スター混声合唱団デビュー・コンサート第7弾<涙と笑いのトーク3編> | 原元美紀 オフィシャルブログ 「原元美紀のミキペディア」 Powered by Ameba

スター混声合唱団デビュー・コンサート第7弾<涙と笑いのトーク3編>

おしまいは、いつも凛としてしなやかにたたずむ倍賞千恵子さん

静かな微笑みは、まるで観音菩薩のようです。

その微笑みを得られるまでには、
どれほどの苦しみや悲しみを乗り越えてこられたのでしょうか。
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邦子 「実は倍賞さんは私の乳がんの先輩なんです。」
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倍賞さんが乳がんを患ったのは7年も前のことだそうです。


そのすぐ後には映画「ハウルの動く城」で、
声優としてヒロイン役を演じたり、主題歌を歌ったり、
大活躍をされていました。


どんな時もいつも変わらなかった倍賞さんに、
周りもまったく気がつかなかったのです。
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倍賞 「手術室に運ばれていくときに、
——お医者様が『僕あなたのファンなんです』っておっしゃるから、
——『あら、じゃあなにか歌いましょうか』って、

——
私、『下町の太陽』を歌ったの。


邦子 「そんなストレッチャー(ベッド)の上で

    歌う人なんていませんよ。
— —しかも、途中で怖くなって泣き出したそうじゃないですか。」


倍賞 「あはは。そうなの。初めて怖くなって、震えてきて・・・」
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そのときが一番怖かったという倍賞さん。

思わず看護師さんの手をちぎれるほどつかんで、
ポロポロと涙をこぼしながら
麻酔が効いてくるまで歌い続けたそうです。
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邦子 「私は倍賞さんに一番感謝しているのは、

  主人のことなんです。

—– 実は私ががんだと判ってから、
—– 主人の方がとても落ち込んでしまって、
—– 夜中に起きて一人でため息をついているほどだったんです。

— –そんな時、小六禮次郎さんが『僕も同じだったよ』と

   言ってくださって。
— –同じ立場の人が励ましてくださって

本当に嬉しかったです。」


倍賞 「私も、主人の小六さんがね、

   完全看護の病院なんですけれど、
—– 小さな簡易ベッドで一緒に泊まってくれて、

    とてもありがたかった。感謝しています。」

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ここで、急遽ご主人の小六禮次郎さんの登場です。

「せっかくですから」と、

お二人に1曲聞かせていただくことになりました。


倍賞千恵子さんの名曲として名高い「忘れな草をあなたに」。


小六禮次郎さんの心に沁み渡るようなピアノを伴奏に、
倍賞さんが切々と歌い上げます。



「♪ 別れても 別れても 心の奥に

いつまでも いつまでも おぼえておいて欲しいから

幸せ祈る言葉にかえて 忘れな草をあなたに あなたに」


会場からはすすり泣く声が漏れていました。

今日のお客さまの一人一人の胸に、
倍賞さんの歌声がどんな風に届いたことでしょうか。

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ところで、印象的だったのは、コンサート終了後の記者会見で、
ある記者がこんな質問をしたときのことです。


「肺がんでお亡くなりになった渥美清さんが、
もし今倍賞さんが乳がんを患ったということを知ったら

なんと言ったでしょう?」


すると倍賞さんはふっと空を見上げ、

「そうねぇ・・・。お兄ちゃん、なんて言う?」

と語りかけたのです。


そして、またいつもの微笑みに戻り、

「あの人は無口な人だから、何も言わず・・・、
そう、きっと何も言わずに見つめているだけだと思いますよ。」と。
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国民的大女優として、また一人の女性として、
倍賞千恵子さんが歩んできた時間、
育んできた周りの人たちとの関係、
心の芯にあるもの、
それらの倍賞さんが大切にしているものへの想いが
ふわりとあふれて来るのが感じられて、
辺りに優しい空気が流れた一瞬でした。