ニュージーランドは、
私が高校時代に一年間交換留学生として行った国です。
以前の記事です。
人種差別。
一年間の交換留学。
人種差別を受ける。
自分の子供に警察を呼ぶ親。

今回は、ニュージーランドで、
人の優しさに触れたお話をさせて頂きますね。

高校二年生の私は、
ある日クラスメートと一緒にダウンタウンへ遊びに行く事になった。
私が住んでいたオークランドという街は、
ニュージーランドで一番大きな都市だ。
私が住んでいた場所からは、バスで一本。
約30分の道のりだった。
違う国、そして田舎者の私には町はとても刺激的だった。
ダウンタウンへ行くとワクワクしたものだ。

ダウンタウンへ行くと、日本食が食べれて、そして買えた。
15歳で親元を自分の意志で離れたが、
やはり懐かしさや日本人としての自分の魂は、
食べ慣れたものに引き寄せられた。

あれこれ買い物を終え、ご飯を食べていると、
最終バスの前のバスの時間になった。
友達は違うバスに乗るので、私だけ一人でバスを待った。
真っ暗だったので、怖かった。
バスの時間の5分前にはついていたのに、
結局バスは来なかった。

「もしかして、私の時計が遅かったのかも…」

そう思った私は、最終バスに乗る事にした。
最終バスの15分前にはバス停で待っていた。
それなのに、バスは結局来なかったのだ。

バスが時刻通りにきて当たり前の国で育った私は、
バスが何故来ないのかが、理解出来なかった。
遅れているのだろうと、15分待っても来なかった。

周りでは、酔っ払いが木に登っていた。
流石に不安になった。

「…どうやって帰ろう。」

バス停で、ただただ途方に暮れていた時、
一台のバスがこちらに向かってやってきたのが見えた。

「バスが来た!遅れていただけだったんだ!
良かった!」

バス停で止まると、バスのドアが開いて、
運転手さんが私に質問してきた。

「バスは来なかったのか?」

その質問は予想していないものだったので、
私の頭ははてなマークで埋め尽くされた。

「…はい、来ませんでした。」

「あなたの行先はどこ?
バスが来る所まで連れて行ってあげるから、乗りな!」

運転手さんに促されるままに
私は誰一人も乗っていないバスに乗り込んだ。

私はどこに連れて行って貰えるのか
あの質問はどういう事なのか
このバスは本当に大丈夫なのか

色んな疑問が浮かんで来た私の強張った顔を見て、
運転手さんは口を開いた。

「あのバス停はね、よくとばされるんだよ。」

「!!!」

バス停を飛ばすという、日本ではありえない事が、
国を超えるとあるのだと思った。

「そのバスの運転手にちゃんと注意しておくよ。
あなたのバスが来る所まで連れて行ってあげるから、
安心して!」

そう言うと、

その場所から10分ほど走らせた場所にあるバス停に
連れて行ってくれた。
私の為だけに走るバス。
とても不思議な感じがした。

運転手さんが言うバス停に着いた。
お金を払おうとするが、受け取ってくれなかった。
その代わり、

「不安だっただろう。ごめんね。」

という、何にも勝る言葉と笑顔をくれた。

「…ありがとう。」

私はその言葉しか言えなかった。
胸がいっぱいになって涙が流れそうだったからだ。

見知らぬ場所に降ろされ、
私を温かく包んでくれたバスは去っていった。
バスが見えなくなると、やはり不安になった。
本当に私のバスが来るのかな、という疑問が浮かんだからだ。
しかし、あの優しい運転手さんを信じようと思った。

すると、5分くらい経つとバスがきた。
そのバスの電光表示板には、私のホームスティ先の地域の名前が書いてあった。

一気に肩の力が抜けた。

そのバスに揺られ、
緊張した1時間半を過ごしたな
と暗い風景を見ながら、ぼんやり考えた。

あのまま私はこの人がいなかったら、
もしかしたらあの酔っ払いの人に何かをされていたかもしれない…
本当にラッキーだったな…
と。

家に着くとホストマザーが待っていた。

「遅かったから心配したよ!」

と、夜遅くなった私を怒る事もなく抱きしめてくれた。
そして、私はバスの件を打ち明けた。
すると、ホストマザーは、

「まぁ!いい運転手さんに出会えてよかったわね!
そのバス停をとばした運転手さんは酷いけど、
いい人に助けて貰えてよかった!
明日電話しておくわね!」

と、言った。
その翌日、ホストマザーは本当にバス会社に電話した。
そして、多大なる感謝と共に、

バス停をとばした運転手に関してちくりと言っておいたそうだ。
するとバス会社の方は、

「彼はいつもバス停をとばすので、
今度こそちゃんと言っておきます!」

と、言ってくれた様だ。
私の一件で、誰もが安心して乗れるバスになった事を願う。

異国の地で、困る時は日本で困った時とは比べ物にならない。
しかし、そんな時、いつも助けてくれる人がいる事。
私が出来る事は、感謝しかないのだ。

出先で外国人に出会う。
私は極力何か力になれないかと思い、
話しかける事がある。
私を助けてくれた人の気持ちが永遠に続く様に、
これからも行動していくのである。

ここまで読んでくれてありがとう♡
読んで下さった方が素敵な一日を過ごせる様、 願っております♡