スティーブ・ジョブズ 神の交渉力
「交渉」を苦手とする私は
「交渉力」という文字が入った本は知らず手に取ることとなっています。
書評の結論を先に言うと
「思いがけず面白かったです。」
思いがけずというのは失礼かもしれませんが
さほど期待していなかったので
ここまで強烈な個性の評伝とは思いませんでした。
スティ―ブ・ジョブズが誰であるかはもちろん知っていましたが
この本が伝えるとおりだとしたら
とんでもない人間です。
傲慢で
悪辣で
極端な自己中心主義者
そして平気で恩人に仇をなし
あきれるほどに目標達成意欲が強くて
交渉に関しては、猛獣も引くほどのタフ・ネゴシエイター
あまりに個性が強烈過ぎて
なるほどここまで凡庸から離れないと
彼が残した業績は達成できないのかと思えるくらいです。
その極端な性格にあきれると同時に
わが身をふりかえり
そうかなまじ誠実、善良であろうとするから
弱いのかもしれないと思ったほどです。
一介の市井人としては
それでいいのかもしれませんが
人間こうと思ったら
多少の悪評などものともしない目標達成への意思
こういうものも必要かもしれないと思いました。
独立するに当たり
顧客開拓の方法で頭を悩ます私ですが
無名時代から大企業のVIPに直接電話し
食い下がったスティーブ・ジョブズからすれば
方法など幾らでもあると思えます。
例によって、私が折にふれて読み返したいということもあるので
読んでインスパイアを受けた文章を転記します。
私たちはとかく「得」(手柄)と「徳」(人柄)の両方をほしがるものだ。
しかし、それは願望に過ぎない。手柄の立てられない好人物は役に立たない。
ビジネスではまず手柄が最優先である。
また、自分の手柄を他人に譲るのは美徳ではない。
強烈にかなえたいことには、他人の手柄を奪い取ってでもものにする覚悟を持つべきだ。
酷薄なようだが、人の評価は「何を成し遂げたか」で決まる。
成し遂げたことがすごければ、その人物は「よい人」とされ、世間が物語を作ってくれる。
「必要」なら動け、「可能」ならではない!
「現実になど自分の決意の邪魔はさせない」のだ。たいていの人は現実を踏まえ、
実現可能なスケジュールを立てるが、それでも、さらに遅れるのが普通だ。
それに対し、ジョブズは、現実などはなから無視する。
時間的制約などなんとでもなると考えるのだ。
このようなピンチ続きを、ジョブズはけして嘆かなかった。
むしろ「チャンスだ」ととらえ、
すさまじい執念をもって要所要所の交渉を成功させた。
それが彼の真骨頂といえるかもしれない。
ピンチは嘆くものではなく、乗り越えるべきものと考える人だけが
チャンスの入り口に立てるのだ。
負けが込んでいるときは、戦いの土俵から降りることも現実的な選択だと世間では教える。
傷口を広げないために「賢明な判断だ」と表現し、まわりも納得する。
だが「あきらめない」という凡人にとっては賢明とは思えない判断にも勝機はある。
最後の最後まで土俵から降りないとき、突然、道が開ける。
(私にも経験があります。)
「興味を持った一つ一つのことに熱中していけば、そのときは散らばっている点のような
別々の存在が、将来にはつながり合ってすばらしい一つの大きなものとなる。」
「君たち、人生の時間は限られている。
他人の人生を生きてこの限られた時間を無駄にしてはいけない。
世間の常識などという罠にはまってはならないよ。
他人の意見という雑音に、自分自身の内なる声をかき消されないようにすることが重要だ。
そしてもっとも重要なことは、自分自身の心と直感に従う勇気を持つことだ。
心と直感は本当になりたい自分を知っている。それ以外のものなんて二の次だ。」
「大金持ちでも貧乏人でも、白人でも黒人でも、三つのことしか人生にはない。」
とはある哲学者の言葉だ。
一つ目はオギャーと生まれることだ。
二つ目は死ぬことである。
この二つは、自分の思い通りにはならない。
だが、三つ目は自分の思い通りにできる。
それは、生まれてから死んでいくまでの間を「生きる」ことだ。
だが会社勤めをしていると、
いつしか自分の人生が他人の人生にすりかわっていることがある。
社内での地位の安定を求めると、自分の人生からそれていく。
自分の意思を通そうとすると、立場は不安定になる。
このあとでジョブズは組織の中で安定を捨てて
自分の人生を生きる覚悟の必要を説いていますが
独立を考える私としては
組織をはなれて「自分の人生を生きようとする覚悟」に置き換えたい。
他人の人生ではなく
自分の人生を生きようとするのであれば
引き換えに安定は捨てよう。
不安定は確たる自分の意思と絶対に引き下がらない執念で補う。
そう心に決めることを促した言葉です。
- スティーブ・ジョブズ神の交渉力―この「やり口」には逆らえない! (リュウ・ブックスアステ新書 48)/竹内 一正
- ¥840
- Amazon.co.jp
