加筆・あの日から5年。「震災報道を考える」メディアフォーラム | 原元美紀 オフィシャルブログ 「原元美紀のミキペディア」 Powered by Ameba

加筆・あの日から5年。「震災報道を考える」メディアフォーラム

第5回メディアフォーラム「震災報道について考える」を
観覧してきました。

{A0E8A991-FFCF-49EE-A879-9F99F5842ABB}

ジャーナリストの池上彰さんをコーディネーターに、
テレビ朝日と朝日新聞が『震災報道のあり方』について、
東日本大震災の報道を振り返り、反省し、
そして未来を見つめるというテーマで開催されています。

震災から1年後の2012年に始まったイベントで、
私は毎年観覧しているのですが、
被災地取材を経験した私にとっても、
一人の国民としても、学ぶことが本当に多いです。

今回はアナウンス学校の教え子で
フリーアナウンサーの小椿希美ちゃんを誘ったのですが、
彼女も驚くほど、
このフォーラムの特徴を一言で言えば、
『辛辣』でしょうか。

{A52A1B85-FFF7-4342-B6C5-01749022DCD0}


第1回目から一貫しているのは、
ゲストパネリストに被災地で活動をしている地元メディアや
ボランティア等の方たちを迎え、
テレビ朝日と朝日新聞といういわゆる『大手メディア』が
意見を受け止めるという構図です。

向けられる言葉の中には、
「地元新聞社は自分たちが被災した中でも
手書きで壁新聞を作っていたのに、
どうして全国規模の大手新聞社が何もできなかったのですか!?」

「紙面やテレビで情報を伝えることにこだわるあまり、
ネットを使いこなせていない。知っている情報は早く流してほしかった」

「停電した避難所ではテレビなんて見られなかった」

など、大手メディアにとっては厳しい言葉ばかり。

会場の聴衆からも、
「死者行方不明者2万人と言われているが、
報道では遺体が映されていないので、よくわからなかった」

などという意見も出ました。

一つ一つに池上さんが解説を踏まえながら、
テレビ朝日と朝日新聞のパネリストに納得のいくまで追及するのです。


「東京」のメディアが地元被災者の方たちと
このように自己反省をしながらも歩み寄ろうとしている姿勢を持つことは
なかなか珍しいことです。

私も発せられる一言一言を胸に刻み付ける思いで毎回聞いていました。


そして、5回目の今回は、
『震災から5年』という言葉がキーワードになりました。

ゲストパネリストの菊池由貴子さんは
岩手県大槌町で2012年から地元大槌の復興情報を伝えようと、
なんとたった一人で「大槌新聞」を発行している方です。
未経験ながら一人で取材、執筆、編集を行い、
町内全戸に無料配布しています。

その菊池さんは
「私にとって、5年なんて節目でも何でもない」と言い切ります。

『節目報道』なんて、実際にはなんの役にも立たないし、
それで現実が変わるわけでも終わるわけでもないと。

また、こんな意見も。

「メディアも行政も小さい方が良い」

「本来は地元を良くするための地域のためのメディアで行政なのに、
あまり大きくなりすぎると、
メディアのためのメディア、行政のための行政になってしまう。

地域と顔が見える関係にいれば、
存在意義を見失わずにいられるのでは・・・」


もう一人のゲストパネリストは石田朝也さん。
映画監督で、震災から2年後に福島第一原発事故を取材した
ドキュメンタリー映画「無知の知」を発表されました。

{26C581F6-C3D8-4276-B0D9-7EEE11734166}

その手法は、あの原発事故に関わった政治家、各種専門家らに
先入観を持たずに
「教えてほしいんですけど」と率直に質問をぶつけること。

日本版マイケル・ムーアですね。

当時の菅直人総理大臣や、班目春樹原子力安全委員会元委員長、
地元住民の方々が
驚くほどざっくばらんに当時の様子を語っています。

(こちらからで少しだけ映像が見られます

なぜ彼らが素直に語ったのか!?

石田監督はこう語ります。

「今だから話せるということではないでしょうか。」

権力に限らず、(当事者は)隠したがるもの。
時の流れのなせる業というひとつの真理が浮かび上がりました。

だとすると…、『震災から5年』の今というのは、
時間の経過=記憶の風化というイメージにとらえがちですが、
時は流れたものの、記憶もまだ新しく、
当時のことを冷静に振り返るには有効なのかもしれません。

今回のみなさんのお話を聞いて、
時間の経過を初めて前向きに考えることができた思いです。



そして、菊池さんの発言の中にこんな意見もありました。

「その情報発信が正しいとか正しくないという議論には違和感がある。

報道機関にはそれぞれ『カラー=主張』があるのが原点だと思うから、
たくさんのカラーの中からどれを選ぶのかは視聴者(読者)だ。」

情報を伝える側と受け取る側、
双方のスタンスについての発言にハッとさせられました。


そして、街の復興なのだから、
「復興の理念をみんなで共有することがなければ、
『真の復興』には辿り着かないのではないか」
との思いを語ってらっしやいました。


池上彰さんからも、
「復旧なのか?復興なのか?」と問題提起をされました。

人の気持ちがどう復興するのかというイメージを共有して
みんなで目指さなければ、
単にインフラの「復旧」で終わってしまいます。

菊池さんは、大槌新聞に必ず
「大槌町は絶対にいい街になります」
との宣言を盛り込むようにしたそうです。

{483AB984-3A02-4699-8185-2455C49F7641}

人と人が結びつく良い街にしよう!
それを自分たちの手でやろう!
大槌新聞で材料を提供し、みんなに考えてもらう。

これが菊池さんの主張であり、復興の理念なのだそうです。


これまでの震災報道は地震発生の初動を含めて
現状を一方的に伝えることが中心になりがちでしたが、
今後は報道を見て読んで自分はどう思うかを考えるというところまで
広がりを想像することが
ほんとうの『人の復興』に繋がるように思えました。


このメディアフォーラムの様子は、
以下の放送や記事でも紹介される予定です。

【テレビ朝日】「はい!テレビ朝日です」3/20・27日、朝5時~

【朝日新聞】3/14朝刊掲載予定