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「イン・ザ・プール」 著者 奥田英朗

 

★★★★☆(個人評価 ★多めならおすすめ)

 

伊良部総合病院の地下にある心療内科。
そこの精神科医、伊良部は色白で太っていて注射フェチ。
治療しているのかしていないのか…判断に迷うほど変な医者。
今日も病院には様々な悩みを抱えた患者がやってくる。
プール依存症、陰茎硬直症、自意識過剰の妄想癖、強迫神経症、携帯依存症…。
それらの患者に伊良部が施す治療法とは…。

 

 

伊良部総合病院の地下にある心療内科。
そこに勤務する伊良部精神科医は変人。
見た目も太ってるし色白だし注射フェチだし、ととにかく変わっている。

 

イン・ザ・プール


普通に診療しているようにはまったく見えない。

小説最初の患者は、不定愁訴、仕事等のストレスによる体調不良を訴えた男性。
いくら内科で調べても異常は見当たらないのに、下痢をしたり体調がすぐれない。
なんか、めっちゃありそうな病状。
身体に異常がないからと、地下にある心療内科をすすめられ、伊良部の診察を受けることに。

しかし伊良部は、ただのストレスだとわかり面白くなさそう。
多重人格だとか、幻聴が聞こえるだとか、そういう症例が診たかったらしい。
ストレスが原因だけど、ストレスを失くすことは不可能だから、他に眼を向けるようにしたほうがいいとアドバイス。
例えばやくざを襲う。
命からがら逃げないといけないのでストレスを忘れることができるらしい。
もしくは紛争地帯へ行くとか。
中年のハシカみたいなものだからほっとくしかない…みたいな対応。

 

納得いかない男性は、ストレス解消のためプールへ通うことにする(独自の判断で)。
まぁ伊良部は運動はしたほうがいいとはすすめたけれども。
プールへ通うようになるとなんとなく体調が良くなった気がした男性。
泳いでいると気持ち良く、どんどん泳げるようになるとますます面白くなっていく。
そしてそのうち、プールに入らないと反対に体調が悪くなるような気がしてくる。
仕事を早退してまでプールに通うようになる男性に妻は心配になってくる。

 

イン・ザ・プール2

 

で、伊良部はというと。
男性が通っているプールに自分も通いだすように。
でも大抵のプールは休憩時間が決まっていて、一時間に数分休まないといけない。
男性も伊良部もできるだけ長距離をゆっくりいつまでも泳ぎたい。
でも海は怖い。
そこで伊良部から真夜中のプールに忍び込み、朝までゆっくり気が済むまで泳ごうと誘われる。

不法侵入だから断るのだが、伊良部はさっさと真夜中プールに行き窓から侵入しようとする。
あわてて止める男性。
しかし太りすぎの伊良部は窓から身体が入らない。
抜けなくて大変な思いをしているうちに、男性の思いが少し変化する。

 

もしここで5時間ぶっ続けで泳いでもきっと次を求めるようになる。
つまりきりがないのだ。
麻薬のような中毒症状に自分が落ちいっていることにようやく気が付く男性。

結果、プール依存症は少し回復に向かうというお話。
伊良部が役に立ったような気もしないでもないという感じ。

 

他のお話もすべて伊良部が余計な口をツッコミ、一緒にやろうとしゃしゃり出てくることで患者の目が覚める系が多いかな。

別に目からうろこの治療法が出てくるわけでもなし、伊良部が的確なアドバイスをするでもなし、なんの治療も施してはいない。
注射フェチだから、必ず注射はするけども。

他にも携帯依存症の高校生には、自分も携帯を買ってメールやラインをしようとするが、伊良部には友達がいっさいいないため、高校生にメールを打ちまくってうざがられる。
友達がたくさんいることが自慢の高校生に対し、自分には友達はまったくいないと胸を張る伊良部。
高校生は最初呆れるが、結局自分にも取り換えのできる気軽な関係の相手が大量にいるだけで、自分の事を真剣に思っている友達など一人もいないと気づく。

 

伊良部は子供のまま成長したような男。
欲望のまま、楽しいと思えることには一生懸命になるけど、すぐ飽きる。
病院の息子なのでお金はある。
患者がハマっていることに、自分もすぐ興味を示し一緒に始めるがすぐ飽きてやめてしまうというね。

それでもこの小説に出てくる神経症の患者は大体回復していくから不思議。
伊良部は全然治療してないのに。
良いアドバイスもまったくしてないのに。

 

こんな変わった面白いお医者さん初めて読んだわ。
医療小説大好きやから、色々読んだけど、ここまでどうしようもなく見えるお医者さんは初めて。

別に患者の事を真摯に考え一緒に悩み…というわけでもない。
自分の事しか考えてない伊良部。
なのに、患者はいつの間にか伊良部を友達のように気を許し始める。
伊良部は考えてやってないけどね。

 

全部の症例が面白かったけど、陰茎硬直症、強直症とも書いてたこの症例が面白かったな。
つまり男性の陰部がずっと立ちっぱなしになるということ。
興奮しているわけではないのに、血液が流れっぱなしになる。
これも神経症のひとつらしい。
これは反対にうらやましい人もいるかもしれんねぇ。

でもお話は決してヤラシイ方向にはいかない。
どちらかと言えば患者は日常生活を普通に営めなくなってしまう。
どうやってごまかしてもズボンが盛り上がっているのがバレて変態のように思われてしまう。

この患者は言いたいことをすべて自分の中に収めてしまう性格。
妻が不倫をし、その結果離婚したのだが、その妻にも言いたいことを言えずに終わった。
伊良部は患部を思いっきり膝でキックし、痛みで納めようとしたのだが症状は変わらず。
別れた奥さんに文句を言いにいこう!と伊良部から誘われるが結局言いだせないまま。

 

しかしこうなると本当に不便なんだな…と初めてわかったわ。
電車に乗っても痴漢と間違われてしまうから、なんとか鞄で隠し女性の隣には絶対行かないようにするとか。
これは本当に困る事態かもしれない。

結果どうやって治すのか…は本を読んでいただくとして…(不親切!!)

 

とにかく患者との関わり方が変わっている。
自分の興味のまま突っ走る伊良部。
そしてすぐ飽きる。
結構役に立つことを言ってるのかもしれないけど、あまり治療の役には立っていない感じ。

今までの医療小説とはまったく違う展開にすごく面白く読めた。
二巻も出ているらしいので読みたい。

これはなかなか面白いし、自分がこういう病にかかったらどうなるだろう…と考えるのもイイ。
結局心の問題は自分自身で解決するしかないんだろうね。
誰に何を言われても自分自身が納得してないと絶対治らないわけで。

面白かったです!おすすめ!

 

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