「感染列島パンデミックデイズ」 著者 吉村達也
★★☆☆☆ (個人評価 ★多めならおすすめ)
弱毒性豚インフルエンザが猛威を振るったあと、世界はいずれやってくる鳥インフルエンザの脅威を恐れていた…。
おりしも沖縄で鳥インフルによる感染が確認されたが数人の被害で抑えられた。
ほっとしたのもつかの間、海外帰りの人気作家、神崎慧一が猛スピードで死に至る感染症状で死亡。
まったく未知のウイルスが日本を襲う?!
パンデミック小説好きなんだよなぁ。。
なんでだろ。今がコロナ禍っていうだけじゃなくて昔から。
きっと怖いから。恐れてるからかも。
そうなったときのために心の準備をするためかも。
まぁコロナが蔓延してる現在、今まで読んだ小説は何の役にも立ってないけどな!
タイトルに惹かれて購入して読んだけど…。
【少しネタばれあり注意】
はっきり言ったら肩透かし。
私が期待したパニック小説ではなかった。
まずは導入で焼死体が見つかる。
ぐっと気持ちをつかまれる導入。一体なぜ?誰が?という疑問を投げかけ、そして場面は少し前の日時へとさかのぼる。
ここでもう期待値上がりまくり。
なんだろなんだろ、って。
そして最初に沖縄で鳥インフルエンザが発生するんだけど、離島での発生だったこと、そして感染者が米国人だったことから米軍が介入しことを収めてしまった。
これがパンデミックの始まり…ってわけではなかった。
それでも最初の焼死体といい、鳥インフルの人への感染といい、これは強毒性の鳥インフルが猛威をふるうんだろうなぁという想像を膨らませていったわ。
ところが鳥インフルは意外とあっさり収束。
まだ人から人へと感染するほどの変異は遂げてなかった。
おそらく飼っていた鶏に接触した米国人たち(こちらは死亡)と、その飼い主(こちらは助かる)だけが直接鳥からウイルスに感染したらしかった。
興味深かったのは、強毒性のインフルに感染したとして若い人ほど、多臓器不全をおこし死亡する確率が高くなること。
活発な免疫のせいでウイルスをやっつけようとして正常な臓器までやっつけてしまうから。
鳥インフルエンザの怖さってこれだよな。
で、そろそろ国内でパンデミックが起こるのかと思いきや、人気作家である神崎慧一の話やその生い立ちに関する話が続く。
不穏な空気になるのは神崎が小説のために海外に行くくらいか。
まぁそれも帰国後に体調を崩し…というところまではそこまで病気の話にはならない。
ムンクの絵がキーになるんだけど、どう繋がるのかこの時点ではまったくわからない。
そして神崎が帰国、体調が悪くなり叔父の病院に駆け込む。
病状はすぐに悪化、体中から血を流し死亡。
新しい感染症と判断した医師(神崎の叔父)はWHOや厚生労働省に報告。
ここでようやく新型インフルエンザの脅威が襲う。
しかし!ここでもパンデミックは起こらない。
神崎が乗ってきた飛行機、電車、タクシーそれぞれで接触した人々の中から感染者は一人として出ない。
安心し始めたときに、神崎を診た叔父である医師の感染が発覚。
ここらですでに小説は終盤なのよ。
もうパンデミック起こっても遅いやろ!
このウイルスの正体というのが肝になってるんだけど、パンデミックの話ではなくてですね。
こういう感染の仕方もある、こういう脅威もあるという斬新なウイルスの感染話だった。
いつパンデミックになるかわからない、ということでこのタイトルになったんだろう。
この小説のウイルスはとりあえずは抑え込めた。
でも、こういった脅威はいつ襲ってきてもおかしくない、常に警戒しなければならないというお話だった。
コロナ禍の今、確かに何が起こるかわからないと思う。
致死率の高くないウイルスだったにもかかわらず、世界中でたくさんの人が亡くなり、今でもまだ感染者は増え続けている。
ようやくワクチンが打てるようにはなったけど、それで感染が防げるわけではない。
治療薬はまだまだできそうもない(2021年8月現在)。
コロナの場合、致死率が高くないことが蔓延の理由でもあるけど後遺症が残ったり、基礎疾患のある方にとっては恐ろしいウイルスであることには間違いない。
健康な人だって死亡するんだから、コロナのすべてがわかっているわけでもない。
リアルで経験しているパンデミック。
小説の中ではどう解決していくのか…が気になって読み漁ってるけど、今回のこの小説に関してはウイルスの出どころ、感染の方法、そういったものが斬新だった。
あと、どんでん返しというものでもないかもだけど、感染してない?ほっ。。いややっぱ感染してた!
とか、感染方法とかいろいろ考えても見なかった内容でそこも面白かった。
面白かったけどパニック小説を期待して読むとちょっと違う…となると思う。
でも、ムンクの絵がどうかかわってくるのか、どうやって感染するのか、なぜそこまで感染が広がらなかったのか、等々は興味深く読めるはず。
★は二つにしたけど、このタイトルの意味のとらえ方次第でとても面白い小説だと思いますわ。
なかなか凝った設定だった。
安心させてやっぱりか!!!みたいな展開もあったし。
どきどきしながら読めたわ。
しかしコロナ禍の現在、リアルパンデミック中だとなんだかな。
今の生活が怖すぎる状態なんだろうな。そういう時って小説であまり怖い思いをしたいとは望まないんかもしれん。
それでも一般市民の行動や心理を知りたいのでこれからもパンデミック小説読み漁ると思います。
やはり自衛が一番!!
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