのではと言って置いた。
ところが今日、担当の外科医に検査結果を見せに行ったら虫垂炎なのでこのまま入院して手術になると言われ、いや今すぐには付き添いもいないのでできるならもう少し後にして欲しいと言って帰って来たそうである。私は、統計的に手術した虫垂炎のケースのうち半数近くが手術の必要はないケースだったというのを以前カトマンズのある病理医が学会で発表しているのを見た事があったので、今回のRBのケースもそうではないのでは?と思い、RBに、その外科医の言う事を信じようと思うかと聞くと彼は、実はこのように痛んだのは初めてではなく、3回目なのできっと虫垂炎なんだろうと思う、と言う。ともかくもう4、5日薬で散らして様子を見ようと言うことになったらしい。それでも仕事はいつも通りにこなしていたのでそんなに痛くはないのかと聞くとやっぱり鈍痛がずっと続いている、という。心配だ。