言葉の記録 中1・2月 | YUKAのおもちゃ箱

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ダウン症があるために筋力が弱い子供の運動機能の発達を促す遊具、
知育に役立つ手作りおもちゃ、言葉や数を理解するためのオリジナル教材の作り方、成長記録などをご紹介しています。

≪中1・2月3日≫

母親「いっぱい食べて、大きくならないとダメよ」

有香「小さくても良い」
母親「何で?」
有香「ダウン症だから」
母親「ダウン症でも大きい人がいるよ。Mちゃん(小6)も大きいよ。ダウン症だから小さいという訳ではないよ」

有香「ダウン症から抜け出したい」

母親「どうやって?脱皮して?」
有香「魔法で」

母親「魔法は無理よ。生まれつきだから変えられない。ダウン症でもいいやん」
有香「嫌」
有香「Y君は?」
母親「ダウン症じゃない」
有香「普通?」
母親「うん…。有香ちゃん、普通って何?」

有香「…」
有香「Eちゃんは?」

母親「ダウン症」

有香「Nちゃんは?」
母親「ダウン症」

有香「お母さんは?」
母親「誰のお母さん?」

…母親を指す

母親「ダウン症かも」

有香「お父さんは?」

母親「ダウン症かも」

母親「有香ちゃんはダウン症、お母さんもダウン症、お父さんもダウン症。全員ダウン症でいいやん」

 

有香との会話を思い返し、「魔法で」と言われたとき、「魔法は無理」などと答えずに、「魔法の勉強をするね」と答えたら良かったかなぁ~と思いました。

 

≪中1・2月4日 19時頃≫

…脱衣場から声が聞こえました。母親はキッチンにいました。お互いに声は聞こえますが姿は見えません。

有香「何で私はダウン症で生まれたん?」
母親「何?」
有香「何で私はダウン症で生まれたの?」
母親「…」

母親「その方が、才能を発揮できるって仏様が思ったんじゃない?」

有香「発揮って?」
母親「有香ちゃんは詩が上手でしょう。良い詩が書けるって思ったんじゃない?」
有香「あ~なるほど」
有香「ダウン症って病気でしょう?」
母親「病気じゃないよ」
有香「じゃあ何?」
母親「個性よ」
有香「個性って何?」
母親「ひとりひとり違うってことよ」
有香「病気じゃないの?」
母親「違うよ。有香ちゃんは頭が痛いとか、お腹が痛いとか、足が痛いとか無いでしょう?」

有香「時々足が痛い」
母親「ずっとじゃないでしょう」
有香「うん」
母親「だから病気じゃないよ」

 

≪中1・2月4日≫
…「ダウン症は病気」「ダウン症は病気じゃない」で有香としばらく押し問答。
有香「ダウン症は病気」
母親「ダウン症は病気ではない。誰かがダウン症は病気って言ったの?」
有香「うん」
母親「誰?」
有香「テレビ」

 

…22時頃父親が帰宅しました。
母親「お父さんにダウン症は病気かどうか聞いてごらん」
有香「お父さんが病気じゃないって言ったら、DVDを見せてダウン症は病気と証明する」

 

…有香がDVDをつけました。映った映像は『ダウン症児のめざめ』でした。所々で映像を指しながら言いました。
有香「ほら見て!」
母親「これは安藤先生が作ったのよ」
有香「え~」

 

…クッションでトレーニングする赤ちゃんが映りました。
母親「このクッション作ったのお母さんよ」
有香「そうなん。じゃあ、この赤ちゃん誰?」
母親「知りません」

 

…ダウン博士の顔写真が映りました。
母親「ダウンって言うのは、この人の名前よ」
有香「しょうは?」
母親「昭和??」
有香「しょうは?」
父親「症は?って言ってる」
母親「症…」

 

少し前、DVD『ダウン症児のめざめ』を有香が見ていました。「あ~まずいな」とは思いましたが、止めるのも変なので好きにさせていました。私が思う以上に内容を理解しているようです。
『ダウン症は障害』『ダウン症は病気』と伝えた方が本人のために良いのか、このままお茶を濁したような状態をしばらく続けるか、先生方と相談して決めたいと思います。

 

 

≪中1・2月10日≫
…明日の詩吟の練成会に備えて、二人で美容院に行きました。伸ばしたいと言うので、少しだけカットしました。帰り道でのこと。
母親「どう、お母さん(髪を染めて)綺麗になった?」
有香「ますます綺麗」
母親 爆  笑
有香「私は?」
母親「ますます可愛い」
有香「有難う」

アホで幸せな親子です。

 

≪中1・2月10日≫
…19時なのに、真夜中のように言う人がいました。
知人「こんな夜に…」
母親「まだ7時です」
知人「こんな夜遅くに…」
母親「遅くないです。まだ7時です」
知人「こんな夜遅くに…」
母親「夕方に毛がはえたぐらいです」
有香「どこポーン

 

≪中1・2月12日≫

…2月9日の夜に城崎で、蒸したカニ・刺身のカニ・お鍋のカニなどをいっぱい食べました。

11日の午前3時に有香に高熱がでました。その後、激しい下痢と腹痛、全身の痛みに襲われました。11日の午前5時頃と、12日の正午過ぎにインフルエンザの検査をしましたが2回とも陰性でした。
母親「もしかしたらカニにあたったのかな?」
有香「カニにあたるって聞いたことないね。どういう意味?」
母親「カニにぶつかるのではなくて、カニを食べて具合が悪くなるっていうこと」

 

一緒にカニを食べた他の8人はどうもなかったので、食中毒ではありませんでした。
『胃腸炎』ということでお薬を処方して頂きました。
インフルエンザと違い、出席停止などの決まりはありませんが、無理をさせないように、金曜まで学校を休ませました。


担当の先生が毎日お電話をくださいました。
「有香ちゃんがいないと火が消えたようで寂しいです」
「皆が有香ちゃんの心配をしています。有香ちゃんは人気者です」
などの温かい言葉を頂き、嬉しかったです。

 

≪中1・2月13日≫
…数年ぶりの高熱と生まれて初めての激しい腹痛に苦しみました。
母親「有香ちゃん、これが本当の病気よ。だからダウン症は病気ではないよ」 
有香「…」
母親「頭が痛かったり、お腹が痛いのが病気よ。分かった?」
有香「うん。そしたらダウン症は何?」
母親「個性よ」
有香「個性って?」
母親「色んな人がいるでしょう。皆違うのが個性よ」

有香「どうやってダウン症と分かったの?」
母親「血液検査よ」
有香「どうやって?」
母親「血液検査でA型とかB型とか0型って分かるように、血液を調べてダウン症って分かったの」
有香「ふ~ん」

有香「私はダウン症だから良い詩が書けるの?」
母親「それはどうかな?有香ちゃんは心が綺麗だから良い詩が書けるんじゃない?お母さんみたいに心が汚くないから」
有香「お母さんの心も綺麗やん」
母親「いいや、汚い心よ」
有香「何で?」
母親「業かな…、いや、煩悩よ」
有香「煩悩って?」
母親「あれが欲しいとか、これが嫌だとか…ね」
有香「私はプリキュアのおもちゃが欲しい」
母親「ダメ」
有香「何で?」
母親「もう中学生だからよ」
有香「偽物でも良いから欲しい」
母親「偽物でも良いんなら、自分で作り。T君も、何でも作ってるやん」
有香「何を?」

 


母親「トカゲとかも作ってたやん。何でも作ってるやん。有香ちゃんも自分で作り」

 

≪中1・2月14日≫
有香「パイナップルみたい」

 

≪中1・2月17日≫
…トイレから母親を呼ぶ声がしました
有香「お母さ~ん」
母親「何?」
有香「お腹が痛い」
母親「食べすぎよ」
有香「赤ちゃんが生まれるかも」
母親「今頃赤ちゃんが生まれたらどうするの」
有香「嬉しいやん」
母親「どうやって育てるの?」
有香「ミルクあげたり、一緒に寝たり」

 

≪中1・2月17日≫
…祖母と雑談
祖母「バイタミックスを買ってからレパートリーが増えたね」
母親「腕がなくても美味しい料理が作れる」
有香「どうやって」
祖母&母親 爆  笑爆  笑
母親「腕はあるねん。上手じゃなくてもっていう言う意味よ」

 

≪中1・2月17日≫
…車中で
有香「タスマニアデビルは怖いよ」
祖母「何それ?」
有香「動物」
祖母「蛇みたいなもの?」
有香「違う。フクロネコ科」
祖母「何それ?そんな科があるの?どこにいるの?」
有香「タスマニア島よ!」
祖母「それどこ?」
有香「そんなこと知らんの?え~と…分からない」
母親「タスマニア島ってどこにあるの?」
父親「オーストラリア」

 

タスマニアデビルについて調べました。
『有袋目(フクロネズミ目)フクロネコ科』と書いてありました。
有香は図鑑を良く見ているので、母親よりも物知りです。

 

≪中1・2月19日≫
…NHKから分厚い封書が届きました。何だろうと思って開封するとハート展のポスターでした。

母親「こんないっぱいどうするんよ滝汗
有香「A先生(ピアノの先生)とかHちゃん(隣人)とか、皆に配ればいい」
母親「多すぎるわ」
有香「皆に配ればいい」
母親「これ全部?」
有香「そう」

 

≪中1・2月19日≫
有香「O君はゲーム三昧やねん」
母親「学校でゲームしているの?」
有香「いいや」
母親「じゃあどこで?」
有香「家で」
母親「何で知っているの?」
有香「O君とT先生の話を、耳を大きくして聞いた」
母親 爆  笑

母親「有香ちゃん、『耳を大きくして』ではなくて、『耳をそばだてる』って言うねん。言ってみて」
有香「耳をそばだてる」
母親「耳を澄ますとも言うよ」
有香「耳を澄ます」

 

≪中1・2月20日≫
…先生との雑談で、有香がY君ととても仲がよいことを知りました。と言うか、そこまで仲が良いとは知りませんでした。時々「(立ち位置が)近すぎる」と注意を受けているようです。
母親「Y君とどんなお話をするの?」
有香「秘密」
母親「教えてよ」
有香「お母さんには知られたくない」
母親「バレンタインにチョコレートをあげたかったの?」
有香「うん」

 (バレンタインは病欠しました)

有香「好きなの。大好きなの。Y君が大人になったら結婚したい」
母親「Y君が大人になったとき、有香ちゃんは?」
有香「大人」
母親「有香ちゃん、結婚には両性の合意が必要なの。有香ちゃんが結婚したいと思っても、Y君に断られたら結婚できないよ」
有香「分かってる」
母親「もしY君に断られたらどうするの?」
有香「別の男の子を探す」

母親「お父さんとお母さんと有香ちゃんの3人で暮らすのと、Y君と有香ちゃんの2人で暮らすのと、どっちが良いの?」
有香「4人」
母親「お父さんとお母さんと有香ちゃんとY君の4人で暮らすの?」
有香「そう」
父親&母親 爆  笑爆  笑


Y君のどこが好きなのか聞いても教えてくれませんが、会話が楽しいようです。フィーリングが合うんでしょうね。

 

≪中1・2月21日≫
有香「今日、バスを降りたところで、Y君に『大人になったら結婚しよう』って言った」
母親「そしたら?」
有香「良いよって」
有香「大人になって、一人で生活できるようになって、お父さんとお母さんとバイバイしたら、私と結婚するって」

 

≪2月22日≫
…朝、登校の支度中のこと

松田聖子さんと一緒に赤いスイートピーを口ずさみながら、鏡を見て、スプレーして、寝ぐせ直し。

 

≪中1・2月23日≫

「じんぶ」と書いてありますが、「じぶん(自分)」の書き間違えです。
消してある部分には 「○○有香だよ。私好き。○○有香のこと好き」と書いてありました。

母親「有香ちゃん、自分のことが好きなの?」
有香「うん」
母親「良かった」

 

「ダウン症から抜け出したい」  
「何で私はダウン症で生まれたん?」

などなど、ダウン症児である自分自身を受け入れがたく、葛藤に苦しんできました。
有香から「自分が好き」という言葉を聞いたのは始めてです。

・お互いに親友と呼び合うお友だちが出来たこと
・好きな男の子ができ、先生から「見ていて微笑ましいです」と言われる関係が築けていること
・この一年、学校の先生方からいっぱい褒めてもらったこと
などが功を奏し、自尊感情が芽生えたようです。

普通クラスに在籍した小学校時代、有香には苦しいことが多かったと思います。しかし、普通クラスに在籍したからこそ得られたものがあったのも事実です。

小学校時代の音楽会や卒業アルバムを時々見ています。『お友だちのように出来ない』ということに苦しんだ小学校高学年。一年のときを経て、楽しい思い出に変化したようです。

 

≪中1・2月27日≫
…ハート展の開会式に参加するため、おしゃれをして出かけました。電車の中で、シートに座っていた有香が、前に立っている母親のスカートの裾を持ち上げます。


母親「やめてよ!」
有香「…」
母親「やめてってば!」
有香「お母さんのこれ(スカートの裾のビーズ)がこそばいねん」


有香は珍しくスカートをはいていました。生足に母親のスカートの裾のビーズが当たり、こそばかったり、痛かったりしたようです。行動には全てに理由があるのだな~と、改めて思いました。

 

≪中1・2月28日≫

…恵比寿で母親の高校時代からの友人に会いました。実に12年ぶりかな。仲の良い友人は長く会わなくても、あっという間に昔に戻れますね。ちなみに有香が彼女に会うのは2回目でした。初対面は0才のときです。

有香「子供は?」
友人「一人いるよ」
有香「何で一人なん?」
友人「う~ん、赤ちゃんを産んだとき、結構、年寄りやったからかな」
有香「え~びっくり
友人「生まれた赤ちゃんがお年寄りなわけないやん。生まれてすぐにおじいちゃんなったらどうするん。私がよ」
有香「あ~」

 

…有香の詩を聞いてもらいました。
   「鉛筆」
  鉛筆っておかしいな
  学校の校を書くとき
  まちがえて村になっちゃった
  鉛筆がまちがえた
  アハハハハ
  ウハハハハ
  鉛筆のアホ

 

友人「おばちゃんのとこの子供も、鉛筆がアホなんかもしれへん。これからは鉛筆を買うときには、『この鉛筆はアホ』『この鉛筆はカシコ』って選ばなあかんわ」

 

…カフェでの楽しい時間はあっという間に過ぎ、お別れのとき
友人「有香ちゃんがこんなに詩人って知らなかった。今度は泊まりに来てね」
有香「19回ハート展で会いましょう」

今回が第18回ハート展でした。来年が第19回ハート展と知っていることに驚きました。