この感覚を
離したくはない、逃したくはないという思いで
帰り道を歩くのは恐らくは始めての経験かもしれない。
ずっとこの感覚でいたくて、
ずっとこの物語を胸に置いておきたくて
帰り道の暗くて長い道のりがなんだかとてもありがたい。
トイレにいきたいはずなのに
コンビニや人工的な明かりでこの感覚が消されてしまうのが嫌で。
おぼんろ という団体の
ゴベリンドンの沼という作品を感じてきた。
見てきたというよりも感じてきたという方が正しいような気がする。
見ず知らずの人が呟いていたTwitterを見て気になって見に行った。
知り合いは誰も出演していない。
そこで私は
今まで生きてきて出会ったどの作品をも越える作品に出会えた。
私の大好きな柿喰う客を始めてみたときの感覚に近いけど
それ以上のものだった。
気づかないうちに倉庫は森と化し、沼になり、村になり、
私たちは物語に取り込まれていた。
五人しかいないはずのキャストが
いつのまにかその物語には何十人もいる感覚になる。
よくわからないうちに涙が止められず、
気づかないうちに言葉が紡ぎ出す想像の世界に連れ込まれていた。
この団体の目指している渋谷のシアターコクーンでの芝居は
そう遠くはなく見れるだろうと思った。
廃工場がシアターコクーンに見えた気がした。
この物語に、出会えたことは私にとって
どんな美味しい食べ物にも
かわいい服にも、
贅沢なものよりも、
果てしない旅よりも、
価値のある経験だった。
残りの公演数はわずかだけど、
可能な限りたくさんの人に
この感覚を体験してもらいたいと
強く願います。
おぼんろの皆さま、
本当にありがとうございました。