言葉の記録 中1・11月 | YUKAのおもちゃ箱

YUKAのおもちゃ箱

ダウン症があるために筋力が弱い子供の運動機能の発達を促す遊具、
知育に役立つ手作りおもちゃ、言葉や数を理解するためのオリジナル教材の作り方、成長記録などをご紹介しています。

≪11月3日≫
有香「私は何でここの子なんやろ?」
母親「不満なん?」
有香「いいや、何でかな~と思って」

 

≪11月6日≫
…父親が次から次へと服を買うので、母親は収納場所にとても困っています。
母親「一つ服を買うなら、一つ処分して」
父親「…」
母親「有香ちゃん、お父さんに何か言ってくれない」
有香「服を買ったらボロボロになるまで着て、それから新しいのを買い」
父親&母親 爆  笑爆  笑
あまりにも的確な注意だったので大笑いしました。

≪11月7日≫
有香「『私は甘い物は好きじゃない』っていう詩はどう?」
母親「どんな内容?言ってみて」
有香「私は蜂蜜は好きだけどケーキが苦手なの。メープルシロップも苦手」
父親「本当?」
有香「キムチとか辛い物が好き。甘い物を取りすぎると太るから、甘い物は好きじゃないの」
父親「有香ちゃん、アイスクリームとか食べてるやん」
有香「あれは別」
有香「お母さんから『太ってる』って言われるのが嫌。それなのにお母さんはそれを繰り返して言うの。だから甘い物は嫌いなの。大大大大大嫌い」
母親「甘い物が嫌いなのではなくて、甘い物を食べ過ぎると太るから、甘い物が嫌いなのね」
有香「そう」
母親から「太る」「太った」と言われるのが相当嫌なようです

 

≪11月7日≫
…スクールバスは市バスと違い発車時刻が一定ではありません。なので、発車予定時刻の10分前には必ず乗車場所にいなければなりません。最近になり、バスを待つ時間がもったいないと気づき、バスが来るまで、乗車場所の落ち葉拾いをすることにしました。
母親「リュックを置いたら?」
有香「いい。忘れたら嫌だから」
母親「有香ちゃん、昔、チューラパンタカっていう人がいてね、毎日、毎日お掃除をしたのよ」
母親「落ち葉を拾って綺麗にしても、また明日になったら葉が落ちているの」
有香「明日も拾ったらいいんちゃう?」
母親「そうよ。積み重ねよ」
母親「これは掃除じゃないの。落ち葉を拾っているけれど、有香ちゃんの心の中の埃を拾っているのよ」
母親「分かる?」
有香「少し分かる」

有香「あっバスが来た」
私は落ち葉拾いに没頭しスクールバスに気づきませんでした。有香は元気よくバスに乗り込みました。

≪11月8日≫
有香「今日も掃除しよ」
母親「なら早く行かなきゃ」
母親「何を取るんだった?」
有香「分かってる。私の心の埃」

≪11月10日≫
もうすぐ支援学校で文化祭があります。

有香は合奏「聖者の行進」で、ピアニカの主旋律を担当しています。
学校では担当の先生がとても丁寧にご指導くださるようで、我が家のピアノで聖者の行進のメロディーを上手に弾くようになりました。その姿を見て、丁寧に教えてもらったら出来るんだな~と感心しています。
小学校の音楽会では、好きな楽器を担当するにはオーディションがあったようです。有香は一度もオーディションを受けませんでした(案内がありませんでした)。6年間通して、カスタネットなどの音階のない打楽器担当だったと記憶しています。
母親として、担当する楽器に不満はありませんでした。ただ、ただ、心配だったのは、全体の演奏の邪魔にならないように…ということでした。


有香「小学校の音楽会ではカスタネットとかトライアングルばっかりだった」
父親「それで?」
有香「それが嫌やってん。ピアニカがしたかった」
父親「分かっとったんや」
有香「悔しかってん」
母親「…」
有香「小学校の音楽会、嫌やってん」
支援学校での生活は本当に楽しいようです。いろんなことに積極的に取り組めるようになりました。
小学校高学年時代の憂鬱(自分自身の葛藤)は払拭されました。

≪11月11日≫
有香「私は皆の心と体が分かる立派な専門家や」
父親「皆の心が分かるん?」
有香「うん」
父親「じゃあ、お父さんの心は?」
有香「お母さんの言うことを聞かへんからボロボロや」
父親「厳しい専門家やな」
父親「じゃあ、お母さんの心は?」
有香「お母さんは優しい心を持っている」
父親「じゃあ、T丘のおばあちゃん(母方)の心は?」
有香「いつもお弁当を作ってくれるから、親切な心や」
母親「Mちゃん(叔父)の心は?」
有香「親しき中にも礼儀ありや」
父親「そんなふうに思っているの?」
有香「そう」

≪11月11日≫
…テレビで歌番組に出演している小林幸子さんを見て
有香「私はこの人と友だちや」
父親「えっ、友だちなん?」
母親「どこで会ったの?」
有香「夢でよ~」
母親「夢で何をしたん?」
有香「一緒にお寿司を食べた」
母親「何を食べたの?」
有香「私はまぐろ」
母親「小林幸子さんは?」
有香「ほたて貝」
母親「楽しかったの?」
有香「楽しかった」

≪11月10日≫
…事情があり、ある人に「お風呂に入るように」説得する係りを拝命しました。
父親「お風呂に入ったら血行が良くなるよ」
母親「お風呂で体を温めたら気持ちが良いですよ」
父親も母親も、上記のような一般的な言葉しか思いつきません。

…有香が両親に代わり説得を始めました。次から次へと言葉を繰り出します。その中で、一番私の心に響いた言葉です。
有香「お風呂に入るとね、心も温まるよ」

≪11月12日≫
…有香を一人家に残し買い物に行きました。(随分前から留守番をさせています) 家に帰ると、有香がご飯を食べていました。
母親「ご飯食べてるの?」
有香「お腹すいたから」

…食卓に、照り焼きのたれを入れた器が置いてありました。何を食べたんだろうと不思議に思い、食卓をよく見ると、丸めたラップが目に入りました。広げると、豚肉(しゃぶしゃぶ)のトレーを包んでいたラップでした。
母親「有香ちゃん、お肉は?」
有香「…」
母親「食べたの?」
有香「食べた」
母親「本当に食べたの?」
有香「食べた」
母親「美味しかったの?」
有香「美味しかった」
母親「豚肉よ、生よ、病気になるよ、死ぬよ」
有香「…」
母親「生は食べたらいけないって言ってるでしょう」
有香「私がアホでした」
母親「ほんまにアホやね。どうするのよ、病院行って、お腹を洗ってもらわないといけないよ」
有香「…」

…どこに電話して聞いたら良いのか?誰に相談したら良いのか?とりあえずインターネットで調べました。すると、「最近の国産の豚肉は生で食べてもほぼ大丈夫」と書いてありました。ゴミ箱からラップを拾い広げると『国産』と書いてありました。やれやれと思い消費期限を見ると11月5日。
 早く処分しなかった私が悪い
 何で生肉を食べるのよ
 古い生の豚肉を食べて病院へ行かなくても大丈夫だろうか
などの考えが頭の中をぐるぐる…。

…ふと、有香を通して知り合ったお医者様を思い出しました。「そうだ!○○さんに電話しよう!」
母親「今お時間大丈夫ですか?」
医師「どうしたの?」
母親「有香が…(中略)…生の豚肉を食べてしまったんです」
医師「どれくらい?」
母親「しゃぶしゃぶのお肉を3枚ぐらい」
医師「大丈夫よ。美味しかったって?」
母親「美味しかったと言ってます」
医師「美味しかったのなら、大丈夫よ」
母親「消費期限が5日だったんです」
医師「そっちの方が問題よ」
医師「泣いてるね。大丈夫よ~」
母親「有香ちゃん、大丈夫だって。死なないって」
医師「お腹が痛いとか、症状が出たら、また電話ちょうだい」

…父親が帰宅(メールで連絡済)
父親「有香ちゃん、生の肉を食べたらダメよ。お腹が痛くなるよ」
有香「もうしません」
父親「生肉食べるなんてライオンやで」

母親「有香ちゃん、これからは生のお肉はどうするんだった?」
有香「フライパンで焼いて食べます」
母親「一人でフライパンは使いません。お母さんに言ってよ」
有香「はい」

有香「どうしてライオンは(生肉を食べても)お腹痛くならないの?」
母親「有香が『どうしてライオンはお腹痛くならないの?』って言ってるけど?」
父親「知りません」

「何でライオンは生肉を食べても食中毒などを起こさないのか?」について調べました。
世の中には有香と同じ疑問を抱く人が大勢いるんですね。私は考えたこともありませんでした。

≪11月13日≫
…5時ごろ寝ている有香を見ると、パジャマを脱ぎ捨てていました。
母親「有香ちゃん、何でパジャマ脱いでるの?」
有香「熱いから」

生肉で体温が上がったのでしょうか?
生肉の一件を連絡帳に書きました。
担当の先生が「どうして生肉を食べたらいけないか」について説明してくださいました。
有香はうつむいて聞いていたそうです。

≪11月13日≫
…有香の質問「どうしてライオンは生肉を食べてもお腹が痛くならないのか?」について話しました。
母親「ライオンは腸が短いんだって」
有香「何で?」
母親「知らんわ」

…「知らんわ」で済ませてはいけないと気を取り直して
母親「調べたら書いてあった」
有香「どこに?」
母親「インターネット」
有香「そしたらトラは?」
母親「知らんわ」

≪11月13日≫
…文化祭には私服でステージに立つと聞き、急いでズボンの裾あげをすることにしました
母親「丈を直すからズボンをはいてみて。丈って分かる?」
有香「うん」
母親「何?」
有香「ズボンの袖」
母親「違うよ」
上着には「袖」「身ごろ」などの名称がありますが、ズボンにもあるのでしょうか?言われてみたら、ズボンって袖みたいですね。

≪11月17日≫ 文化祭
…階段でとても若い女性の先生とすれ違いました。
先生「○○有香さんのお母さんですか?」
母親「はい」
先生「私は、スクールバスで有香ちゃんの前の座席に座っている小学部の男の子の担当です。時々、有香ちゃんとお話するんです。有香ちゃんが『私のお母さんは世界一優しい』と言っていましたよ」
母親「家では『お母さんは鬼だ』って言われているんですよ」

…夜
母親「有香ちゃん、スクールバスで前の座席の男の子の先生に『私のお母さんは世界一優しい』って言ったの?」
有香「うん」
母親「いつもお母さんに『お母さんは鬼だ』って言ってるやん」
有香「お母さんが怒るのは注意なんでしょう?」
母親「そうよ。分かるの?」
有香「分かった」
母親から厳しく叱られることを『お母さんは鬼だ』と思うのではなく、『自分が悪いことをしたから注意をされて当然』と理解出来るようになったようです。

≪11月19日≫
東京に住む叔母と従姉妹からプレゼントや手紙が届きました。大喜びした有香のコメントです。
  

  
K子叔母ちゃん有難う
私、このスリッパ欲しかったんだ~
どれどれ
履き心地はどうかな?
履き心地は…気持ちいい
このスリッパさぁ~滑り止めもついてていい気持ち

お母さん、これ触ってみて
何かこうちゃん(ピアノの先生の犬)みたいに柔らかい
こうちゃんみたい
気持ちいい
こんなにプレゼント嬉しい
夢のようや

 

≪11月22日≫
…チューラパンタカのように、バス停での落ち葉拾いを続けています。とっても小さなことですが、現在の有香にできる社会貢献でもあります。有香が母親に見せながら言いました。
有香「モモンガの足みたい」

帰宅後すぐに調べました。なるほど、似てます。

≪11月23日≫
…朝、なかなか起きません
母親「起きて」
有香「電気消して。電気がついていたら起きれない。私は猫みたいな人間なの。電気がついていたら目が細いの。暗かったらよく見えるの」
電気を消すと、すぐに起き上がりました。

 

≪中1・11月25日≫ ディズニーランドにて
…パレードで時々プルートの泣き声(ワンワン)が聞こえました。
有香「あの中に入っているのは犬なん?」
母親「違う、人間」
有香「そしたら何でワンワンって言うの?」

≪11月25日≫ 
…若い母親が3歳ぐらいの女の子を怒っていました。
若い母親「てめ~、なめんなよ!」
有香「何なめるん?」
母親「人間」
有香「そりゃ~あかんわな。そりゃ~怒るわ」
母親「人間を本当になめるのではなくて、『馬鹿にするな』っていう意味よ」

…夜、母親の言葉に対して
有香「お母さん、本気で怒るよ」
母親「有香ちゃん、そういう時に『なめんなよ』って言うねん。だけど、有香ちゃんが『なめんなよ』って言ったら、皆がびっくりするからダメよ」
 

≪11月29日≫
…母親が二階で用事を済ませ、リビングに入ったときのこと
有香「ご飯炊いときました」
母親「本当?」

…慌てて台所へ行くと、炊飯器にスイッチが入っていました。蓋を開けると水とお米が入っていました。
母親「どれぐらいお米を入れたの?」
有香「知らん」
母親「カップが入っていたでしょう。何回入れたの?」
有香「3回」
母親「洗った(といだ)の?」
有香「洗った」
母親「どれぐらい水を入れたの?」
有香「半分」
母親「水が多いみたいよ。おかゆになっても食べてよ!」
有香「おかゆが食べたかった」

…炊飯中でしたが、やはり水が多く感じたので、少し減らしました。「勝手にしないでよ」という言葉を呑みこんで
母親「またお願いするわね」
有香「いいよ」

…炊き上がりました。
母親「有香ちゃん、ちゃんと炊けてるわ」
有香「どうよ」
母親「お米を3カップ入れたら、お水は3の線まで入れるのよ。今度一緒にやろうね」

…父親が帰宅
有香「私がご飯炊きました」
父親「本当?」


…母親が事情を説明
有香「私は立派な主婦になりたい」
母親「主婦になるには夫が必要よ」
有香「夫って何?」
母親「お母さんにとって、お父さんみたいな人」
有香「私は夫はいらん」
甲斐甲斐しく父親の世話をしてくれます。
私は教えていませんが、いつも3カップ入れているのを見ていたようです。また、小学校の家庭科でご飯を炊いたので、お米のとぎ方や炊き方を知っているんですね。

≪11月29日≫
…食事中のこと
母親「スープを飲んでしまって」
有香「どこにしまうん?」
母親「『全部飲んで』っていうことよ」

≪11月≫
…有香が松田聖子さんの『赤いスイートピー』を口ずさむようになりました。
有香「お母さん、心の岸辺って何?」
母親「…」