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「ヒア アフター」

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クリント・イーストウッド監督の最新作「ヒア アフター」



アカデミー賞には、視覚効果賞にしかノミネートされなかったけれど、
とても静かに心の奥深くまで届いた作品でした。


「人は死んだらどこへ向かうのか」



生きている者には永遠に判らない世界である。



けれども、もし死後の世界を垣間見ることが出来る人がいたら、

それは幸福なのか、

不幸せなのか。




この映画には、死後の世界にとらわれた3人の人物が登場します。



死後の世界を覗き、

死者と会話することの出来る「才能」を呪う霊能力者。


津波に巻き込まれ臨死体験をし、以来幻覚に悩まされる女性キャスター。


双子の兄を失い、彼が今どこで何をしているのか知りたいという願いに

心が占められてしまった少年。




「ヒア アフター」というタイトルは、

日本語で言うところの「彼岸」とか、「あの世」。



でも、この映画では「あの世」ではなく、

「この世」に生きる人たちの苦悩が描かれていました。



この3人が「死」とどう向き合って乗り越えていくのか、

「死」を知ってしまった人たちの心がどうやって解放されていくのか、

イーストウッド監督が静かに道を示してくれた気がします。




私は、母を亡くしたとき、

「死後の世界」というものは、

遺された人のためにあるものだと強く感じました。



向こうの世界で辛い思いをしていないといいな。

現世の苦痛から解き放たれて幸せに暮らしてくれているといいな。



そう思うことが、遺された自分の苦しさを少しだけ楽にしてくれるからです。




だから、もし死後の世界が覗けるとしても、

自分の理想と違っていたらと想像するだけで

胸がつぶれそうなほどの恐怖を感じます。




ただ、一つこう思うのです。



その人が生きていたことを覚えている人がこの世に生きている限り、
本当に死んではいないのだろう、と。



そうしていつまでも思い出していたら、

私の『心の中』という「この世」に生き続けてくれると思う、

いや、そう感じるのです。



この映画は、

「自分が死んだら」どこに行くのだろうと考えている人ではなく、

大事な人が死んだらどう受け止めれば良いのかを悩んでいる人、

すでに大事な人を亡くした経験のある人におすすめしたいです。





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