フィギュアスケートで“アジア系選手”が強いのはなぜなのか? | 青龍のブログ

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羽生だけじゃない! フィギュアスケートで“アジア系選手”が強いのはなぜなのか?
更新 2017/3/2 16:00 dot.


 今季前半のクライマックスだったグランプリファイナル(フランス・マルセイユ 2016年12月9~11日)・男子シングルでは、4連覇を果たした日本の羽生結弦をはじめ、2位に中国系アメリカ人であるネイサン・チェン、3位に日本の宇野昌磨が入り、表彰台をアジア系の選手が独占した。

 ソチ五輪で銀メダルを獲得、休養後復帰した中国系カナダ人のパトリック・チャン、またソチ五輪銅メダリスト・カザフスタンのデニス・テンもトップ選手として活躍を続けている。また昨季の世界選手権では中国のボーヤン・ジンが3位に入っており、近年の男子シングルではアジア系選手の台頭が著しい。

 女子シングルでは現在ロシア人選手の強さが目立っているものの、2010年バンクーバー五輪で韓国のキム・ヨナが金メダル(ソチ五輪では銀メダル)、日本の浅田真央が銀メダルを獲得しており、シングル種目でのアジア系選手の強さは実証済みだ。

 そのバンクーバー五輪前に、当時国際スケート連盟(ISU)の会長(現在は名誉会長)だったオッタビオ・チンクアンタ氏が、ロイターの電話取材に対し、スケート競技におけるアジア勢への期待を語っている。ロイターの記事では、アジアでトップレベルの大会を開催することを提案したのは自分自身だとチンクアンタ氏が述べたことを伝え、さらに「結論から言うと私は正しかった。ショートラックのスピードスケートとフィギュアスケートを中心に、アジアの技術は向上している。今や、バスケットボールやサッカー以上にスケートがアジア選手に向いたスポーツであると理解されている」というコメントを掲載している。スピードスケート出身のチンクアンタ氏はスケート競技全般について語っているのだが、フィギュアスケートについても先見の明があったと言うべきだろう。

 当時(2010年2月)、中国メディア・新浪網は「アジア系が制覇する女子フィギュアスケート=その五つの理由」という記事を掲載し、その理由を以下のよう説明している。

1.ルールの変更(コンパルソリーの廃止によりジャンプの重要性が高まり、小柄な体と機敏さを持つアジア系選手には有利になった)

2.身体的条件(アジア人の体は機敏で柔軟、脂肪の少ない食生活は減量に有利)

3.家庭教育(アジア系は教育重視で子どもを厳しくしつける)

4.努力と自律(自らを律し努力する姿勢)

5.文化(アジア系選手はコーチや家族と深い関係を築く、日本・韓国でのスケート場の増加)(Record chinaより引用)


現在の男子の状況にもあてはまる部分はあるといえる。オランダとイギリスに端を発するフィギュアスケートは、欧米主導で発展してきた。バレエとも深い関わりを持つ芸術スポーツ・フィギュアスケートで、アジアの選手は文化的な違いというハンディキャップを背負ってきたことは否めない。

 その見えない壁を打ち破ったのは、日本の伊藤みどりさんだろう。ジャンプにおいて天賦の才を持つ伊藤さんは、未だに男子にとっても難しいジャンプであり続けているトリプルアクセルを武器に、1992年アルベールビル五輪で銀メダルを獲得した。アスリートとしてフィギュアスケートを究めることで五輪の表彰台にまで上り詰めた伊藤さんの存在があったからこそ、現在の日本、そしてアジアのスケーターの活躍があると言っていい。

 中国メディア・新華網は2014年に掲載した「フィギュアスケートはアジアで普及させるに十分ふさわしい『美しいスポーツだ』」という評論記事で、アジアの選手が飛躍した理由として「アジア人は小柄で軽く、柔軟性がある。投げる、跳ぶ、回転するなどといった空中動作を軽々こなせるほか、演技もしなやかで美しさを十分に備えている」ことを挙げている(「サーチナ」より引用)。

 私見だが、男子で近年アジア系選手が強さを見せているのは、4回転の種類・本数ともに急激に増えている状況と無関係ではないように思える。だが、羽生の音楽を体全体で受け止めるような表現力や、チャンの卓越したスケーティングを見ると、アジア系選手の特長はジャンプのみにあるとも思えない。アジアの選手たちの躍進は、フィギュアスケートがより高度なジャンプを競うスポーツとして、また様々な文化圏で楽しまれるグローバルなスポーツとしても、進化していることの証なのかもしれない。(文・沢田聡子)

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