「黒澤、その道」
今年のカンヌに出品された映画に「黒澤、その道 」というドキュメンタリーがあって
スコセッシやクリント・イーストウッドら現代を代表する映画監督が
黒澤についてそれぞれの見方で語っているという。
黒澤に関する言及でクリント・イーストウッドの名前があがっていることに少し意外な感じがした。
近年のイーストウッドの映画にただよう静謐に
私はむしろ小津安二郎の作風に近いものを見出していたからである。
イーストウッドが小津の映画を見ているのかどうかは知らない。
しかしもし見ているのだとしたら
どう評するのかぜひ知りたいと思う。
こと作風に関する限り
両者の美意識はかなり近いと思うから。
私が近年のイーストウッドの映画を支持するのも
実は小津に対するシンパシーと同じものを見出しているからである。
- クリント・イーストウッド―ハリウッド最後の伝説/マーク エリオット
- ¥2,625
- Amazon.co.jp
日本の安手のドラマや映画では
役者は大声で泣いたり叫んだりする。
それをドラマと思っているようだが
現実の人間は悲しいからといって
泣いたり叫んだりはしない。
むしろ抑制したりする。人間とはそういうものだと思う。
小津は自分の映画で
泣いたり叫んだりの直接的な感情表現を忌み嫌ったという。
クリント・イーストウッドの映画でも
役者が大仰に泣いたり叫んだりすることはない。
結局、それは人間理解、洞察の深さに起因するもので
この両監督の知性はそこらの凡百の監督とは次元が異なっているのである。