~第3章 本物の悪夢の始まり

 

わが子を殺してしまうかもしれない

 

読書と映画鑑賞が好きだった。

性格なのか、

小説を読む際は一言一句間違えずに読み、

その情景が自分の中で鮮明にイメージできないと次の文章に進めなかった。

映画もそう、

字幕の場合は字幕を完璧に読み、

吹替の場合は何をしゃべったのか正確に聞き取らないと気が済まなかった。

ながら見なんてとてもできない。

本も映画も集中して、

完全にどっぷりとその世界観に浸っている状態が好きだった。

 

映画は映画館で観るのが楽しい。

ある年は、一年に六十作品を鑑賞した。

一か月に五本ペース。

ほぼ毎週、映画館に通っていた。

映画館独特のポップコーンの匂いに心が躍る。

映画の最中にパニック発作が起こる可能性があるので、

事前に頓服を飲んで鑑賞していた。

読書や映画鑑賞は現実逃避できるので、

疲れた時やリラックスしたい時に好んで見た。

映画館以外でも、

映画は家でサブスクを利用して鑑賞した。

 

そんな私は二児の父親になった。

十一歳になった息子、五歳の娘。

パニック障害を持つ父親ではあったが、

子供との時間は何よりも大切に過ごした。

 

家では一緒にテレビを見て笑い、

小学校や保育園であったことを聞いては笑い、

布団の上で妻に怒られながらふざけあって笑い、

ととにかく笑いの絶えない楽しい家族だった。

子供は自分の生きがいであり、

癒しであり、自分の命以上の存在だった。

発作に不安を抱きながらも、

子供との楽しい生活を送っていた。

 

 

二〇二〇年六月十日 水曜日。

普段と変わらない一日になるはずだった。

 

その日は特に疲れていたのかもしれない。

この頃は私の父親が認知症を患い、

私は何かと大変な日々を過ごしていた。

仕事での疲労も溜まっていたのだろう。

 

→次回に続く…

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