3月末から10日間 地獄と天国を見た様な面白い体験をしてきました。

 

ウイーンから車で3時間ほど、昨年秋に訪れた南シュタイアーマルクのGamlitzに

”Taman Ga“という素敵な場所があります。

 

 

 

 

 

 

 

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そこで、座禅とファスティング(断食)と沈黙(誰とも話さない)の3つがセットになったリトリートが開催され、今回一人でそれに参加してみました。

 

よく内容も調べずに、沈黙なら、ドイツ語を話すこともないし、坐禅は前からやってみたかったし、ファスティングも日本で何度か半断食の経験があるからだいじょうぶだろうと、軽い気持ちで申し込んだのでした。(なんて浅はか!)

 

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昔から永平寺の4日間の修行のコースを受けてみたいと思っていたり、ちょっと普通の人は敬遠したくなる様なことなのに、そこに惹かれる気持ちがあったことが、このリトリートをたまたまネットで見つけ、コロナの前からずっと行ってみたい気持ちが続いていた要因でもありました。

 

実際、リトリートが始まってみれば、やはりドイツ語で全て説明があり、細かいことまでは聞き取れないこともあり、まるで雲を掴む様な気持ちで10日間過ごしたのですが、だからこそ、日本では経験できない様な面白いこともいろいろあり、得難い体験でした。

 

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★これが1日のスケジュール。昼の3時間休憩以外はほぼ分刻み。

 

朝は5時半に起床して、6時から参加者60名全員で道場に集まり、懺悔文、般若心経、白隠禅士座禅和讃、観音経などをみんなで唱えます。

すべてローマ字読みの冊子が渡された時にはびっくりしました。

ドイツ語圏の人たちが朝からお経を読むって、シュール!

 

日本で一度も般若心経を最初から最後まで唱えたこともないのに、ここでは朝晩2回唱えたので、般若心経が身近なものに感じられたほどです。

 

それから30分の坐禅が夜まで間隔をおいて、七回繰り返されます。

 

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60名もの人がいるのに、座禅が始まると、静寂そのもの。私の両隣の人は物音ひとつ立てず、全く動きもなく背筋もまっすぐに座っていました。

私といえば、具合の悪かった前半は、腰はすぐ曲がるし、集中できず、体は前後に揺れるし、眠くなるし、まだかな〜まだかな〜、30分長いなあ・・・と思いながら過ごすことも多々ありました。それでも体調が良くなってからは随分落ち着いてきて、安定感が出てきました。

 

 

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★坐禅をする道場はちょうど座った目線の先に窓がある様に設計されており、とても美しい建物でした。

 

お茶の時間は日に四回。そのうちお昼のみ一回青汁スムージーがコップ一杯出され、それ以外はお水かハーブティーしか出てきません。もちろん沈黙の中で黙々とお茶を飲みます(笑)

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★これは1日目の夜、最後の固形物の食事といっても、りんご一個、たんぽぽの花と葉っぱのみの夕食でした。沈黙は2日目から9日目の昼まで。

 

もう少し食事は出るのかと思っていたので、あまりに少なさに、ちょっと凹みました。3日目4日目が一番辛くて、吐いたり、胃がムカムカしたり、散々でしたが、先生に相談して、適切な飲み物、坐薬をもらったりして、体調が戻ってきて、6日目以降はこのリトリートに参加できていることに感謝して、1日1日を味わって過ごすことができました。

 

体調が悪かった5日目までは毎日、なんで安易にこんな大変なコースに参加しちゃったんだろう?そればかり考えてましたが、無事体調が戻ってからは、このコースの良さがどんどん見えてきて、世界がひっくり返りました。

 

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禅のコースということで、代表の先生は様々な観点から日本の古き伝統文化の素晴らしさについて話してくれたり、日本には”受け入れる”という文化が浸透しているけれど、私たちの国は”自分”が大事という文化だから、我々は日本を見習わなければならないという話や、日本の金継ぎ文化を例に取り、物を大切にする文化が根付いている話など、津波の時に人々がいかに忍耐強かったかという話や、はたまた、沖縄は昔とても長寿の人が多かったけれど、アメリカの食文化が入ってきて、すっかり古き良き食文化がやられてしまった話など、多岐に渡り日本の話をされていたのも印象深く、日本にいては当たり前に思っていたことも、こうして、外から日本の良さを指摘してもらえたことはとても嬉しいことでもありました。

 

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沈黙が基本なので、誰とも話はできないけれど、1日目、沈黙が始まる前に話をした、数人の常連さん(もう10回以上いらしているそう)たちが、何から何まで私のことを気にかけてくれ、おかげで、私は最後までやり切れた様に思います。

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★いつも気にかけてくださった先輩たち

 

いつだって、心を開いて、飛び込んでいけば、必ず世界には助けてくれる人がいるし、たとえ、話をしなくとも、その人から出ているオーラや波動で人は癒されたり萎縮したりする。毎回目を合わせてにっこりするだけで、心は温かくなり、今日1日頑張ろう!という気持ちになれました。

 

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★敷地内には自然のプールがあったり、リラックスできる環境が整っており、楽園の様な場所でした。

 

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喋らないことで、余計なエネルギーを使わないで済んでいることにも気づいたし、喋らなくても、人はそれほど困らないし、人との触れ合いは十分感じられることもわかりました。

 

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沈黙だからドイツ語使わなくて楽だったけれど、先生の講義は毎回お茶の時間にあったし、講義だけの時間もあったので、結構な量のドイツ語を毎回聞くことになりました。

先生のドイツ語ははっきりしないし早いし、わかりにくかったけれど、10日間聴き続けることで、その後、他の方のドイツ語がクリアーに耳に入ってくることもあり、とにかく、ドイツ語漬けの環境に身をおくことで、自分が想像した以上に語学には良い影響があると思ったのでした。

坐禅していて、煩悩が浮かんでも、浮かぶ言葉は後半全部ドイツ語になっていたことに、私自身が一番驚きました。

 

毎日分刻みのスケジュールだったけれど、日に2度ある太極拳の時間はとても癒しの時間でした。素敵な女性の先生のレッスンは、太極拳だけにとどまらず、ヨガや空手や瞑想の要素もあって、最後のレッスンが終わったら、私は感動して涙が込み上げてきたほどでした。

 

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昼には3時間の休み時間があり、思い思いに、施設内の大自然の中でくつろいだり、周りをハイキングしたり、ゆったりとした時間を過ごしました。気分の悪かった前半はほぼ寝てましたが・・・。

 

普段、家でのんびりできているはずが、実は、いろいろ頭を巡らせて、本当に脳がゆっくり休める時間って意外になかったのかもしれません。

SNSからも離れ、自然と一体になってただただ日向ぼっこをしたり、心身ともゆるんだ時間を持つことの大切さを実感し、ウイーンに戻って、お天気がよくなったら、もっともっと身近にある緑の中に身を置く時間を作ろうと思いました。

 

坐禅では、ひたすら脳を休め、できる限り静かな時間を持つことを意識しました。

ほんの10日でも身体は少し鍛えられた様で、じっとしていることがあまり苦ではなくなったことは、私にとって素晴らしい収穫。

頭が静かになることで、感覚が繊細になり、体の声が聞こえやすくなりました。

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今まで常に主人と一緒で、ある意味、その加護のもとで、想定内の範囲で、好きなことをやってきましたが、今回、やったことのない世界に一人で飛び込んでみたことで、明らかに日常から一歩外に出たところでの経験をすることとなりました。

 

それは怖いことだったけれど、今までに見たことのない世界を味わえて、感無量でした。未知の体験するってすごいことですね。

 

 

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★一人部屋の個室は必要なものが全て揃っておりとても快適でした。

 

 

 

 

沈黙の時間が終わった9日目の夕方には、参加者の中に作曲家でありピアニストの方がお二人いらっしゃって、コンサートが開かれました。ほんの40分ぐらいの短い時間でしたが、どこにでもいるお爺さんだと思っていた方が、作曲家で、流れる様に優しい音色のピアノを弾かれる姿に感動!

 

 

 

豊かでかけがえのない時間を過ごさせていただきました。

 

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最後の日の朝食は回復食。

塩抜きの食事でしたが、驚くほど味わい深く、久しぶりのお食事は本当においしかった〜!

 

それ以外にもビュッフェコーナーには美味しそうなお料理がたくさん並んでおり、これは、家路につく長旅の間、断食明けの優しい食事をいただける様にとのことで、準備されたもので、思い思いにみなさんパッキングして持って帰りました。

 

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お砂糖を一切使わないのに、ナツメなどで甘みを加え、とても優しいお味でした。

 

 

翌日、別れの時間になると、誰彼なく、皆、過酷な10日間を過ごした同志の様な気持ちになり、みんなとハグしてそれぞれが、また様々な国へ飛び立って行きました。

 

私は主人が迎えにきてくれ(主人も2泊3日スロベニアで一人休暇を過ごしたのでした)、久しぶりの再会を喜びあい、その後、宿からウイーンに向かうちょうど中間地点にある、何度も訪れたことのあるBio Hotelに立ち寄って一泊しました。

 

なんと、そこのオーナーの女性も、すでに3回、同じコースに参加され、断食明けの回復食として、私のために特別メニューの夕食まで準備してくれました。

 

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imageオオーナーさんの心遣いに心から感謝です!

 

翌朝は、一緒に太極拳やりましょうと誘ってくださり、リトリートで教えてもらった一連の動きを音楽も入れて30分ご一緒させていただきました。

 

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主人がビデオも撮ってくれたので、今でも家で毎朝、私は太極拳を続けられています。これも神様の思し召し???(笑)

 

断食により、体がリセットされ、舌がとても敏感になり、食べ物のもつ本来の味をしみじみ感じることができ、ゆっくり噛んで意識的い食べることが自然と出来て、それも新鮮でした。

今までは無意識に、よく噛まないで、食べることをおろそかにしていたなあと反省。

 

 

 

このコースは、もう14年間も続いている人気のコースらしく、リピーターの人もとても多いのですが、先生曰く、日本人で参加したのは私が初めてだったらしいです。

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★真ん中の方は主催者のRuediger Dahlke先生

70冊近い本を書かれているベストセラー作家で、代替医療や心理療法の著名な方でした。

★右の先生が太極拳のクラスでお世話になったクラウディア先生。とっても素敵な先生でした。朝晩のお経の読み上げも全てクラウディア先生が誘導されました。

 

↓売店にはReudiger先生の本がずらりと並んでいました。

私はピースフードのお料理本を購入したので、こちらの野菜でいろいろ作ってみたいと思います。

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今後は、体の声を繊細に聞いて、その時やりたいこと、食べたいもの、食べたい量など、自分の思考ではなくて、体に優しい気持ちをもって、対応してあげたいなと感じました。

 

最後に私の身体に一言!

 

今まで物も言わず、ずっと付き合ってくれてありがとう。死ぬまで一緒だけど、これからは、もっと優しく、労わりながら、体と向き合っていくからね!

 

★おまけのショット

イースターマンデーにはいつも訪れる山の上の巡礼教会へ

まるで天国への道の様に感じる大好きな場所

 

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ちょうど入るとミサの最中で司祭さんのお話が始まりました。

リトリートで聞きにくいドイツ語を浴び続けたおかげで(笑)、司祭さんのはっきりとしたわかりやすいドイツ語がするする耳に入ってきてびっくり!

 

また内容も素晴らしかった。

キリストは今でも毎年この日に皆さんの魂に火を灯しにやってきているのです。今日からまた皆さんは

新しい目

新しい耳

新しい口

新しいハート

新しい足を持って

新たな気持ちで新しい人生を歩んでいく大切な始まりの日です。

という様な内容でした。

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私はクリスチャンではありませんが、うちなる自分の中の神からのメッセージと受け止めました。

 

人生の紙芝居は次に何が起こるか、予想もつかないけれど、一歩歩みを進めてみることで、一枚づつめくれる紙芝居をこれからも、大事に味わって過ごしていきたいと思います。

 

今日も長文お付き合いありがとうございました。