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第一章 【ハッピーワーク】 その2

振り返るとコンクリートの階段を降りてくるボブの姿が目に入った。


「おはよボブ」


「お昼過ぎてるよ堀渕さん」


「水商売は夜でも出勤したらおはよなんだよ。知らないの?」


「水商売じゃねえし」


ボブは事務所に入る俺の後をついて来る。



事務所といってもアパートの一室。


コンクリート剥きだしの無機質な、しかも寂れた この『アパートさちえ』の趣は住居より事務所に向いている。


俺は椅子に座り事務机に足を投げ出した。すぐその真横に立つボブ。


「近いよお前! ソファに掛けろよ」


「……」


「なんだよ……ソファ行けよ」


「一万、前借したいんだけど……駄目かな?」


「そりゃ良いけど、お前が働いた金だし」


財布から一万円札を取り出しボブに手渡した。


「学費は大丈夫か?」


「ありがと……大丈夫だから……」



ボブ、本名は奥山一彦。山形から岡山に一人で出てきて大学に通ってる。
詳しくは聞いてないが訳ありで、親からの仕送りも無い。
今時珍しい苦学生だ。



「俺が大丈夫じゃねぇよ、 この距離で俺が普通に座ると肘がお前のチンコにあたんだよ、 頼むからソファに座ってくれ」


「サービスだよサービス」 漸くソファに向かうボブ……



「前借、今月三回目だけど、どうかした?」


「ちょっと付き合いが続いてさ……」


「親のスネガジリと違って、働く学生は大変だな」



ボブの嘘は解りやすく定まらない視点から察して女に貢いでる可能性大だ。



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