またまたすっかりブログをご無沙汰しておりました・・。

 

どうしてもブログに残しておきたい出来事が昨日あったので、久しぶりにこちらに投稿します!

 

 

 

ウィーンでは、ほぼ毎日のように、一流のオペラやコンサートが開催され、クラッシックの愛好家にはたまらない街

 

それでも、魂が震え、生涯忘れられない記憶に深く残るコンサートやオペラには、そんなに何度も出会えるものではありません

 

昨日はまさに偶然そんなコンサートに出会ったお話です

 

勘違いが2つ重なって、導かれるように二人で昨晩、コンツェルトハウスでのコンサートを聴きに行きました。

 

・元々、主人が一人で行く予定だった楽友協会のコンサートが夜開催だと私が勘違いしたこと(実際は15時半からでした)

 

・なぜか主人がチャイコフスキー6番の演目をベートーベン6番だと勘違いしていたこと

(これは本当に不思議すぎる・・・翌週ベートーベン6番を聴くので、そのために、私は行かない選択をしたのでした)

 

そんなわけで、コンツェルトハウスで同日夜行われるコンサートがたまたま私の目に留まり、2枚だけ良い席が残っていて(おそらく戻りのチケットと思われる)、なぜかこれは行かねばという気持ちになり、最終的に、主人も夜なら行けることが判明し、コンサート前日に2枚チケットをとりました。

 

コンサートの内容は以下のとおり

 

チェコフィルハーモニーのドヴォルザークに特化した演目

 

・Tschechische Philharmonie

・Augustin Hadelich, Violine (バイオリニスト)

・Semyon Bychkov, Dirigent(チェコフィルの常任指揮者)

 

★PROGRAMM(演目)

Antonín Dvořák

前半

 Konzertouverture »In der Natur« op. 91 (1891)

 Konzert für Violine und Orchester a-moll op. 53 (1879–1882)

(ドボルザークバイオリン協奏曲)

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(アンコール)

 Carlos Gardel Por una cabeza 

 (Bearbeitung für Violine solo: Augustin Hadelich) (1935)

 〜バイオリニストHadelichによるオリジナルの編曲

後半

Antonín Dvořák

(ドボルザーク交響曲8番)

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(アンコール)

Johannes Brahms

(ブラームス、ハンガリー舞曲)

 

中でも、普段滅多に演奏されることがないらしい、バイオリン協奏曲も含まれておりました。

ドボルザークのバイオリン協奏曲は、CDで暗記するほど昔聴いたので、興味がありました。


どんな人が弾くのかな?とAugustin Hadelichのことをネットで調べてみると、

 

”奇跡のバイオリニスト”と書かれており、なぜ?と疑問が湧きました

 

トスカーナでワイン農家を営むドイツ人の両親を持つHadelichはイタリア生まれ。

彼は5歳でバイオリンを弾き始め、幼少期からから神童と呼ばれていたそう。

 

しかし、15歳の時に家の火災による爆発で、顔や手を含め、全身の60%に及ぶ大火傷を負い、6ヶ月はバイオリンを手にすることもできず、20回にも及ぶ移植手術を繰り返し、ようやく1年半後に復活し、再スタートを切ったという。

 

奇跡的に・・バイオリニストにとって最も大切な左手だけは火傷を免れたとのこと!

 

でも15歳の少年が顔も含め、全身火傷を負ってしまったら、もう再起不能になってもおかしくないのに、彼は不死身の精神で、それを乗り越え、持つことさえできなかったバイオリンを再び手にし、その時に、左手の感覚が失われないで、残っていたことに驚き、これならまた弾けるようになると確信したそう。

 

そして、どれほど音楽が人生において、大切なものであるかということを、火傷を通して痛感したと、昔のインタビューで語っていました。

 

現在彼は、火傷の話を自分のHPにすら乗せていない。きっともうそれを完全に乗り越え、そこではなくて、バイオリンを通して伝えたいことがあるのでしょう。

 

チェコフィルを導く、常任指揮者Bychkovの情熱的な指揮

各パートの演奏も完全にHadelichと融和して素晴らしかった・・。

 

Hadelichのバイオリンは、どこまでも清らかで、

 

”俺のバイオリンを聴いてくれ”

 

というアピールを微塵も感じません!

 

バイオリンと彼が、ピッタリ寄り添い、彼の魂がそのまま全部音になっているよう・・

 

その上、ソリストが目立つというより、どのパートの楽器とも絶妙なバランスで美しく共鳴してる。

 

決してバイオリンの音は大きくないのに、音が澄んでいて、広いコンサートホールの隅々にまでちゃんと届く。

 

これが協奏曲の醍醐味だったんだと、今更腑に落ちるような感動的な演奏でした。

 

技巧的にも、完璧で、とても安定していて、それでいて、豊かな音色で魂が揺さぶられる・・

 

一音一音、本当に丁寧に奏で、彼の魂の響きが伝わってきました。

 

会場全体が見渡せる席だったので、あちこちで涙を拭う人が目に入り、彼のバイオリンを聴くだけで癒しが起こっていることを私も肌で感じていました。

 

(この光景は、数年前に聴いたロシアのピアニスト、ソコロフのコンサート以来・・)

 

彼の身に起こった大火傷のことを思うと、

 

”よくぞまた不死身のように復活してくれ、こうして多くの聴衆の魂を揺さぶり、感動を与えてくれてありがとう”

 

という気持ちで終始ハンカチが手放せなかった!

 

演奏が終わって主人を見たら、やはり目に涙を溜めていました。

 

 

 

 

 

 

 

ある人は彼の演奏を光の演奏、まるで天使が奏でているようだと評しています。

 

たまたま隣に座った方とも、その感動を分かち合ったのですが、その方は彼の舞台衣装を手がけるウイーン在住のデザイナーの方でした。もちろん今日の衣装も彼女の作!

 

 

 

 

首の辺りの火傷のあとをさりげなく隠し、左腕と右腕では、動かし方も違うので、動きやすいようにデザインを変えて、演奏に特化したスーツを作っているそう。

 

彼は人間的にもとても純粋で美しい心をもっているし、左手だけが火傷を免れたのは、本当に奇跡だとおっしゃっていました。

 

幕間には彼に挨拶に行かれたので、”素晴らしい演奏をありがとうと彼に伝えてください”とお願いしたら、彼にしっかり私たちのことを伝えてくださったそう。

 

彼も今日の演奏にはとても満足してると言っていたそうです。そうでしょう。チェコフィルと一体になった最高の演奏でしたから・・。

 

アンコールのソロ曲も短い曲でしたが、涙を誘い、彼の愛の波動がが会場全体に広がったような、素晴らしい時間でした。

 

幕間の後のチェコフィルのドボルザーク8番も前半のバイオリン協奏曲に勝るとも劣らない、スケールの大きな、深みのある、スラブ系の人々の魂の叫びが心に響くような演奏でした。

 

 

 

 

主人の演目の勘違いがなかったら、一緒に昼間のコンサートに行ったので、きっと夜のコンサートに気づかず、行ってなかったでしょう!

 

でも、大きな勘違いのおかげで、思いがけず聴きに行くことになったもう一つの夜のコンサート・・・・

まるで私たちのために残された最後の2枚の席。

 

両方聴いた主人曰く

 

確かに昼間のコンサートは

ドイツのライプチヒ交響楽団 

指揮者はネルソンズ

しかもチャイコフスキーの悲愴は5星つけたい素晴らしい演奏だったと・・

両方聴いてなかったら、昼間のコンサートで二人とも大満足だったと思うよと・・。

 

でも図らずも、勘違いで、Hadelichとチェコフィルのバイオリン協奏曲を聴けた時間は、言葉に尽くせないほどの感動を与えてくれたと・・・

 

 

 

人生は何気ない日常に起こる、ちょっとした勘違いによって、思いもかけない面白いことが起こり得ること・・・

 

実は、日々の生活の中には、人生を面白くしてくれそうな、様々なサインがあって、直感に従って、そのサインを拾えたら、予想外のページがめくられ、人生に彩を与えてくれる事柄が潜んでいるのでしょう。

 

Hadelichの生き様からは、何が起こっても、それに一喜一憂することなく、”じゃあ次はどうする?って”、面白がって前を向いて生きていくことの大切さを改めて感じた、素敵な夜でした

 

主人の大きな勘違いと、私の小さな勘違いのおかげで生涯忘れられない心に残る思い出ができた昨晩のコンサート❤️

 

ドボルザークのバイオリン協奏曲 

とても美しい、甘美なメロディーに溢れる第二楽章

Hadelichの若い頃の演奏をこちらからどうぞ!

 

 

 

アンコールで弾いてくれた曲のHadelichの動画も見つけたので、こちらににシェアします

 

 

 

日本にも来日することがあるようなので、機会があれば、ぜひ、彼のバイオリンを生で聴いてみてください。

私が太鼓判を押します!

 

今日も長文をお付き合いいただきありがとうございました。