アベノミクスで製造業の就業者はいくら増えたか② | 初心者大家のブログ

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2011年に2棟のマンションを買って2015年、55歳で早期リタイア。こよなく愛する福岡のこと、愚痴めいた経済コラムも書いてます。

前回の続きです。

 

「アベノミクスが始まった2012年末から2017年までの5年間で就業者数は6280万人から6530万人と250万人増えたが、製造業の就業者はいくら増えたか」という質問でしたが、答えはたったの20万人

 

では、何が5年間で最も増えたかというと、「医療・福祉」の108万人。そりゃ、増えますよ。国民から集めた介護保険料をもとに支出する介護給付費用が2012年度の8.8兆円から2017年度には10.8兆円と22.7%も増えたのですから。市場が大きくなれば雇用は生まれますし、「医療・介護」中心の就業者増をもってアベノミクスは成功したと言われてもねえ。

 

では、なぜ、製造業の就業者が増えていないか。原因はいくつかあって、以前も指摘したけれど、思ったほど生産体制の国内回帰が進んでいないことと、設備投資の中身も「能力増強」ではなく、「維持・補修」中心、もっといえば「省力化」にあるからなんですね。(cf.DBJ「設備投資計画」)。

 

製造業の設備投資の海外投資比率(連結、計画値)は2012年度が36.8%に対して2018年度は37.7%とわずかですが上がっていますし、「能力増強」も2018年度は27.1%と、リーマンショック前の2007年度の42.8%に遠く及びません。

 

もちろん、これは仕方ないんですよ。だってメーカーとしては需要のあるところか労賃の安いところに工場を作りますからね。労賃は新興国より高いうえに需要は先細りの日本にわざわざ新工場を作るわけがありません。それでなくても、自動車は電気自動車に取って代わられようとしているわけで。

 

製造業の就業者数が増えないことは地方経済の消費にも大きな影響を与えます。というのも地方の製造業に勤務する人は高給取りなんですね。地方でメーカー勤務はエリート中のエリート。産業別の現金給与総額を見ると、製造業は月38万3700円と全産業平均の31万7000円より21%高い(2017年、5人以上の事業所)。これに対して「医療・福祉」は29万9700円。大手メーカーは福利厚生も手厚いですから。地方経済の個人消費が都市部ほど盛り上がらないのは資産効果の差もあるけれど、製造業の地方での衰退があるんですよね。

 

結局、「第一の矢」の金融政策だけでは無理で、「第三の矢」の成長戦略が最も重要になってくるはずなんですが、何か成果が上がりましたか(棒)。