褒めまくる映画伝道師のブログ

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気に入った映画を紹介して褒めまくることがコンセプトです。
素晴らしい映画を将来のために伝えたい想いで紹介します。

      映画 天使のくれた時間

 もうすぐクリスマス。皆さん、クリスマスの思い出って何かありますか?さて、ハリウッドにはクリスマスを背景にした名作はたくさんある。日本でクリスマスの日は恋人と過ごすとしたものだが、アメリカでは家族でクリスマスを過ごすことが幸せの証。家族の絆をクリスマスを通して描いた結果、名作が多く生まれた。

 アメリカ人のクリスマスに対する価値観から多くの事を学べる映画が今回紹介する天使のくれた時間。俺なんかは今年も1人寂しくクリスマスを過ごすのだが、そんな俺と同じようなクリスマスの大切な時間を持て余している人にはお勧めしたくなる映画だ。

 

 一目順風満帆の人生を送っているように見える男が、本当の幸せに気づいていないことを知らせてくれるストーリーの紹介を。

 空港において、ジャック(ニコラス・ケイジ)とその恋人のケイト(ティア・レオーニ)が飛行場にいる。銀行の仕事の研修でロンドンへ向かおうとするジャックにケイトは言う。『2人の幸せのために飛行機にのらないで』。それに対してジャックが応える『仕事で成功することによって2人は幸せになれるのさ』。

 そして13年後、ジャックは会社の社長になりウォール街で成功を収める。優雅な独身生活を送り、女遊びもする。そして、クリスマス・イブの夜も幹部を集めて、さあ2日後も大仕事が待ってるぞ!と部下を鼓舞する。

 そして、ジャックはその夜の帰り道、コンビニで銃を持って荒れ狂った黒人の青年(ドン・チードル)と出会う。ジャックは黒人の青年を説得して2人はしばらく一緒に歩くのだが、ジャックは黒人の青年から奇妙なことを聞かされる。

 そして、翌日ジャックは朝起きると何と横で昔の恋人のケイトが寝ており、娘のアーニーと男の子の赤ん坊の父親になっていた。ニューヨークシティのマンションで暮らしていたはずなのに郊外で暮らしており、慌てて会社に向かうが誰にも相手にされず。すなわち、ウォール街の覇者として生きていこうとしていたのに、いつの間にやら普通の家庭を持つお父さんになってしまっていたのだ。しかし、そんな生活にジャック自身は嫌気がしており早く元の生活に戻りたいと思っていたのだが次第に、ケイトや子供たちとの生活を楽しむようになっていくのだが・・・ビックリマーク

 

 時々見かけるもう一つの人生を歩むようになるパターンの内容。ウォール街で社長として暮らすジャックだが決して悪いことをしているのではなく仕事で努力して成功者として登りつめた。あの時、恋人のケイトを振り切って研修へ向かったことが吉と出たかのように見せる。

 しかし、本作ではケイトの言う通り研修へ向かわなかった時のその後を描いている。こちらがメインで映画は進むのだが、この時ジャックは家族の大切さというのを思い知ることになる。強欲資本主義にまみれて、猛烈に仕事していては気づけない幸せがあることを教えてくれる。

 もっと言えば金持ちになることが本当の幸せだと限らないことを観ている我々に見せつけるのだ。そして、クリスマスを家族で過ごすことの幸せを教えてくれる。

 人の幸せの価値観なんて色々。金持ちになることを目指して仕事にまい進することも良いだろう。しかし、この世の中、誰もが金持ちになることはない。特にアメリカなんて国は強欲資本主義に陥ってしまい、他人を不幸にしてまでも自分は金持ちになろうとする輩が多く出てくるのが問題だ。まあ、俺なんかは金持ちになったとしても他人を貶めてまで金持ちになろうと思わない。本作はそのような拝金主義に陥ってしまったアメリカも批判しているように思える。

 本作は心が温まるストーリー。人生の決断に悩んでいる人、最近家族と向き合ってないように思う人、人生カネだと思ている人も、そうでないと思っている人も今回は天使のくれた時間をお勧めに挙げておこうビックリマーク

 ちなみに本作はあのクリスマス映画の名作素晴らしき哉、人生!に似ています。

 

 監督はブレット・ラトナー。ジャッキー・チェン主演のラッシュアワー、ハンニバル・レクターシリーズのレッド・ドラゴンなどがお勧めビックリマーク

 

 

 

       映画 アンフィニッシュ・ライフ

 先日亡くなったロバート・レッドフォードだが、彼ほどの有名人が出演しているのに日本で未公開作品になっているのが今回紹介する映画アンフィニッシュ・ライフ。彼以外の出演陣も豪華だし、名監督が撮っているし、そもそも映画の内容もバッチリ。何でこの映画が未公開だったのか不思議だし、このような映画を未公開にしてしまう日本の映画関係者の怠慢及び見る目の無さはどういうことだ。

 ラッセ・ハルストレム監督らしい癒しが本作にはあるし、そして何よりも外面も内面も傷ついた大人達の人生の再生が描かれている。人生のどん底でもがいている人には是非とも見て欲しい作品だ。

 

 早速だがストーリーの紹介を。

 ジーン(ジェニファー・ロペス)は恋人のゲイリーの日常茶飯事に続く暴力に耐えられず、一人娘のグリフ(ベッカ・ガードナー)を連れて、ワイオミング州に住む義父であるアイナー(ロバート・レッドフォード)を訪ねる。

 アイナーは最愛の一人息子が亡くなったのは元嫁のジーンのせいだと思っており、彼はジーンを許せないでいたのだが、一か月間だけ家に置いておくことにする。

 そして、アイナーと一緒に暮らしているのが熊に襲われて大怪我を負ってしまったミッチ(モーガン・フリーマン)。何かと動くのが不自由なミッチの世話をアイナーがしていたのだった。

 アイナーとジーンの仲は相変わらず悪かったのだが、実は自分に孫がいたことを知らなかったアイナーはグリフに自分の息子の面影を感じたのか、2人の仲は徐々にせばまる。しかし、アイナーとジーンの仲は決定的に悪くなり、半ば強制的にアイナーはジーンとグリフを追い出してしまい・・・ビックリマーク

 

 アイナーは息子の墓標を広大な敷地に建てており、遠い昔に亡くなったのに彼の死を忘れられないでおり、そしてミッチが熊に襲われるのを助けられなかったのも自分のせいであることから、ずっとウジウジしている。半ば人生に絶望しているふしがある。

 そこへ息子が死んだ原因だと考えている息子の嫁だったジーンが暴力夫に殴られて顔にあざを作ってやってきたのだ。ジーンは娘のグリフに対してお爺ちゃんは居ないと嘘をついていたのだが、仕方なく義父であり、グリフの祖父の前にやってきた。ジェニファー・ロレンス演じるジーンは美人だからアイナーの元を離れてからもモテモテでゲイリーの以前にも恋人はできるのだが、やはり元旦那のアイナーの息子の死の原因を作ってしまったことに対する後ろめたさが常に彼女を支配してしまう。しかも、ジーンを追いかけるように暴力を振るうゲイリーがワイオミングまで追いかけてくるという展開。

 果たしてアイナーとジーンの仲はどうなるのか、傷を負った2人はこれからの人生に希望を見出すことが出来るのか?彼らの気持ちを再生へと変えるのは、一体何なのか⁈

 本作を観れば、大人こそ悲しみ、悩んでいることがわかる。本作は最近何かと日本列島を騒がしている熊の出没の問題に触れてしまっているので積極的に万人にお勧めできない事が辛いのだが、大人たちが苦しむストーリーを子供達にも見せてあげて欲しいというのが俺の気持ち。ワイオミングの山は綺麗だし、再生、赦し、希望を描き、どんなに辛いことがあっても人生が続くことを教えてくれるアンフィニッシュ・ライフを今回はお勧めに挙げておこうビックリマーク

 

 監督はスウェーデン出身のラッセ・ハルストレム。個人的に非常にお気に入りの監督。スウェーデン時代ならマイ・ライフ・アズ・ア・ドッグやかまし村の子供たちがお勧め。

 ハリウッドに来てからは、ジョニー・デップ、レオナルド・デカプリオといった人気者が共演しているギルバート・グレイプ、若者の成長を描いたサイダーハウス・ルール、バレンタインの日が近くなると観たくなるショコラ、チャレンジ精神に胸が打たれる砂漠でサーモンフィッシング等がお勧めビックリマーク

 

 

       映画 最高の人生の見つけ方

 映画界に多くの名作を生みだした名匠ロブ・ライナー監督が亡くなった。あれほどの監督があんな死に方をしたのが非常に残念でならない。

 色々な分野の名作を手掛けた監督だが、今回は自分の人生について悩んでいる人に対して、良い切っ掛けを与えてくれそうな作品として最高の人生の見つけ方を紹介しよう。

 正直なところ、タイトル名が本作の内容を表しているとは思わない。しかし、世の中の多くの人は金銭、思想、常識、宗教等に縛られて、自分の思う通りの生き方を出来ていないと思っている人が殆どではないか?また、自分のやりたいことの少しも出来ていない人がほとんどではないだろうか?だが、多くの人は実は大切なことを見失っている。本作を観ればその大切なことが、各々が気づくだろう。

 

 余命宣告を喰らった男たちは残りの人生をどのように過ごすのか、ストーリーの紹介を。

 自動車整備工として真面目に働き、家族を大切にしながら生きてきたカーター(モーガン・フリーマン)。そして、数々の会社を経営し大富豪であるエドワード(ジャック・ニコルソン)。お互いに殆ど時を同じくして余命6カ月の癌の宣告を受けてしまう。2人はエドワードが経営する病院に、たまたま同室で入院することになる。

 あまりにも性格、生き方が正反対な2人は当初はソリが合わなかったのだが、カーターが軽い気持ちで死ぬ前にしたいことのリスト作りをしていたのだが、それをエドワードに読まれてから急激に2人の仲は接近。

 お互いに死ぬ前のリストを作り、それを実行するために2人は病院を抜け出し、リストに書いた項目を次々に実行していく・・・ビックリマーク

 

 俺なんかは余命宣告を受けたら気が滅入って動けなくなりそうだが、この名優2人が演じる男達は残りの人生を楽しもうとする。少々堅物だが博識なカーターだが、エドワードの財力のお陰で世界中を旅行してしまい、そのスケールは凄い。ちなみにそのリストの中には『世界一の美女とキスをする』『スカイダイビングをする』『死ぬほど笑う』など入っている。そして、彼らはエドワードの自家用機で世界中を回るのだ。

 やっぱり、この世の中はカネと時間があれば最高だよな~なんて思いながら観ていたのだが、最後には古き良きアメリカ人が、カネと時間以上に大切にしていた物があったことに気付かされる。

 暗くなりがちなストーリーを心温まるような展開で包み込むし、カーターの博識さによって観ている我々も勉強させられる。

 そして作中で出てくる問いかけが出てくる。例えば『人生で歓びを得たか』『自分の人生は他人を喜ばしたか』。このような深い問いかけ出てくるあたりは、俺なんかは生き方について考えさせられた。明日からは自分だけが楽しむんじゃなくて、周囲の人も楽しませよう。

 生き方に悩んでいる人だけでなく、気持ちよくなれる映画として今回は最高の人生の見つけ方をお勧めに挙げようビックリマーク

 

 監督は前述したようにロブ・ライナー。青春映画の金字塔として輝くスタンド・バイ・ミーが特に有名でお勧め。他には大人の恋愛を描いた恋人たちの予感、ホラーサスペンスの傑作ミザリー、法廷サスペンスのア・フュー・グッドメン等がお勧めビックリマーク

 

 

 

 

 

 

      映画 ガタカ

 SF映画において、現代より発達した未来設定というのは非常に重要な要素。これを間違えると素っ頓狂な世界観を見せられて興味を無くしたり、現代よりも科学が進んでないような未来社会を見せられて白けた気分になってしまう。

 ちなみに今回紹介する映画ガタカだが、産まれてくる子供に対して何事にも優秀な人間としてやっていけるように遺伝子操作ができる世界。こうなったら何でも遺伝子操作をしてしまえば良いだろうとなりそうなのだが、そこは宗教の価値を重視するアメリカのお国柄なのか、遺伝子操作を行わずに自然のままで産まれてくる人間もいる。遺伝子操作によって、格差社会が生まれてくるのが非常に面白い映画だ。

 

 遺伝子操作を受けていない男を主人公にしたストーリーを紹介しよう。

 近未来において、遺伝子操作によって生まれた適格者、そして自然に任せたまま産まれた不適格者の二種類の人類がいる。

 ヴィンセント(イーサン・ホーク)は、両親が彼には自然のままに生きて欲しいと望み、遺伝子操作をしないまま産まれてきたのだが、極度の近視になり、しかも寿命も30年を宣告されてしまう不適格者として産まれる。そして両親は今度は不適格者として生きることの悩みに直面したため、今度は遺伝子操作を行い適格者として弟のアントン(ローレン・ディーン)を産む。

 適格者と不適格者では何をするにも差は歴然としており、兄のヴィンセントは弟のアントレに何をしても遅れをとるのだった。

 しかし、ヴィンセントには宇宙飛行士になる夢が芽生えてしまう。しかし、宇宙飛行士になれるのは適格者のみ。ヴィンセントは家を出て旅を始めるのだが、そこでも感じるのが不適格者としての負い目。宇宙局ガタカにおいて清掃作業をしながらロケットが宇宙へ向かって飛んでいくことに羨ましい目で見てた。

 そんなヴィンセントの元にDNAのブロカーがやってくる。ブロカーを通して知り合ったのが水泳の銀メダリストで適格者であるジェーローム・モロー(ジュード・ロウ)。彼は事故に遭い両脚を使えなくなり水泳選手を今では引退していた。

 ヴィンセントはジェロームの生活の面倒を見ることを条件に、彼の血液や尿などDNAのサポートを受けることになる。その結果、あらゆる検査をジェロームから譲り受けたDNAのサンプルのお陰でクリアし、ヴィンセントは見事にガタカに入り、必死の努力で宇宙飛行士となる。そしてタイタンの探査船に乗り込めるようになる。

 ようやく夢がかなうかという時にガタカ内でヴィンセントの上司が殺される事件が起きる。しかも、殺人事件の現場で不適格者であるヴィンセントのまつ毛が発見されてしまう。自分に疑いを掛けられたヴィンセントはあの手この手を使い、さらには適格者である恋人のアイリーン(ユマ・サーマン)の助けを借りて、窮地を脱しようとするのだが・・・ビックリマーク

 

 ヴィンセントの不適格者として産まれたコンプレックスは並大抵のものではない。しかし、彼はそのコンプレックスを、根性と努力で切り抜け、不可能であるはずの宇宙飛行士に登りつめるのだ。この世の中、自分には才能が無いんだと痛感している人がいる。そんな人には是非とも本作を観て、ヴィンセントの挑戦する姿勢を見習ってほしい。

 彼の根性や努力が人生に絶望しているジェロームにまで影響を与えているストーリーが素晴らしい。俺もジェロームの立場だったら自殺を考えるかもしれないが、彼は自らのDNAのサンプルをヴィンセントに提供する。そのことはジェロームにとってはヴィンセントは希望の光だったのだ。

 ヴィンセントが不適格者だとバレるかもしれないと思わせるサスペンスも盛り上げる。よりによってヴィンセントを追い詰めようとするのが・・・だったとは驚きであり、運命であり、適格者と不適格者の対決。これには胸が熱くなった。

 夢を持ち、それに向かって努力する者は美しいし、人々の胸を打つ。この映画のラストシーン近くではそのことを訴える。

 努力もしてないのに自分には無理だと諦めている人、夢に向かっている最中の人、的外れなSF映画に懲りている人、綺麗なユマ・サーマンを見たい人等に今回は映画ガタカをお勧めに挙げようビックリマーク

 

 監督はアンドリュー・ニコル。SF映画において素晴らしい能力を見せる。アル・パチーノ主演のシモーヌ、ニコラス・ケイジ主演のロード・オブ・ウォー、まさに時は金なりを地でいくようなTIME/タイム、これまた特異な設定を活かしたANONアノン等がお勧め。もっとたくさん映画を撮って欲しい監督ですビックリマーク

 

 

 

 

 

 

 

        映画 切腹

 もう先日のことだが、名優仲代達矢がお亡くなりになられた。黒澤明監督作品にも多く出ていたのだが、個人的に彼の凄みを感じさせられたのが今回紹介する映画切腹だ。

 武士社会において切腹とは名誉ある死を与えられることを意味するものでもあるのだが、『わたし、これから切腹させて頂きます』と言うことに誠の武士としての意味の無いことを本作で問いかける。

 

 それでは時代劇ではあるが、ディスカッションドラマの趣きも楽しめるストーリーの紹介を。

 戦国時代も終わり、世の中が泰平になった頃の話。絶滅させられた安芸福島家の元家臣である津雲半四郎(仲代達矢)と名乗る浪人が井伊家の江戸屋敷にやってくる。用件は『もうこのような戦も無い時代では士官先もこの先も望めないから、生き恥をさらすより切腹したい。よって屋敷の玄関先を切腹場所として借りたい』ということ。

 当時浪人たちの間では、切腹したいから武家の玄関先を借りたいという要望が多数あり、玄関先を血で汚したくない武家達は、金品の類を渡してさっさとお引き取り願うのが慣例となっていたのだ。

 津雲は井伊家家老の斎藤勘解由(三国連太郎)から、先日も同じ安芸の浪人である千々岩求女(ちぢいわもとめ)(石濱朗)という若い浪人が訪ねてきて、悪しき慣習を断つために本当に切腹させたことを聞かされる。

 実は千々岩求女は津雲の娘婿であったのだ・・・ビックリマーク

 

 千々岩求女だが、実は切腹が決まった段階で一両日中の猶予をと願い出たりするのだが、何とも情けない奴だと思った。そんな願いも聞き入られずにサッサと切腹させられてしまうのだが、実は千々岩求女は武士の魂である刀を売り払って、竹でできた刀を差していたのだ。しかも竹でできた刀で切腹をさせられるのだが、そんなものでは腹を一気に十文字に切り裂くことができずに、腹を付きまくるのだがそれだけでは死ねずに、結局は舌を噛み切って死ぬことになる。

 しかし津雲と斎藤との会話から千々岩求女の窮した状態を観ている我々は知らされる。刀を売り、更には例の浪人達と同様に金を要する切迫した事情があったのだ。千々岩求女の選択に涙が出そうになるが、そんな千々岩求女の決心も知らずに、ついに身寄りが1人もいなくなった津雲だが、もちろん津軽は例の浪人達のように金が欲しいわけではない。津軽はある覚悟を持って乗り込んできたのだ。

 津軽と斎藤の間で繰り広げられる会話から千々岩求女の本心は徐々にわかってくるが、津軽が井伊家屋敷に切腹をしたいと言ってやってくる目的も明らかになる。その二人の会話から武士階級の偽善と武士の誇りによって失われる物などがわかってくる。本作はまさに武士社会の徹底批判なのである。最後の最後に上っ面だけの武士にすがる惨めさを思い知らされる。

 本作は海外においても評価が高い。海外の人が好きな侍精神に溢れた作品でもないので、その理由が個人的にはわからいのだが、非常に見ごたえ充分であり、殺陣のシーンよりも仲代達矢三国連太郎の間で繰り広げられる会話劇に興味が惹かれた。会話を重視したディスカッション映画はたくさんあるが、その中でも本作は非常に良く出来た作品。

 そして、仲代達也の名演技にも驚かされる。役柄では孫も居る設定だが、本作が公開された時は、彼はまだ29歳。この若さを感じさせない演技には本当に驚いた。

 仲代達矢に興味が湧いた人、人間の残酷さを改めて見つめ直したい人、親子愛を感じたい人、切腹の意味について考え直したい人、日本の名作を感じたい人等に今回は切腹をお勧めに挙げようビックリマーク

 

 監督は小林正樹。この監督のことを全く知りませんが他にお勧めがあれば逆に教えて欲しいですビックリマーク

 

 

 

 

 

 

 

 

     映画 リラの門

 1930年代を席巻したフランス映画。その中でも人間の喜怒哀楽を表現したのがルネ・クレール監督。フランス映画界に多大な貢献をした監督であり、個人的にも好きな映画が多い。1950年代に入っての作品も何本か観ているのだが、正直監督としての力量が落ちているのか、どうも俺のイメージと異なるような作品を撮るようになってしまった。

 しかし、やっぱりルネ・クレール監督と言えばコレだよねと思わさせてくれた作品が今回紹介する映画リラの門。この監督らしい人情を感じさせてくれる内容になっているのが良い。

 

 早速だがストーリーの紹介を。

 怠け者だが憎めないキャラをしているジュジュ(ピエール・ブラッスール)と近くの酒場で弾語りををしている通称芸術家(ジョルジュ・ブラッサッンス)は、なぜか馬が合い、ジュジュは自分の家に居るよりも芸術家の家に居る時の方が多い。

 ある日のこと、警察が騒々しい中で、強盗殺人者バルビエ(アンリ・ヴィダル)がヘロヘロになりながら芸術家の家に逃げ込んできた。拳銃で脅されたために、最初は2人とも嫌々で匿ってやっていたのだが、次第に3人に友情が芽生える。

 ジュジュと芸術家はバルビエが元気になったら上手く高飛びさせようとしていた。しかし、ジュジュが行きつけの酒場の娘マリア(ダニー・カレル)にバルビエを匿っていることを、ばらしてから雲行きが怪しくなり・・・ビックリマーク

 

 俺なんかはサッサとこんな強盗殺人犯を通報しろよ、と思っていたのだが、あり得ないことにジュジュとバルビエの間に友情が芽生える。この辺りはお人よしのジュジュの性格が活かされていて、人情を感じる。このジュジュの性格だが誰かに似ているな~と思っていたのだが、よ~く考えたら俺だった。

 ジュジュはマリアのことを好きでいたと思うのだが、バルビエのことをマリアに話してから、なぜか強盗殺人犯のバルビエとマリアが恋に落ちる。この展開は後で思えば素っ頓狂なのだが、さらにマリアは店の金を持ち逃げしてバルビエと一緒に遠くへ逃げようとするのだ。この不思議な女心が本作を更に盛り上げるのだが、マリアのために彼女とバルビエが一緒に逃げ出すのをジュジュが手助けしようとするのは本当に泣ける。そして最後にジュジュが漢を見せつける展開もイケてる。

 本作で印象に残るシーンが色々あるが、酒場の主人が新聞でバビエルの事件について読んでいるのだが、外では子供たちがバビエルごっこをして遊んでいるのをシンクロさせている場面。ここは監督の熟練のテクニックを感じさせる。

 他にもチョイチョイ笑わせるシーンも入れたりで楽しんで見れる。フランス映画って暗いんだよな~と思っている人には今回はリラの門をお勧めに挙げておこうビックリマーク

 

 監督はルネ・クレール。サイレントとトーキーの境目のような作品で巴里の屋根の下、あの偉大なる映像作家であるチャールズ・チャップリンも影響されている自由を我らに、絶対に観て欲しいのが巴里祭、そして沈黙は金、ハリウッドで撮ったアガサ・クリスティー原作のミステリーそして誰もいなくなった等お勧め多数ですビックリマーク

 

 

       

       映画 山の音

 先日、家にあった本を取り出して読んだのがノーベル文学賞受賞者である川端康成山の音。特に川端康成の小説が好きでもない俺がこの本を取った理由が、好きになってしまった成瀬巳喜男監督が山の音を原作とする映画を撮っているのを観たかったから。

 原作を読んだ感想としては流石は川端康成と感心させられた。人間の内面や主人公の老いの悲しみ、そして情景が頭の中に浮かんでくる。

 さて、成瀬巳喜男監督がこの原作をいかに映画化をするのか増々楽しみになったのだが、その結果は如何に。

 

 老境に達している主人公と息子の嫁との交流を描いたストーリーの紹介を。

 60歳を超えている尾形信吾(山村聰)は妻の保子(長岡輝子)と息子の修一(上原兼)、その嫁の菊子(原節子)と鎌倉で暮らしている。

 信吾と修一は同じ会社に勤めているのだが、いつも帰りは信吾が1人先に帰ってきて、修一は酔っ払って遅くに帰ってくる始末。実は修一には浮気相手の女がおり、日曜日も浮気相手の女の所へ行っている。

 信吾は若い時は保子のお姉さんに惚れており、菊子に対してその面影を感じているせいか、非常に菊子に優しく、また菊子の方でも寂しさを信吾との交流で紛らわせている。

 ある日のこと、娘である房子(中北千枝子)が2人の娘、信吾から見れば孫の2人を連れて帰ってくる。そのことによって、余計にぎくしゃくしだす尾形家。しかも、菊子が修一に対する当てつけで自ら流産を選んだり、修一の浮気相手が妊娠してしまうなど信吾を悩ます出来事が起きるのだが…ビックリマーク

 

 予め原作を読んでいたせいか、映画の方もストーリーがスッと頭の中に入ってきた。しかも殆どが原作に忠実。ラストシーンは大幅に違うが。

 信吾というのが結構な冗談好きで、けっこう俺的には笑わせるようなことを言う。それもけっこうKYな雰囲気の中で言うので俺は笑えた。

 しかし、ストーリーは結構重たい。直接的な描写は無いのだが、修一というのが浮気相手の女に対してかなりの暴行を働いているし、しかも妊娠させるわなのだが、まるで悪びれた様子がない。出戻りの房子にしても帰ってきて文句たらたらで悩みの種。だらしない息子と娘の生活が自分のDNAのせいなのかと悩んでいる。

 そりゃ~自然に信吾は菊子に対して優しく接してしまうわけだ。信吾の菊子に対する気の使いようが半端ではない。もしかしたら信吾自身の行動が菊子の自由を縛っているのではないかと、ある提案をするシーンがあるのだが、その時のこの2人のやり取りは、悲しくも感動させるシーンだ。信吾と息子の嫁の菊子と恋愛関係になりそうなシーンがあってもおかしくない展開におもえたりするが、モラルを持って生きている信吾と、すっかりモラルを失ってしまった修一。この2人の対比も本作を面白く見れる要因だろう。

 原作と違って映画の方のラストシーンは、これからの人生に対して一歩を踏み出そうとするような面を感じさせる。原作も良いが、映画も良い。どちらが良いか甲乙つけ難いし、特に原作を読んでないと映画を観ても付いていけないことは無いだろう。

 成瀬巳喜男監督作品が好きな人、川端康成の小説が好きな人のどちらにもお勧めできる。ちなみにタイトルの山の音ですが、その意味するところは信吾が裏山の得体の知れない音に対して、自分の死期が近づいてきたかのような気にさせるところからきています。

 

 監督は前述したように成瀬巳喜男監督。驟雨めし、そして浮雲がお勧めビックリマーク

 

 

 

 

 

 

         映画 デッドエンド

 ニューヨークのイースト・リバー沿いが舞台の映画が今回紹介するデッドエンド(Dead End)。ちなみにタイトルの意味は『行き止まり』。人生つまづいてお先真っ暗な人が見ると辛い映画だ。

 そして本作を観ていると昔からニューヨークには表と裏の顔があり、貧富の差が激しいということがわかる。冒頭のナレーションであるが、イーストリバー沿いはスラム街だったのだが、川の美しさに魅せられて富裕層も住むようになった。そして、その結果、貧富の格差が生まれた。

 富裕層に属する者は良いが、やりきれないのは貧困層側。本作を観るとニューヨークの貧困層の集まるスラム街で産まれると、その瞬間から貧しさから抜け出せないことがわかるし、その辛さが伝わってくる。

 

 貧困にどっぷり浸かってしまった者たちの希望が見えないストーリーの紹介を。

 デイヴ(ジョエル・マクリー)は大学を卒業し建築科を卒業しているのだが、安い給料でペンキ塗りの仕事に甘んじている。そこへ、かつてのデイヴの旧友でありマーティン(ハンフリー・ボガード)がこの町へ帰ってくる。マーティンはこの10年間で8人も人殺しをしており、顔を整形し、名前もジョンストンと変名を使って警察からの追及を逃れている。

 捕まる危険を冒してまで故郷に帰ってきたマーティンの目的は母と会うことと、昔の彼女であるフランシー(クレア・トレヴァー)と会うこと。しかし、母親からは拒絶され、フランシーは今や娼婦に身を落としていた。故郷に帰って屈辱を味わったマーティンは富裕層に属する子供を誘拐して遠くへ逃げようとするが、その企みを知ったデイヴはマーティンを止めようとするのだが、デイヴはマーティンにナイフで背中を刺されてしまい・・・ビックリマーク

 

 この地域に住んでいる子供たちがすでに悪ガキ。彼らが憧れているのがマーティンのようなギャングであり、富裕層に属する子供達を襲ったりしている。マーティンもそのような子供時代を過ごしてしまい、そのまんまギャングになってしまったのだ。

 人間たる者、一度でも悪の道を通ってしまうと、そこからなかなか抜け出せない。貧困への道に陥ったしまった者は、悪事を働かないと金持ちになれないような境遇だということが本作から見てとれる。そしてデッドエンドという言葉が重くのしかかってくるのだ。

 しかし、デイヴは気づくのだ。金持ちになることが幸せとは限らないことを。持っている金を世の中のために役立てることの大切さを。

 本作の魅力にストーリー以外の所も挙げられる。演出の面でも構図を活かしたシーンが多く出てくる。パンフォーカスを多用したりのような視覚効果にも訴えてくるのが個人的には気に入っている。ウィリアム・ワイラー監督の作品と聞いて心が躍る人、助演の役割だが、まるで主演のようなハンフリー・ボガードの悪役を楽しみたい人等にデッドエンドはお勧めだビックリマーク

 

 監督は前述したようにウィリアム・ワイラー大いなる西部ベン・ハー、必死の逃亡者、孔雀夫人女相続人探偵物語・・・等お勧め多数で名作を多く撮った偉大なる映画監督ですビックリマーク

 

 

 

 

 

 

        映画 ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ

 とにかく何度観ても楽しい映画が今回紹介する映画ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズだ。何とも長ったらしいタイトル名だが、本作に限っては長ったらしい上に、意味がわかりにくいが本作の価値を貶めることにはならない。むしろ無理して邦題をつけようとしなくて良かった。

 本作は登場人物が多く出てくるのだが、どいつもこいつも個性がありまくり。分野がクライムサスペンスなだけに、カネ、銃、麻薬が色々な奴の所へ行ったり来たりする。ハードな暴力シーンも出てくるのだが、どこか抜けているのかそんなシーンでも笑えたりするし、映像がスタイリッシュ。本作が初監督作品となるガイ・リッチー監督の才気が爆発している作品だ。

 

 前書きは、この程度にしておいてストーリーの紹介を。

 エディ(ニック・モラン)、ベーコン(ジェイソン・ステイサム)、トム(ジェイソン・フレミング)、ソープ(デクスター・フレッチャー)の4人組は、各々が2万5千ポンドを持ち寄り、10万ポンドの金を更に増やすべくポーカーの天才であるエディに預けて、ギャンブルの元締めであるハリーの賭場へ出向いて勝負を挑む。しかし、ハリーのイカサマに遭ったエディは大負けをしてしまい、50万ポンドの借金をさせられた挙句に、一週間以内に返済できない場合はエディのみならず仲間の指も切り落とすと脅しをかけられてしまう。

 ひたすら悩みまくる4人だが、偶然にも大金強奪の計画があることを聞いてしまい、彼らはそれを横取りしようと企むのだが・・・ビックリマーク

 

 エディの負けの責任で指を切り落とされそうになってしまうように巻き添えを食ってしまう友達も可哀想に思えるが、彼らの無謀な計画の行く末が笑わせる。ストーリーが二重、三重に張り巡らされている楽しさがあり、彼らのヤバい危機も間一髪で逃れきるところが笑える。彼らの周辺で死体の山が転がっているのに、なぜか自分たちは助かっている。いざという時に強運が発揮される4人組だが、そのことに気付いていない彼らには笑わせられる。

 ちょっと楽しい4人組もそうだが、他にも取り立て屋の親子、黒人の麻薬王、強盗のリーダーその子分、間抜けな泥棒2人組など個性的な奴らも多く登場するのも楽しいし、笑わせてくれる。

 練り込まれたストーリー展開、個性的な登場人物達、ウィットに富んだ会話、二丁の銃の扱い等、褒めたいところがたくさんある。誰が観ても楽しめるということでロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズを今回のお勧めに挙げておこうビックリマーク

 

 監督は前述したようにガイ・リッチー。初監督作品から傑作を世に生みだしたが、その後の作品が今一つというか期待外れの作品も多数。シャーロック・ホームズのようなヒット作もあるのだが。スナッチ、ロックンローラーは個人的にはお勧めビックリマーク

 

 

 

         映画 ザ・ロック

 ハリウッドを代表するアクション映画として後世に残したい映画が今回紹介するザ・ロック。ツッコミどころ満載だが、だからこそアクション映画の傑作として成り得た。

 ちなみにタイトル名のザ・ロックの由来だが、あのアル・カポネも収容されていた脱出不可能と言われる監獄島である刑務所のこと。現在は閉鎖されているのだが、先日トランプ大統領がアルカトラズ島を再開すると言ったことにより少しばかり話題になった。

 

 早速だがストーリーの紹介を

 歴戦の強者である海兵隊のハメル准将(エド・ハリス)は、戦場で部下を見殺しにするわ、補償をだそうともしない祖国アメリカに対して怒りが充満していた。その結果、ハメル准将は賛同する仲間を集めて、兵器庫からVXガスを奪いアルカトラズ島を占拠する暴動にでる。アルカトラズ島をツアー中の客を人質にして、アメリカ政府に死亡した部下の遺族への補償として1億ドルを要求。もしも、40時間以内に要求が受け居られない時は、VXガスを積んだミサイルをサンフランシスコへぶっ放すと脅迫する。

 アメリカ政府はかつてイギリスの諜報員でありアルカトラズ島から唯一脱出したことがある経験を持つメイソン(ショーン・コネリー)、そしてFBI捜査官であり化学兵器のスペシャリストであるグッドスピード(ニコラス・ケイジ)を、アメリカ海軍特殊部隊のネイビーシールズ達と共にVXガスをミサイルを無効にさせるためにアルカトラズ島へ潜入させるのだが・・・ビックリマーク

 

 メイソン(ショーン・コネリー)は凄腕のスパイでありアルカトラズ島から脱獄した経験があると言ってもそれは既に30年以上も前のこと。ネルソン・マンデラよりも長く刑務所に居るんだと笑えない冗句をとばしてはいるが、既に60歳を超えている。

 またグッドスピード(ニコラス・ケイジ)は化学おたくであり、銃の扱い方など全く知らない。それなのにアメリカの命運を握るような重要な任務を託される。そして、妊娠中の恋人がワシントンにいるのだが、よりによって寂しいからなのか今にもVXガスミサイルの餌食になりに来たと言わんばかりにサンフランシスコにやってくるなど頭痛の種が勝手に増える。

 しかも、一緒にもぐりこんだネイビーシールズの連中はハメル准将の部下達と猛烈な銃撃戦の末に全滅。結局はメイソンとグッドスピードの2人でハメル准将たちと戦うことになってしまう。どう考えても勝てるわけがない戦いに巻き込まれていく。

 しかし、驚くのが衰えを知らないメイソンの活躍ぶり。現役の海兵隊たちよりも強くて、頼もしい。何の頼りにもならないようなグッドスピードと共にサンフランシスコ全滅を回避させるために頑張る。

 しかし、俺が本作で気に入っているのがハメル准将(エド・ハリス)のキャラクター。アメリカに対して脅しをかけるような悪党に思わせながら、実は非常に魅力的な人間だったということがわかる。このキャラクター設定のお陰で単なるツッコミどころしか無いように思われたアクション映画に少しばかり深みを与える。

 あの名作恐怖の報酬を模倣したかのようなVXガスの威力の見せ方は巧みな演出で、そのお陰でスリルのある映画になった。そして、ショーン・コネリーを元MI6のスパイにしているところが007ファンにとっては、そそられる憎い設定。遊び心も忘れていない作風が良い。

 ツッコミどころ満載だと言っても観ている最中はそんなことは全く気にならないし、メインキャスト達のお陰もあり誰もが楽しめるアクション映画として今回はザ・ロックをお勧めに挙げておこうビックリマーク

 

 監督はヒット作メーカーとして知られるマイケル・ベイパール・ハーバートランスフォーマー、アイランドは正直なところ心に響かなかったが、アルマゲドンバッド・ボーイズはお勧めできるビックリマーク