はじめに
私はクラウド定量講座の講師として、毎回受講生と一緒に A 株の自動相場収集プログラムや日内高頻バックテストの演習を行っています。実機演習を重ねる中で、多くの生徒が同じ壁にぶつかることに気づきました。
値動きが激しすぎて取引所が銘柄を一時停止すると、リアルタイム Tick データが途切れてしまうのです。銘柄が再開した瞬間、プログラム側で「いつ API の配信が再開したのか」を自動判別できず、演習の出来が大きく落ちてしまうケースが後を絶ちません。
手動で相場画面を見ながらタイムスタンプを記録する方法もありますが、演習時間が大幅に取られる上、数秒の時刻ズレが発生し、高頻度分析に必要な精度に届きません。今回は実習で頻出するトラブルと、安定して再開タイミングを取得できる手法をまとめてブログに残します。
一、普通の相場 API に潜む 3 つの課題
演習用クラウドサーバーで複数のデータソースを試したところ、汎用的な API には一時停止時特有の欠点があることが分かりました。これが時刻判別が難しい根本の原因です。
- 停止中に状態を示すフラグがない:回線が切れたのか、取引所の一時停止なのかプログラムが区別できない
- 取引所公式の再開時刻が取得できない:約定価格の時刻だけ送られ、バックテストにズレが生じる
- 複数銘柄を同時監視すると時系列が乱れる:各銘柄の停止・再開タイミングがバラバラでデータが前後する
これらの問題を解消するため、今回の総合演習では AllTick API を相場ソースとして統一的に使用しています。取引所基準の取引状態ラベルとミリ秒単位の公式タイムスタンプが標準搭載されており、一時停止時のデータ判別ミスを抑えられます。
クラウド演習環境にそのままデプロイ可能な基礎コードで、trade_stateで停止 / 再開を判別、official_tsから正確な配信再開時刻を取得できます。
二、演習標準の二段階検証ロジック
標準フィールドを活用し、人手による確認不要の自動判定フローを作成しました。レポートに記載すると加点になるポイントです。
- 取引状態フィールドによる一次判定 受信データの
trade_stateを常時監視し、値がresume_tradeに切り替わった最初の Tick のofficial_tsが、公式のデータ再開基準時刻となります。suspendのままなら停止中と判断し、再開チェックをスキップします。 - 時系列連続性による二次検証 取得した全 Tick のタイムスタンプを時系列 DB に保存し、スライディングウィンドウで確認。再開基準時刻後、時刻にズレのない Tick が 3 件連続で届いた段階で完全に配信が再開したと確定し、遅延した古いデータによる誤判定を防ぎます。
演算負荷が少ない設計なので、データ収集・バックテスト・自動売買シミュレーション、どの演習モジュールにも組み込めます。
三、実習での活用シーン 2 選
この判定フローは期末総合課題の核心技術として、2 つの場面で活用できます。
- 日内高頻自動売買シミュレーション 正確な再開時刻をもとに、停止中にロックしていたリスク制限を自動解除。再開寄付きの Tick を漏らさず取得し、短期資金の動きを捉えた模擬取引が可能です。また停止中は不要な API リクエストを止め、クラウドの帯域と呼び出し回数を節約できます。
- 複数銘柄一括バックテストのデータクレンジング 再開タイムスタンプをもとに停止期間と通常取引時間を自動で区分し、ログに区切りマーカーを記録。一時停止によるデータ断層を解消し、バックテストの精度を大きく高められます。
まとめ|実習を通して感じたポイント
多くの受講生は価格や出来高といった目立つ指標ばかり気にし、一時停止といった特殊時間帯のデータ処理を軽視しがちです。取引状態のフラグや公式タイムスタンプが備わっていない API では、自動で再開タイミングを判別するのが非常に難しくなります。
クラウド環境で状態管理に対応した相場 API と二段階の時系列検証を組み合わせれば、手動の時刻確認作業を削減できるだけでなく、バックテストや模擬売買のデータ精度・プログラム安定性を大きく改善できます。
ちなみにこの手法は相場の上下を予測するものではなく、データ配信の切れ目を正しく識別するための仕組みです。定量演習のデータ精度を上げたい方はぜひ試してみてください。