時計がちょうど0時になると
ベッドの下に入り口が現れる。
そこは、次元のはざまに通じるトンネル。
たったか
たったか
走っていくと、まぶしい光に包まれて
あっというまにたどり着く
犬族のふるさと。
あたたかくって
ときどき、さわさわ~っと風が吹いて
気持ちのいいところ。
どこまでも、どこまでも続く草原は
コロ助の背の高さほどの草が生い茂り
コロ助の何倍も背の高い木が見える。
この木の根元にぽっかりと穴が開いてて
表札がぶらさがっている。
まる・ちーず・ばーがー・まっく・どなるど
コロ助の兄ちゃんの名前。
ヒト世界で一緒に暮らしたのは1年もなかったけど
世界で一番尊敬している。
体は小さいし、重い病気だったのに
弱音を吐いたこともなかったし
いつも戦って、しかも強かった。
どんなに大きな犬が近づいても
あやしい人間が近づいても
ぜったいにシッポを丸めたりしない兄。
「おれも、ちーにぃみたいな兄ちゃんになりたいわぁ」
って、思ってるけど・・・
それはちょっと無謀な夢かもしれない。
コロ助は大の甘えん坊だし
ちょっと怖いことがあるとすぐにマケマケシッポに
なっちゃうし、姿を隠しちゃったりするから。
ときどき、ちーにぃみたいに真似っこしてみる。
でもそれは、ただのえばりんぼでおこりんぼ。
「なんか、ちゃうねんなぁ」
そうそう・・・違うよね。
ヒト世界のコロ助の家族は
大好きなオカンと、プードルの兄が2匹。
りぶにぃと、はちゅにぃ。
コロ助はいちばん下の弟なのだ。
犬の世界では強い者がリーダーになるけど
強いかどうかわからないときは先に家族になった
順番でリーダーになる。
そこが微妙で、コロ助は不満に思っている。
「たぶん、おれのほうがりぶにぃより強いど」
なのに、この家族(群れ)の決まりで
喧嘩はだめ!なのだ。
りぶにいが偉そうにしてると腹が立つから
何度も喧嘩してみたけど、やっぱり怒られた。
オカンに怒られたら、ものすごく悲しい。
だから、そこは我慢するしかない。
りぶにぃも、ちーにぃがふるさとに行くまでは
弟だった!
りぶにぃも、昔は不満に思っていた。
だって、ちーにぃのほうが小さかったし
変な咳をしてたし、オカンはいつだって
ちーにぃを優先してたから。
ただ・・・りぶにぃの場合はちーにぃと喧嘩をしても
強いオーラと存在感で圧倒されちゃって
戦う前に負けてしまうから諦めるのも早かった。
コロ助は、りぶにぃをどうしても尊敬できない。
りぶにぃったら自分のことばっかりで
そのくせビビリでたよりない。
はちゅにぃは、けっこう尊敬してるけどね。
コロ助がまだ赤ん坊のとき、いろいろ教えて
くれたから、コロ助ははちゅにぃを守ってあげることにした。
はちゅにぃって、りぶにぃみたいな傍若無人な犬が
大嫌いなんだって。
そんなこんなで、コロ助は戦わずして威厳のある
偉大な兄のようになりたいって思ったんだねぇ。

ちーにぃは今、犬のふるさとの自分の家で
のんびり寝ているところ。
昨日、コロ助が来たとき
「これからマーくんと栗拾いに行く」って言ってた。
コロ助の狙いは、その拾ってきた栗を
ちょっとだけいただこうというわけ。
大きな木の根元に、ぽっかり空いた穴が
ちーにぃの家・・・そっと足を踏み入れると
穴の奥のほうで背中を向けて寝ているちーにぃが
異様なオーラを発し始めた。
「やばい・・・」
踏み入れた足をそっと引き抜こうとしたとき
「だれやっ?」
コロ助の背中の毛がさささーーっと波打った。
「お・・・・お・・おれ。おれやで、ちーにぃ」
シッポなんて、もうこれ以上丸められないくらい
丸めておなかにくっついている。
「さては、栗をねらってきたんやろ?」
図星である。
妙な緊張感がコロ助のとんがった耳をぐいっと引き上げて
あくびが出そうになったのを我慢した。
「おれな、栗って食ったことないねん
せやから・・・どんなんかなぁと思って」

「こっそり来るな!ほしけりゃほしいって
ちゃんと言うたらええのに。ったく」
「ほしい」
「もうないわっ!あほ!」
極度の緊張のあとの緩和状態から一気に
地獄の底へ突き落されたような気持ちになって
コロ助は全身の力が、がっくり抜けていった。
ちーにぃの友達で、同じマルチーズのマーくんは
大好物の栗が食べたくなると、チーズを誘う。
丘を3つ越えた丹波草原に沼があって、沼の真ん中に
小さな島があって、いつでも年がら年中栗が実ってて
栗拾いに行くには沼を渡らなくちゃいけなくて
沼の中には大きなナマズ親父が通せんぼするから
マーくんはひとりで栗拾いに行けない。
沼を泳ぐのもこわいし、ナマズ親父もこわい。
「それで、栗は持って帰って来たん?」
「おぉ。喜んで持って帰りよったで」
「ここにはないん?」
パッサパサで喉かわくだけやで」
「まずいん?」
「いや、あいつなぁ、あー見えて黒魔道士やねん
魔法のファイアで焼き栗にして食うらしいで」
「すごっ!」
「すごないって。レベル15の魔法や。
レベル45でファイラ、70でファイガ・・・」
「どんだけレベル上げなあかんねん・・・」
「食いたかったらマーくんとこ行って来い」
「おぉぉぉ!おれ、行ってくるわ」
「遠いで。」
「え・・・」
「どっかで飛竜をつかまえなあかんやろ。
コロ助の足やったら3か月はかかるんちゃうけ?」
「ひりゅーってなんなん?」
「ドラゴンやな。飛竜草って草を探してから
仲良くなるのに半年はかかるんちゃう?」
「ちーにぃは?」
「おれは、呼んだら飛んできてくれるから」
「呼んでぇな・・・」
「あかん。飛竜は自分の友達しか乗せてくれへんで」
「ほな、歩いて行ったほうが早いんかぁ。」
「そういうことやな」
「栗・・・なくなってるやん」
「あぁ、そこらで黄色い鳥がおったら
そいつに乗せてもらえ。飛ばれへんけど速いで。」
「なんか、こっちの世界て面倒くさいなぁ」
「栗、食いたいんちゃうんか?」
「ほんまに旨いん?」
「おいらは食わんけど、マーくんはめっちゃ旨いって言うてた」
「ちーにぃに手伝ってもらってまで、
遠いところから来てまで食いたいんやなぁ」
「お。マーくんからメール来たで!
栗、まだ残ってるらしいでぇ」

「こ、これが栗?魔法で焼いた栗?」
「マーくんとこ着くころにはコロ助も
だいぶレベル上がって、強くなってるで」
「ほんで、栗が食えるんかぁ!」



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