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小林カツ代さんにいただいた「宝物」。

料理研究家の小林カツ代さんが亡くなられました。

クモ膜下出血で倒れられてから9年もの闘病を続けてこられ、
23日、永遠の眠りにつかれたとのことです。

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小林カツ代さんには本当にお世話になりました。
言葉に尽くせぬほどの感謝の気持ちでいっぱいです。

出会ったのは、2000年。


ある番組の取材でたまたまカツ代さんを訪ねたところ、
「あら?あなた、声がソプラノね。合唱団入らない?」

と、初対面の私を誘ってくださいました。


それが、カツ代さんが率いる神楽坂女声合唱団でした。


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動物が大好きなカツ代さんは、
絶滅危惧種からノラ猫までかわいそうな動物を救おうと、
志しを同じくする仲間を募り

チャリティ合唱団を結成したばかりだったのです。


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名簿を見ると、
土井たか子さん、倍賞千恵子さん、竹下景子さん、

コシノジュンコさん、里中満智子さん…、
とそうそうたるメンバーが50人以上!!

思わず
「いいんですか!?やります!」と即答した私に、

「私ね、こういうとき躊躇する人は断るの」。


こんな風にいつもお世辞や社交辞令のない
ご自分に正直な方でした。


そして、このカツ代さんのこの言葉は、
然るべき時に然るべき行動を起こせるかどうかで、
人の人生は大きく変わるのだと、すぐ実感させられました。


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私は思いもかけず仲間入りさせていただいたおかげで、

第一線で活躍する女性方を間近で拝見する機会が与えられたのです。


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この経験が、どんなに宝物になったことか。


皆さんに共通するのは、いつも背筋が伸びていて、
「私なんて」と決して口にしないのです。

「あら、それ面白そうね」とチャレンジ精神が旺盛。

そして、一様にユーモアがおありでした。


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あの土井たか子さんが茶目っ気たっぷりにコントを演じたり、


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社民党の福島瑞穂さんが「カルメン」の牛の前足、

世界的デザイナーのコシノジュンコさんが後ろ足役を演じたり(!)


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でも、一番はなんといっても、

ステージでのカツ代さんの爆笑トークでした!


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「大阪人としては、

10秒に1回はお客さまを笑わせないと気が済まない」

とばかりに、次々と繰り出すギャグは、

まるで女性版・綾小路きみまろさん(笑)


500人ものお客さまを前に、

「後ろの席の人はステージが遠くてごめんなさい。

でも、世の中よく見えない方が幸せということもあるのよ。」


また、収益の寄付先を発表する時も、

「今年はジュゴンの愛護団体に寄付させていただきます。

決して体型が私に似ているからではございません。」


など、まじめな話をしたかと思えば笑いを取る。


TV番組で拝見する以上にトークのキレが良く、

笑いと涙のエッセンスを自在に操っていらっしゃいました。


メンバーはみんな忙しいのに、

この「大人の部活動」が楽しくて楽しくて、

毎月3回の練習に駆けつけては、

普段の仕事のことも忘れ、童心に返って歌ったり、笑ったり。


失敗してヤケ酒飲んでみんなで悔し泣きしたこともありました。


神楽坂女声合唱団は、

フリーアナウンサーという孤独な商売の私に、

初めてできた『仲間』でした。


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カツ代さんはそんあ私たちをまとめる「おっかさん」役。


集団行動を乱すと厳しく叱ることもあったけど、
懐が深くかった。


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そして、私にとって忘れられないカツ代さんの思い出は、
私の母が事故で突然亡くなった時、
真っ先に(速達で!)お手紙をくださったことです。


「亡くなった人は、自分のところに還ってくるわよ。
私の母はひと月くらいしたら還ってきてくれたわ。


だから、あなたのお母さんの魂も

あなたの中に還ってくるから大丈夫。」


この言葉がどれだけ私を支えてくれたことか。


また、手紙の結びにはこのような心遣いが。


「大変でしょうから、この手紙に返事はいりません。」


カツ代さんが私のことを大きく見守っていてくださるのを感じ、
心が休まりました。



カツ代さんのお話の中には、
普段から『命』という言葉がよく登場します。

戦時中に生まれ、生きるのに苦労した子供時代を過ごされ、

『命』の大切さをいつも考えていたそうです。



今、思い出されるカツ代さんの3つの言葉。


「食べるということは、『命』をいただいているということですから」


「女が元気な国は滅びない」


「どんなに辛い時も食べれば元気が出てくる」

並べてみるとお分かりのように、この3つは循環しているのです。


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強い信念を持ち続け、

いつもたっぷりの愛情に溢れていた女性でした。


「私が死んじゃっても美味しい私のレシピは

永遠にそこの家の家庭料理として残るのが嬉しいわ。」


カツ代さんは、きっとこれからも

私たちを空から見守っていてくださることでしょう。


永遠の贈り物をありがとうございました。


どうぞ安らかに。


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