皇室の祈り、東北の被災地へ。 | 原元美紀 オフィシャルブログ 「原元美紀のミキペディア」 Powered by Ameba

皇室の祈り、東北の被災地へ。

4月27日、

天皇皇后両陛下が初めて東北の被災地をご訪問されました。


両陛下がご訪問の地として選ばれたのは、

宮城県南三陸町と仙台市宮城野区の避難所、

また、松島の航空自衛隊基地です。


私も「モーニングバード!」の取材で、

南三陸町に現地入りしました。



南三陸町は、津波の被害が甚大で、

町民1万7600人のうち、

死者・行方不明者が1152人にも及んでいます。

(4月26日時点)



両陛下は現地の人々に負担をかけないよう

ヘリコプターで現地に入られました。



阪神・淡路大震災以来、

毎年1月17日には、

兵庫県から寄贈された品をご自身の側に置いて、

その日は一日

被災者の方々に心を寄せていらっしゃると伺ったことがあります。


そのような両陛下だけに、

今回の東日本大震災では、

空からご覧になる津波被害の光景に、

どれほど心を痛められたかは、想像に難くありません。



私は陸路でしたが、

町にはまだまだ津波の爪痕が残り、

痛ましい光景が続きました。


現地の取材クルーの方たちが、


「ここには大きなスーパーがあったんですけどね。」


などと、以前の街並みを教えてくれるのですが、

私の目の前には瓦礫の山が続くだけで、

全く想像ができません。


わずかに残る家の土台だけが、

つい最近までそこに家が存在した証なのです。


photo:07



そして、


「うちも流されましたね。避難所で一週間暮らしました。」


とも。

呆然とするしかなく、胸が痛いです。




車が海の方へ近づくと、

増えてくるのはこんな光景です。


photo:05


赤い色は屋根ではありません。

船の底です。


photo:04


ちなみに、ここはまだ海でも川でもありません。

鉄道が通る陸地です。


津波の勢いの激しさを物語っています。




しばらくして、ようやく海が見えてきました。

伊里前湾です。


橋が途中で引きちぎられたようです。

海岸線は輪郭が崩れています。


photo:08



さて、仙台駅から車で約2時間半ほどのところに、

今回両陛下がご訪問される避難所がありました。


南三陸町の歌津中学校・体育館です。


ここには160人の町民の方たちが暮らしています。

今も水道は復旧しておらず、

不便な状態が一ヶ月以上も続いていています。



両陛下が、この避難所の扉を開けてお入りになられたとき、

震災から初めて、物音一つないほど静まり返ったそうです。


小さな子供までが、

「何か特別な空気を感じた」と言います。



両陛下は、お一人ずつの前で通路に膝を着き

お声を掛けられました。


「お体は大丈夫ですか。」


と避難生活が長引く住民の健康を案じられていました。



そして、ある女性が、

津波に飲み込まれ、いまだ見つからない3歳の孫娘の写真を

両陛下に見せ、


「毎日捜しています。」


と伝えると、


皇后陛下が写真を手に取られ、


「早く見つかるといいですね。どうぞ体を壊さないように。」


と励まされました。




両陛下はこうして、

避難所の160人ほとんどにお声を掛けられました。


みなさんは

「震災後、初めて心が満ち足りた気がします。」


「私なんかの話を丁寧に聞いてくださって、

ちゃんと受け止めていただいた気がしました。」


と語っていらっしゃいました。




そして、両陛下はお帰りになる前に、

ご希望で、着いたばかりにもご覧になった、

学校の前に広がる伊里前湾に向かって、黙礼をされました。


photo:09



「皇室は祈りでありたい」


と以前言葉にされた皇后陛下、

海に向かってどんな祈りを捧げられたのでしょうか。




ところで、

被災をしたのは、避難所の方だけではありません。


近所の住民のみなさんも、

一目両陛下を見たいと、避難所に集まりました。


両陛下がお乗りになるヘリコプターは、

歌津中学校に隣接する小学校の校庭をヘリポートにしていました。


ヘリに乗り込んでお帰りになるのをお見送りしようと、

100人以上の住民が高台に溢れかえりました。


すると、


「みなさんが崖から落ちてしまうことを陛下が心配されています

一歩下がってお待ちください。

それまでは、陛下は(校舎から)出ていらっしゃいません。」


と注意のアナウンスが入りました。


私もその列にいたのですが、

「天皇陛下が心配されている!」とみな急いで後ろに下がりました。



少し待つと、

私達の前を両陛下がお乗りになったマイクロバスが通りました。


高台にいる私達へ向けて、

皇后陛下が大きく大きく手を振っていらっしゃいます。


「いま、私達に手を振ってくれたよね」


とみなさん感激で胸がいっぱいの様子。


両陛下がお心を寄せてくださっているのが感じられた瞬間でした。


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そして、ヘリコプターがいよいよ飛び立とうとするとき、

プロペラの旋風で、

満開の桜の花びらがぶわっと空に舞い上がりました。


桜吹雪の中で、

大きく手を振って両陛下をいつまでもお見送りするみなさんの

満ち足りた表情、

それはそれは本当に美しい光景でした。



私はきっと一生忘れないと思います。