「小百合、もしかして、女将さん、あたし達に、チャンスを与えてくれたのかしら」
「うん、そうかもしれないね・・ここで本望を遂げられる」
「事故が起きるときは、たいてい秘伝の宝剣が、巫女に囁くそうですよ」
「囁く?」
「はい、(お願いです。早くわたしをお腹に入れて)みたいなことを踊り手に語りかけるそうですよ」
「それは、たまらないわね。そんなこと刀が囁いたら、誰だって、やってしまうわよ」
「そうですよね。でも、誰にでも囁くわけではなくて、宝剣のお気に入りの巫女にだけに囁くらしいんです」
「そうなんですね。でも、お稽古に使う宝剣ってたくさんありますよね」
「そうなんです。それぞれの宝剣が、お気に入りの巫女を見つけた時に語りかけるそうです」
「あたしのこと宝剣が気に入ってくれるかしら?」