「光る牙」 著者 吉村龍一
★★★★☆(個人評価 ★多めならおすすめ)
真冬の北海道、誰も来ない山奥でカメラマンが無残な遺体で発見される。
”穴持たず”と呼ばれる何らかの理由で冬眠できなかった羆の仕業とわかる。
早速狩猟隊が結成され退治に出かける。
しかし仕留めた羆は犯人ではなかった。
人を食い殺す羆は別にいる…。
そのまま何事もなく北海道に遅い春がやってきた。
そして、とうとう”そいつ”は人間に対する憎しみを携え動き始めた。
以前から何冊か羆の怖さを描く小説を読んだことがあった。
そのたび、羆が出没する地域には生涯近づくまいと心に決めた。
それくらい羆を描いた小説は怖いのだ。
この小説もやっぱり怖い。
怖いだけじゃなくてせつなくもある。
羆の走るスピードは実は馬並みに速いとか。
木に登って逃げても、実は熊は木登りが得意とか。
爪に少しひっかけられただけでも、頭の皮がずっぽり剥がれてしまうとか。
知能が非常に高く、わざと足跡を逆に戻り、隠れて人間が近づくのを待ち伏せするとか。
一度手に入れた獲物に対する執着が異常に強く、その獲物を盗られた場合、執念深く取り戻そうとするとか。
とにかく羆は怖い!!
怖いが、人間の醜さに比べたら、彼らは神々しいとさえ言える。
小説の中で、巨大羆の小熊を銃で殺し、その復讐で惨殺される道議会議員が出てくる。
こいつは大型獣を仕留めたくて仕方のないマニアで、使用禁止になっている罠まで仕掛ける始末。
当然羆はこいつに小熊を殺された復讐にやってくる。
殺し方は残酷だけれど、それだけの事をやってるわ、こいつは…と思ってしまった。
羆と戦う=自然と戦う、みたいな図式になるのはしょうがないのかな。
特にこの小説に出てくる羆は特別。
山の神とも言える存在。
自然を壊す人間に対し、羆と言う自然の化身が復讐しているのだという感じ。
自然の驚異の前では人間はいかに無力かということ。
災害も同じだよね。
今回主人公は若き自然保護官、樋口。
しかも以前はサラリーマンをしていて、自然保護官になったという経歴がある。
その上司がもうめちゃくちゃ頼りになってかっこいいことこの上なし。
元自衛官で射撃の腕前はすごくて、サバイバルにも長けてて。
しかし、実際に戦う羽目に陥るのは元サラリーマンの樋口。
熊って頭を狙って発砲するんじゃないんやねぇ。
あばらなんだって。
本当なのかな。本当なんだろうな。
人間を襲い食い殺す羆。
怖いんだけど、同時に哀切の念が沸き起こるのはなぜか。
人間を襲わざるを得ないその境遇にか。
小熊を殺された同情なのか。
羆のあまりの狂暴さと圧倒的な強さの前に恐怖と同時に畏敬の念を持ってしまうのは仕方ないのかもしれない。
この小説の醍醐味は羆の恐怖だけではない。
北海道の人間を拒む厳しい自然環境をまるで映像のように見せてくれるところ。
主人公と一緒に、雪に埋もれ、雨に打たれ、恐怖におののき、雷に打たれ、炎を間近で感じる。
土や草のニオイや、雪の冷たさ、わが身が凍えていくようにも感じるほど。
羆とともに北海道の大自然の恐怖にもどきどきさせられる。
自然と上手く共存していくのが人間のあるべき姿だと思うし、娯楽で獣を狩るのはやめて欲しいし、もう少し自然に対し畏怖の念を持って接するべきなんじゃないかと改めて考えさせられたわ。
結論、ヒグマが生息している地域には生涯行きません!!
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