11月のNHK「100分で名著」は、道元の『正法眼蔵』でした。
道元というと、「曹洞宗」。禅宗です。
「禅宗」というと、座禅で背をピシっ、禅寺のストイックな庭園、
禅寺の無駄のない建物、といったイメージが強く、ユルユルな私には、
なんとなく思想的には近寄りがたいものでした。
しかし、このテキストで、かじってヨカッタ!
指南役の、ひろさちやさんが、道元のことを、
仏僧でかつ偉大な哲学者というだけあって(同じく、空海、親鸞のことも)、
そこには生きるヒントがありました。
目から鱗だったのは、「悟り」について。
「迷い」が消えた末に得られるのが「悟り」だと思っていましたが、
道元は、「迷っていい」と言います。
自分から悟りを追い求めるのが「迷い」。そうではなくて、「悟り」のほうから
わたしたちのところにやってくる。つまり、迷いと悟りは一体だと。
迷いの中に悟りがある。悟りの中の世界で迷っているのだと考える。
悟りを追いかけず、「迷いをありのまましっかり(たっぷりではなく)迷うこと」が
悟りなのだと言います。
あとは、「布施」について。
人に物や親切を施すことだと思っていたので、なかなか私には
金銭的にも精神的にも、なかなか難しいものでした。
しかし、布施は、なにかを施すことだけでなく、貪らない、欲を出さないこと
なのだとか。電車で席を譲るもそうですが、はじめから座らず立っていることも
布施になる。すると必要とする人が座れるから。
欲望を全部シャットアウトしてしまっては、生きていけないので、
少しだけ欲望を抑制する。
そういったことで、自分の仏性を活性化できるのだとか。
道元の『正法眼蔵』、とても包容力のある奥深いものだったのでした。