まだまだ暑い日が続きます。

セミの声も聞こえます。

ん?

     

くるっと向う側に回ります。

 

ヒツジ君

「宇治抹茶が好きなんだよね。」

「残暑お見舞い申し上げます。」

 

ヒツジ君「できた。」

ウサギ君「うれしい。いい感じ。」

ヒツジ君「ピッタリの色だね。」

ウサギ君「たくさん入りそう。」

ネコ君「僕からはこれ。帽子。寒くなっちゃったからね。」

ウサギ君「ありがとう。うれしいよ。」

 

晴れた朝。

出発だ!

三人「おーっ。」

山へ向かう三人でした。

ウサギ君「イヌ君!おはよー。」

イヌ君「おはよう!」        

  ウサギ君「お手伝いするよ。」  

イヌ君「芋掘りだよ。」       

 

ウサギ君「まかせて。」

ほりほり

じゃ~ん

サツマイモの大収穫

ふたりはゴキゲンです。

 

その頃ヒツジ君は

くりくり

作った青色を塗って確かめます。

ヒツジ君「この色でいいと思うな。」

満足そうです。

何をしようとしているのでしょう?

 

その頃ネコ君は

くるくる

屋根の上で踊ってます。

ネコ君「大丈夫。足はすっかり直ったよ。」

うれしそうにくるくる回ります。

ネコ君「今度こそ、山へ行く準備にかからないと」

 

ヒツジ君「どう?足は?」

ネコ君 「ほら見て、もうなんともない。腫れたのも一日だけだった。」

ヒツジ君「痛まない?」

ネコ君 「痛くない。」

ヒツジ君「明日の様子で出発を決めよう。」

 

ウサギ君「きれいなお月様。明日は晴れるよ。」

ウサギ君「ヒツジ君が来なかったから晴れても明日の出発は  

       ないな。…じっとして待ってられない、何かしよう。

       …いいこと思いついた。へへ。」

 

キツネ君「あれ?月に誰かいたような気がしたんだけど、気の

      せいか。」

 

お月様のきれいな静かな夜のお話。

 

 

晴れた朝

コンコン コンコン

ネコ君家のドアをノック

                 ヒツジ君「おはよう。出かけられる?」

                 …

                 ヒツジ君「?」

                 ネコ君 「…出かけられない。」

ヒツジ君「?」

家に入ります。

足を腫らしたネコ君。

ヒツジ君 「どうしたの?」

ネコ君  「出かける前に家をきれいに片づけてたんだ。」

ネコ君「片づけながら出かける準備もしようと思って、片づけ箱

          からカバンと帽子を出そうとした時、 座布団に足を取ら

     れた。」

ネコ君   「ヨロめいて、片づけ箱の角に思いっきり足をぶつけた。

             激しすぎて腫れがひかない。」

ヒツジ君「痛そう。治まるのを待った方がいいね。

             ちょっと様子をみよう。」

 

  ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~

ウサギ君家

ヒツジ君 「っていう訳で、今日の出発は延期。」

ウサギ君「わかった。ネコ君大丈夫そう?」

ヒツジ君 「明日また、ネコ君の足がどうだか見に行ってみるよ。」

 

ネコ君「なんとかなるさ。」

ヒツジ君「キツネ君の家まで遠いから、出発するなら朝からでかけないとダメだね。」

ウサギ君「じゃあ、晴れた日の朝出発ってことで、準備しよう。」

ネコ君「準備、準備。」

みんなそれぞれの家へ準備をするために帰って行きました。

ヒツジ君「僕の準備は…。」

タンスの引き出しを開けます。

ヒツジ君「ノートだね。まだ書くところあったと思うな。」

 

ウサギ君「僕は何を準備すればいいんだ?」

ウサギ君は考えます。

 

ネコ君「ハッ。」

忘れてた!

ネコ君「めちゃめちゃ掃除の途中で出かけたんだった。まず掃除を終わらせないと。」

ヒツジ君「行きたい気持ちはすごくわかる。僕も行きたい。」

ネコ君「キツネ君帰っちゃったよ。キツネ君家、行き方が

難しいんだ。」

ウサギ君「どうしよう。」

 

ヒツジ君「前、僕らは案内してもらったんだ。」

ネコ君「行き方は…覚えてないな。山は難しい。」

ウサギ君「何とかならないかな。ますます行きたくなった。」

ヒツジ君「ブドウを食べてる時、山の食べ物の話になって『これからまた楽しみがあるよ、遊びにおいでよ。』ってキツネ君が言ってくれたんだ。」

ネコ君「行ってみたら何とかなるかもよ。僕らといっしょに遊びに行こうよ。」

ウサギ君「うんっ。いっしょに行こう。何とかなりそうな気がしてきた。」

ヒツジ君「印があるといいな。」

ウサギ君「満月、きれいだね。」

 

          満月は照らします。

キツネ君「誰か何か言った?」

 

 

みんなで、キツネ君の持ってきたブドウを食べ楽しく過ごしました。楽しい時はあっという間に過ぎ、

キツネ君は山へ帰って行きました。

 

見送った三人はふと顔をあげます。                  

 ヒツジ君「何か聞こえなかった?」

 ネコ君「僕も、何か、聞こえたような気がした。」

 風の音がします。

 見上げた空は

すっかり秋になっていました。

ヒツジ君「秋の声?」

ネコ君「う~ん、そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。」

ヒツジ君「よく聞いてみよう。」

しばらく黙る三人

ヒツジ君「…」

ネコ君「…」

 

ウサギ君「…、僕ね、キツネ君のところに行ってみたい。」

ヒツジ君・ネコ君「!」

ウサギ君「耳を澄ましたら、僕の心の声が聞こえた。」

ネコ君「そっか。」            

ネコ君「ヒツジ君?」

井戸をのぞいているヒツジ君にネコ君が話しかけます。

ヒツジ君「やっぱり。これ見て、キツネ君の印。」

ネコ君「キツネ君の印?」

ヒツジ君「そう、前に僕がくだものを井戸で冷やしてるのを見て『冷たいのが好きなんだね。覚えておくよ。』って言って僕のやることをまじまじと見てたのを思い出した。」

ネコ君「じゃぁこの枝に結んであるものは?キツネ君?」

ヒツジ君「僕は今は何も冷やしてないからね。なんだかピンと来た

。あげてみよう。」

ヒツジ君・ネコ君「よいしょ、よいしょ。」

ネコ君「わあ、ブドウだ。うれしいな。」

ヒツジ君もにっこり。

にやりとするキツネ君

                    ブドウだ。

ネコ君「これ。」

ヒツジ君は起き上がり、ネコ君からキツネ君が山から遊びに来ていることを聞く。

ネコ君「で、キツネ君の好物のおいなりさんを作ったんだ。」

ヒツジ君「キツネ君はまだいる?」

ネコ君「しばらくはブタ君のところにいるみたいだよ。」

 

 

ガサッ。

ヒツジ君がのぞき込んでいます。