こんばんは。今日は、三浦しをんさんの「墨のゆらめき」の感想です。このお話は、ホテルで結婚式の招待状を送るときの筆耕士のお話です。筆耕士の主人公は少々変わり者のような感じですが、お客さんの要望通りの筆遣いのできる人です。

 

 筆耕士。あまりなじみがないですが、この本を読んで、確かに自分の結婚式の準備の時を思い出しても、招待者への招待状は自分で書かなかったので、筆耕士さんに頼んでいたのだなと思い返しました。筆耕士という職業、ただ字がうまいだけではなく、こんな感じの書体で書いてほしいなどの要望に応えられるってすごいですよね。

 

 そのホテルのホテルマンは少々変わり者の筆耕士への関わり方もとてもいい距離感でいいなと思いました。筆耕士の遠田はあまり人とかかわることがうまい感じの人ではないですが、そのホテルマンはうまく遠田のよさを引き出しながらいいアイディアを出したりします。ホテルマンの仕事の枠を超えた遠田への優しさも素敵です。

 

 それから色々事情があり遠田は筆耕士をやめると言い出します。それはなぜかはぜひ読んで納得してもらえたらと思います。遠田は書道教室で子供たちに書道も教えています。書道教室の居心地も本を読んでいてとてもいいところなんだろうなと想像してしまいます。

 

 

 筆耕士をやめるということはそのホテルマンとの関係も終わってしまうのか。遠田とホテルマンの気持ちの揺れなど静かな物語の中に人間の葛藤、自分の本当にやりたいことは何なのかを考えさせられる作品でした。