「君はエメラルダス!」(え、メーテルが良かった・・・) | 原元美紀 オフィシャルブログ 「原元美紀のミキペディア」 Powered by Ameba

「君はエメラルダス!」(え、メーテルが良かった・・・)

尊敬する漫画家の松本零士先生が星になられました。

 

以前CBCラジオの特番で

ご自宅にインタビューに伺ったことがありました。

そのときのブログを再公開させていただきます。

1998/8/7
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「いや、君はエメラルダス!」

 


松本零士先生のご自宅は、東京のとある住宅街にある。

もちろん私もディレクター(以下D)も初めてなので、

住所を頼りに訪ねていった。


私 「番地はここだね!」
D 「えっ、でもこれは・・・!」
私 「そう。オンボロアパート。

やっぱりあの松本零士だけあって、四畳半に住んでるのよ!」
D 「なるほど・・・。」


しばし感慨にふける私たち。

 

しかし、どこにもそれらしい表札が無い!?
なんと、私らは○○町と東○○町を間違えてしまったのだ・・・。

 

とすると今の感慨は一体なんだったのぉ。

 

偶然にもボロアパートが建ってるなんて、紛らわしい!

(いや、私が勝手に間違えたんだけど)


本当の松本先生のご自宅は想像通り(ホントかよ)、

とてもモダンな一軒家でした。

 

私たちは応接間に通され、

上品な女性が紅茶を運んで来て下さった。

 

はっ!もしや!!


私 「あの、ひょっとして、奥様でいらっしゃいますか?」
奥様「ええ。」
私 「ということは、牧 美也子先生ですね。

私作品読ませて頂いておりましたっ!!」
奥様「まあ、どうもありがとう。」


そう。

松本先生の奥様は、広く知られている通り、

漫画家の牧美也子さんなのだっ。

なんてラッキー!


そこで、松本先生登場!!きゃ。

 

やっぱりドクロの毛糸の帽子をかぶってる!

トレードマークだもんね。


30分も遅刻してしまった私たちに、

他のお客さん(編集者やマンガ専門店の営業さんなど)を待たせて、

(すみません!)

熱く熱く宇宙への想いを語ってくれました。

ちなみに先生のご自宅玄関には

ファーストクラスの座椅子があるのです。

「編集者とか長時間待たせるから、

少しでも快適にと思ってな」


うーん!すごいお気づかい!!
 

さらにリビングにはドーンと地球の壁画がっ!


<以下一部再現>

松本先生
「宇宙は身近になって来て、宇宙服もいらなくなるし、

宇宙船の形も自由自在な未来がやってくるでしょう。

これからは地球での日常生活を宇宙に持ち込む事が可能ですよ。」

 


原元  「先生、では、機関車や戦艦どころか、

四畳半のボロアパート型宇宙船なんてどうでしょう!」

松本先生
 「・・・。可能です。
中ではサルマタでラーメンもすすれることでしょう。」


マ、マジですか。先生。
後は放送でお楽しみ下さい。

放送局は、なんと私の古巣CBCラジオです!

 

• 番組・・・「日曜なんて大キライ!」

• 放送日時・・・1998年8月9日(日)13:20頃~14:40頃

• 松本先生が名誉館長である各務原市の航空宇宙博物館から生放送です!!

 

東海地方の皆さんぜひ聞いてね!


**おまけ**
インタビュー後、ディレクターが、

男性スタッフから頼まれた

「銀河鉄道999」のマンガ単行本を持参してサインをして頼んだ。

先生はすかさずページをめくり、一言。


「昭和53年のものだが、初版ではないようですね。」


やはり漫画家先生も初版かどうかを気にするもんなのか・・・。

 

サラサラとサインとメーテルの横顔を描いて下さった。

 

そこで、私も!


原元  「先生、これに!」
松本先生 「ほう!懐かしい。『ミステリー・イブ』かぁ・・・。

僕が34,5歳の頃に描いていたものですねぇ。」

 

(美しい宇宙人女性と、貧乏青年の四畳半同居物語で、

当時青年誌に連載をしていたので、ちょっとHなお話。)


原元  「はい。私の方は初版本(昭和53年)です!

先生、このマンガ続きはないのでしょうか?

今日は結末を直にお聞きしようと思って・・・。」
松本先生 「実は未完なんだよ。

それより君これをどこで手に入れたの?」
原元   「・・・いとこのお兄ちゃんのを貰ったのです。」


正確にはいとこのお兄ちゃんのをかっぱらったままなのであるが。

 

さて、私の持参した「ミステリー・イブ」にも

すらすらとサインを書いて下さる先生。

ふと手を止め、


「いつもサインをする時は、メーテルを描いてるんだけど、

このマンガにはイブ(宇宙人の美女)を描こう!」


あっ!先生、実は私、メーテルを描いて欲しかったんですぅ・・・。

 

原元 「先生、私メーテルが理想の女性なんです!」

先生「いや、君はエメラルダス。

メーテルは母性、慈愛の女性だけど、エメラルダスは戦う女戦士なんだよ。

君はエメラルダス!戦う女。」

原元 「先生、どうして初対面で私のことがそんなことわかるのですか?」

 

しばらくこの押し問答が続き・・・、

結局メーテルのサインは貰えなかった。

一生の不覚。

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メーテルのモデルは、

「我が青春のマリアンヌ」の主演女優である
ドイツのマリアンヌ・ホルトさんだと語ってくださいました。

一目惚れして何度も観たそうです。

 

きっとこの映画のタイトルからも、

「青春」という言葉が先生の胸に大事にすみ続けたのではないでしょうか。

 

松本零士先生、

私たちにたくさんの「青春の幻影」を見せてくれて

ありがとうございました。

 

先生の言葉

「命は限りあるから美しい」

は決して忘れません。

 

宇宙の海でどうぞ安らかにお眠りください。