今日は少し勉強の話から脱線します。
「医療崩壊」という言葉を、毎日テレビからネットから見聞きするようになりましたが、その意味するところにピンとこない人は多いと思います。
今日は、昨年の20年3月に娘が入院することになった、まさにその時の話を書きたいと思います。
ピンとこない「医療崩壊」が、少しでも読まれた方の身近に感じられるように、一個人の小さな投げかけですが、ぜひ、勉強中の会計士受験生の方々も、人ごとと思わずに、お読みいただければと思います。
■ 大学病院に運ばれる
娘はIgA血管炎という、紫斑が出る病気です。
本来は1ヶ月程度で紫斑が消えて、寛解(完治ではないが症状も消失して健康状態になること)になるはずのところ、19年10月に紫斑が出てから1年以上、今も、紫斑が小康状態ですが出ている状態です。
昨年の20年3月、激しい腹痛と嘔吐と血便で、市民病院の小児科にかかりました。
エコー検査で、腸重積になっていたことがわかりました。
腸が重なって、激しい腹痛が伴い、そのまま放置すると腸管が壊死してしまいます。
市民病院の処置室では、腸管を伸ばす「整腹」と呼ばれる処置を行いましたが、うまく伸ばしきれませんでした。
そのため大学病院に搬送して、あらためて整腹処置をするか、あるいは開腹して外科的に手術するかということになってしまいました。
救急車で大学病院に搬送され、改めて造影剤入りのCTを撮って見てもらったところ「もしかしたら伸びているんじゃないか」「切らなくていいかもしれないな」ということで、一晩、様子を見るためにそのまま入院することになりました。
時間は夜の7時にはなっていました。
小児科病棟に移動したのですが、実はその部屋には、水疱瘡の疑いのある子がいました。
搬送される前、3つの病院が候補に上がったのですが、一番家に近い大学病院の空きが「水疱瘡かもしれない子のいる大部屋のベッドしか空いていない」ということの説明があり、私たち夫婦で話し合い、「そこで構いません」と言って運んでもらっていました。
娘は水疱瘡のワクチンを打っていましたし、私たち夫婦も、幼少期に水疱瘡にかかっている記憶があったので、「家に近いこと」を優先させました。
ですが、病院側からは念には念をということで、その病室に入る私たち夫婦には(同室の子どもたちの親御さんも)、感染症対策としてのガウンと手袋の着用が求められました。
使い捨てのプラスチックガウンとゴム手袋です。
着脱の方法を細かく指導され、特に「正しく脱ぐ」ことを指導され、入退室のたびに、新しく着脱するようにと言われました。
またこのガウンが暑くて、とても蒸れます。
私たちは娘の傍に座っているだけだというのに、ガウンとマスクがとにかく暑くて、ゴム手袋の中の手は汗でぺったりと張りつきます。
館内は基本的に温度設定が高めなので、なおさらです。
時期は3月末、世の中はコロナの第1波で、医療品の不足が叫ばなれている中で、我が家は自分たちのマスクは毎日替えられる程度には確保できていましたが、こうして病院でガウンを消費していることに、とても申し訳なく思っていました。
また、「これを着て医師看護師さんたちは患者さんを診ているんだな」と思うと、かなり暑くて制限のある中で、通常よりも負担のかかる環境で看護していることが、容易に想像できました。
同部屋には、いろんな子がいました。
機器に囲まれて様子が見えない子、面会に来たお母さんにわがままをいっぱいせがんで自分をコントロールしている子、静かに横になっている子(多分しんどい)もいました。
夜7時に病室に入って、おって先生からの今後の話を聞くために病室で待機していました。
が、待てど暮らせど、先生が病棟に上がってきません。
1時間以上経った頃、「緊急でオペに入ったので今日は帰って明日お話しさせてください」ということになりました。
そして翌日、午前10時から面会開始時間となり病院に向かいました。
病室では前日と同じように、ガウンとゴム手袋をして待機。
先生の手術が終わって病棟に上がってきたのが、なんと夜の7時を過ぎたところでした。
先生は緊急オペに入られて、およそ24時間近く、手術に立たれていたことになります。
小児外科の先生がお二人、まさに手術終わった後にまっすぐ病棟に上がってきた様子で、まだ緊張感の残る顔で娘をサッと診察して、「顔色もいいし腸管も戻っている証拠だから、絶食解除ね、夕食食べていいよ、明日は退院していいよ」と聞いた時には、一気に安心しました。
翌朝、朝ごはんを食べ終えたところの娘を迎えに行き、退院の手続きをしましたが。
その日から病棟は「面会禁止」になりました。
新型コロナウィルスの院内感染を防ぐため、小児科も含め全館、面会禁止の処置となったのです。
■ 病院には病気の患者さんがいる
娘の腸重積なんて、可愛いもの・・・そう言ってしまっては、腹痛に耐えた娘には申し訳ないけれど。
でも、病棟にいる子たちは本当に大変で、他の病室もドレーンにつながっている子たちがたくさんいて、病棟はまさに戦場でした。
退院するときに看護師さんが教えてくれましたが、面会禁止が始まるということで、子どもたちのストレスがさらに大きくなるのが可哀想だと言っていました。
看護師さんもお母さんがわりになる場面が増えて、負荷が大きくなるなるということでした。
今、医療崩壊の危機と言われているわけですが、その一方で、「なんで病院のベッド数がこんなに少ないんだ」とSNSで書き込む人がいます。
いやいや「話は簡単じゃないんだよ」といつも思います。
今もう既に、なんらかの病気になっている人たちが入院しているので、簡単にその人たちを動かすことはできません。
私が実際に見た例は大学病院なので、高度な医療が必要な患者さんばかりの病院ではあったわけですが、でも、ああいったドレーンに繋がれ、モニターの監視が必要な患者さんは中小の総合病院にもいるわけで、簡単に動かせるものではありません。
それに、301の病室ベッド4個と、501の病室ベッド3個が空いているからそこに・・・とか簡単な話でもないです。
感染症の患者さんが入院するとなると、ゾーンニングが必要になってくるので、1つの病棟、あるいはその階まるまる空ける必要が出てきます。
感染症の病棟に出入りする医師や看護師は、容易に一般病棟に出入りできませんし、職員の食堂も隔離された場所で食事をすることになります。
病院の人員を簡単に流用できない分厄介で、感染症病棟に特化させた分だけ人が多く削り取られます。
また今はほとんどの総合病院で「面会禁止」の規定を出しているので、これも人員を削る要因になっています。
普段は、面会に来る家族に食事の介助をしてもらっている患者さんも、面会禁止になれば、病棟の看護師や准看護師が対応しなければならないので、一般病棟もバタバタです。
それに、専門職といえども、スキルがピンキリなのが現実で、優秀な看護師さんは数に限りがあり、ガウンの着脱ひとつとっても手順通りに正しく100%隙なくできる看護師さんと、残念ながらそうではない看護師さんもいます。
小さな隙をついて飛び込んでくるのが感染症なので、ほんの少しの気の緩みで、院内感染を招くこともあり、看護師ならば誰でも感染症に対応できるわけではないのが現実です。
今は特に、医師よりも看護師さんの方が大変で、感染症対応の看護師さんも、そして、しわ寄せ的に一般病棟の看護師さんも含め、かなり疲弊しているという話です。
ベッド数などの数字だけを見ていると、「医療崩壊」なんてピンとこないと思うのですが、現実は、語られていない場面が多くあるように感じます。
インフルエンザの季節性の流感期にも、総合病院では面会禁止になることが多いのですが、例年のそれとは「別格」だというのが医療関係者の声です。
実際、毎年インフルエンザの院内感染で死者は出ていますが、犠牲になるのはいつも、基礎疾患のある患者さんの方ですし、それは新型インフルエンザでも同じで、感染する危機が、既存の入院患者さんにはあります。
ただし、インフルエンザとは死亡率が全く違います。
インフルエンザの死亡率は0.1%ですが、新型コロナウィルスは4%や5%の数値が出てきます。
無症状者が動き回って感染を拡大させるのも、このウィルスの狡猾なところだとも言われています。
インフルエンザの無症状者は10%程度でウィルス量が少ないために他者にうつす可能性は低い一方、新型コロナウィルスの無症状者は30%以上いるにもかかわらず、体内のウィルス量が多く感染させる力が強いのです。
若い人が無症状の運び屋になっていて、移動範囲も広いため、広範囲にウィウルスを運んでしまいます。
都心などの密になりやすい場所に近寄らない層がいる一方で、都心に移動して、そこからウィルスを地元に持ち帰ってしまう無症状者もいるということです。
学校や塾が、今回の自粛期間でも休業の対象外なのは、子どもが「地元の中で動く」ことが想定されているからです。
一方で、大人は都心に通勤などで往復することで、近郊の街にウィルスを運んでしまうので、通勤をしないリモートが推奨されています。
そういう観点からいけば、大学予備校や資格学校の20歳前後の層が都心と郊外を往復するのは、大人と同じで、本質的には感染拡大の観点からいくと好ましくないと考えることもできます。
若い人は重症化する率が低く、無症状でいる可能性は高いとは思いますが、学校の往復ではウィルスも一緒に持ち歩く危険があり、人一倍の気遣いがあって良いのではと思います。
リモートワークっていうわけにはいかないでしょうし。
なにより、重症化するのは、高齢者だけではありません。
今も病院で病気で闘っている、小さな子どもも、病院にいるわけで、感染した人が院内にいるリスクは、かなり危険な状態だと言えます。
それが、訓練された看護師の、専門性のある医師がいる病院だけでなく、市中の中小の総合病院にも患者がいるというのは、相当なリスクだと言えます。
とはいえ私たちも、目に見えないウィルスに気をつけろと言われても実感は湧かないと思うのですが、1に消毒、2に消毒です。
最近また消毒する人が増えてきましたが、昨年の自粛期間が解除された後から、手消毒をする人が消えました。
自分が熱っぽいと思ったら、その日は動かない。
マスクは当然だけど、マスクに頼り過ぎない。
マスクしながら3密したら、リスクの隙が生まれます。
最近まで丸の内のオフィス街でのランチは、大勢で賑やかにお昼を食べていたなんて話も聞きますが、昨日あたりからランチも一人で食べる人が増えてきたようですし、とにかくお昼も注意ですし、一人で黙って食べるのが安全です。
大学生ぐらいだと、自主性の高い人と、「まあいっか」の人、明確にできる人とできない人がくっきりと分かれます。
気分を害する人もいるかもしれませんが、男性は「まあいっか」の人は多いです。
トイレで手を洗わない男子、女子よりも多いです。
結婚してから、奥さんにルーズだと指摘される男性が多いように、男性は概して「まあいっか」人が多いです。
(そうではない、自主規制の高い方、ごめんなさい。)
学校で勉強することを選んでいる、あるいはどうしても人の多いところで仕事をしなければならない人は、人よりも念入りにマスクと蜜と手消毒、しっかり自主規制をしてほしいと思います。
私も、ここで書いたからには、改めて自分の対策をしっかりとしていかなければと思いました。
老婆心からの、うるさい話と思って・・・最後まで読んでくださってありがとうございました。