「成瀬は天下を取りにいく」 著者 宮島未奈
★★★☆☆ (個人評価 ★多めならおすすめ)
滋賀県大津市膳所に住む女子中学生の成瀬あかり。
近所のデパート「西武百貨店」が閉鎖されることになる。
あかりは幼馴染の島崎に「この夏を西武に捧げる」と宣言する。
実家が滋賀の私にとってこの小説はまるで見ているかのようにリアル。
膳所も西武百貨店もミシガンもうみのこも平和堂もめっちゃ身近。
それを小説として読めるなんてこの上なき幸せだった。
章が分かれていてそれぞれ違う人が語っている。
最初は幼馴染である島崎視点。
近所にある西武百貨店が閉店するということで成瀬は夏休みをずっと百貨店前でテレビに映り続ける。
それに何の意味があるのか…。
意味を見出しているのは成瀬のみ。
それでもいつもそばに西武百貨店があった環境でそれがなくなるという色々な感情がその行動によって消化されるんだろう。
まぁなかなかそういう思考にはならんけども。
この成瀬の行動が後のお話にもつながってくる。
成瀬という女の子は少々変わっている。
語り口調もそうだし、思考も今時の女子とは違う。
漫才を始めてM-1に出場したり、200歳まで生きるのが目標だったり。
成績もいいし運動もできる成瀬。
そんな成瀬をまぶしくそばで見つめているのが幼馴染の島崎。
彼女は一見成瀬に引きずられているようにも見えるがそうではないことがラスト近く判明する。
たぶん成瀬のような子がいたら私だったら友達にはなってないかもなぁ。
何を考えてるかわからない優秀な人って苦手だからな。
O型だからかもしれんけど、心開いてくれる人が好みだし。
まぁ最後の章で成瀬も色々考えてはいたんだなぁ…とわかるけどね。
出てくる人物が魅力的なのが良い。
成瀬もすごく魅力的だし、島崎も、成瀬を好きになる男子高校生も、40過ぎのおじさんたちも。
成瀬は膳所高校へと進学するのだけれどいきなり初日で丸坊主で登校する。
高校デビューの逆バージョンだなw
なぜそうしたのかは小説を読んでもらうとして。
この膳所高校って娘の出身校なんだよね。
だから部を班と呼ぶとか、かるたとか色々知ってることが出てきて興奮。
成瀬は京大、同じクラスになった子は東大を目指す。
進学校なのでそれは不思議ではない。
成瀬には向いてる高校だと思うわ。
文武両道、そして生徒の自主性を重んじる校風だったから。
生徒に任せる部分が多かった。
わりに自由で教師が指示することはあまりなく生徒自身が考え行動する校風。
成瀬にぴったりだわ。
成瀬は高校でかるた班(部)に入部する。
競技かるたの会場で成瀬を好きになる男の子が出てくる。
ここらへんのお話がもう青春で…。
可愛いなぁ、と母親目線で読んでたわ。
いやまぁずっと母親目線なんだけどさ。
久しぶりにミシガンに乗りたくなった。
そして近江牛のコロッケ定食が食べたい(店は知らんけど)。
のほほんと生きているように見えて成瀬は結構考えている。
真面目に。
そういう部分も好き。
友達にはなれないけど(何回も言うけど)。
遠くから憧れの眼で見つめる存在になるだろうなぁ。
自由で一人でも平気で物事に動じない成瀬。
誰かに追従したり忖度したりしないもんな。
島崎が東京へ行くことになり初めて成瀬はその存在について考える。
そして自分がめちゃくちゃ動揺していることに気が付く。
鉄人のように不動な成瀬が初めて人間臭さをみせてくる最終章。
ようやく成瀬も普通の人間なんだなとほっとすると同時にこうやって成長していくんだな…と他人目線で納得。
10代はあっという間に過ぎるし、その間悩んだり悲しんだり環境が変わったり激動の時間を過ごす時期だと思う。
その時代に生きる成瀬を見れて嬉しく思う。
できれば私も成瀬のように考えて行動して生きてみたかった。
常に周囲を気にして迎合して生きてきた私には成瀬はまぶしくてならない。
こうして読んでみると私も結構滋賀愛があったかも。
平和堂だったり琵琶湖だったりずっと私の中ではあって当たり前の存在だし。
あまり滋賀舞台の小説って読んだことなくてすごく新鮮で楽しかった。
あ、万城目さんのしゅららぼんも琵琶湖出てきたな。
あと医療小説で琵琶湖畔の病院舞台のもあったか。。
あるっちゃあるな。
さて成瀬の続編を読むのが楽しみ。
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